第十五話:遠い未来
これで本編は終わりです。
「・・・・・痛ッ」
藍璃は頭痛を感じながら目を覚ました。
「・・・・気が付いたか?藍璃?」
藍璃は自分が斬紅朗の膝の上にいる事に気づいた。
「・・・・斬紅朗殿?」
藍璃は夢を見ているかと思った。
しかし唇に温かい感触を感じ夢ではないと分かった。
「斬紅朗殿!?」
藍璃は泣きながら斬紅朗の温かい胸に飛び付いた。
「・・・・迎えに来たぞ。藍璃」
両手で優しく抱き締めながら斬紅朗は言った。
「・・・・・藍璃。俺はお前を放したくない。俺と一緒に奥州に来てくれ。・・・・・・だが、お前が嫌なら俺は二度とお前の前に姿は現わさない」
斬紅朗の腰に細い腕を廻しきつく握った。
「・・・・私も斬紅朗殿と一緒にいたい。私を奥州に連れて行って下さい。貴方と一緒に行きたい」
藍璃の言葉に斬紅朗は頷いた。
「・・・・分かった。必ずお前を幸せにしてやるからな。藍璃」
暫らく二人は抱き締め合った。
屋敷の外に行くと三等の馬を引き連れて氷鬼と風鬼が立っていた。
「どうやら取り返したようですね。義兄上」
「・・・あぁ。藍璃。こいつは義理の弟の氷鬼。こっちが弟子の風鬼だ」
「初めまして。芦谷藍璃です」
「可愛い!師匠が熱を上げる訳だ!」
風鬼が辛かった様に言うと斬紅朗は鬼龍刀を抜いた。
「やっば!逃げるぞ!氷鬼!?」
二人は馬に乗ると走り出した。
「待てー!」
斬紅朗は素早く馬に乗り藍璃を引き上げると走り出した。
「うわぁ!き、来た!」
二人は更に馬のスピードを上げだ。
「待てー!」斬紅朗もスピードを上げた。
四人は笑いながら京の都を後にした。
「しっかりと掴まっていろよ。月牙」
片手でたずなを操りながら斬紅朗は左手に抱えてる子供に言った。
「はい!お父さま!」元気に返事をしたのは藍璃との間に出来た息子の小太郎だった。
峠道を走り終えると斬紅朗は屋敷へと馬を走らせた。
「・・・・お帰りなさい。月牙。斬紅朗殿」
屋敷に着くと綺麗な十二単衣に身を包んだ藍璃が出て来た。藍璃の長い黒髪には鳳凰の髪留めがあった。
「ただいま帰りました!お母さま!」
馬から降りた月牙は藍璃に抱き付いた。
「ねぇ。お母さま。またお父さまとお母さまの旅のお話を聞かせて下さい」
月牙がねだって来た。
「良いわよ。今日はどの国からお話しようか?」
藍璃は笑いながら月牙の手を掴んだ。
月牙は藍璃の掴んでない片方の手を斬紅朗に差し出した。
斬紅朗は月牙の手を掴むと三人で屋敷の中に入って行った。
三人が屋敷に入った後、庭に植えてあった桜の木から桜の花びらが舞い落ちた。
まだ続くのでもう少し付き合って下さい。