第十話:玉楼
お茶の玉露で思いついた題名です。
「・・・鬼か」
ぼそりと斬紅朗は言った。
「以下にも!鬼の中の王!玉楼様だ!」
将雅、基い玉楼は笑いながら答えた。
「・・・・本物の藤原将雅はどうした?」
分かり切った事だが、遭えて斬紅朗は尋ねた。
「あーあ、そいつなら俺の腹ん中だ」
ポンポンと自分の腹を叩く玉楼。
「・・・・・・死ぬ前のあいつの顔。最高に恐怖で歪んでたな。お陰で今まで喰ってきた人間の中でも特に美味かったぜ」
愉快そうに笑う玉楼に斬紅朗は吐き捨てるように言った。
「・・・・糞以下だな。お前は」
そんな斬紅朗に玉楼は気にしなかった。
「はははは!!当たり前だろ?俺は鬼だぜ!糞以下に決まってるだろ!?」
暫らく笑っていたが不意に腰に差していた両刃の剣を抜いて剣先を斬紅朗に向けた。
「俺の正体を知ったからには死んで貰うぜ。老いぼれ妖怪」
「この妖刀・反鬼で貴様の首を斬り落して藍璃への手土産にしてやる!」
玉楼は言うが早いか一気に斬紅朗との距離を縮めるとを乱暴に振り下ろした。
「くっ!!」
予想以上の速さに斬紅朗は刀で受け止められずに反鬼を振り下ろされた。
「・・・へぇー。俺の一撃を食らってよく腕だけで済んだな。まぁ直ぐに殺すから関係ないがな」
玉楼は左手から大量の血を流しながら右手で刀を構える斬紅朗を見ながら楽しそうに玉楼に付いた血を舐めがら目を細めた。
「・・・・・・・・」
斬紅朗は肩で荒い息をしていた。
左手の血とさっきの人間達との戦いのせいで急激に疲れが生じた様だ。
「おら!おら!どうした!老いぼれ!」
玉楼の攻撃を斬紅朗は必死に防いだが意識が朦朧としてきた。
「隙があるぜ!!」
玉楼は斬紅朗の脇腹を深く刺し横に斬った。
「ぐあっ!」
斬紅朗は呻き声を上げて地面に倒れた。
「ほぉー。咄嗟に体をずらして急所を外させたか。だが、これまでだ」
玉楼は斬紅朗の首に反鬼を当て振り下ろそうとした時に何を思い付いたのかニヤリと笑った。
「お前を殺したら藍璃も追いそうだから、もう暫らくは生きてて貰うぞ」
笑いながら玉楼は斬紅朗の脇腹を蹴った。
『・・・・藍・・・・・・・・・・・・璃』
そこで斬紅朗の意識は途絶えた。
「さぁて、藍璃を迎えに行くかな」
玉楼は鬼の姿から人間の姿に変わると斬紅朗を置いて藍璃を探し始めた。
玉露は苦すぎでした。