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音楽が聞こえる  作者: 春野 セイ
第1章 年の差
9/21

ファミレス



 森岡は、勢いよくご飯をかっ込み、水をがぶりがぶりと飲み干した。


「すごい食べっぷり」

「朝、部活があったんですけど、午後は休みになったから」

「なに部?」

「柔道です」

「そう……」


 あの時、取っ組み合いにならなくてよかった、と今さら安堵する。


「ご飯はお代わりできるんじゃないかな」

「できると思います」


 水を配るウエイトレスをつかまえてさっそくお代わりを頼んでいる。

 食べている間は話さなかったのに、先に食べ終えた森岡は、暁生を質問攻めにした。名前を聞かれ、時々遊びに行ってもいいかと言われた。

 正直、高校生とかかわるのはごめんだった。春臣の一件ですっかり警戒心が強くなってしまった。


「最初に言っておくけど、僕は男が好きな人間だよ」


 森岡が一瞬、きょとんとした顔をする。


「びっくりした」

「え?」

「隠さないんですね」

「そういうわけじゃないけど…」


 春臣の事があったので、言っておけば近づいてこないと思ったのだ。


「俺、全然気にしませんから」


 森岡は平然と言った。

 暁生は気迫に押されて、思わず小さく頷いてしまった。


「毎日は駄目だよ。君が休みの日だったり、僕が暇なときはいいけど…」

「やったあ」


 ガッツポーズをしてから、頭を下げる。


「よろしくお願いします」


 森岡とライン登録をして、ファミレスで別れた。

 家に戻る途中に、さっそくラインが届いた。


 『夜、空いてますか?』

 

 春臣が来なくなり気分が落ち込んでばかりで明日も休みだったので、気晴らしになればと思い返事をした。


『いいよ』

『夜の七時過ぎに飯食ってから行きます』

 

 すぐに返信がきた。


 休日はテレビを見たり、部屋でごろごろしたりしている。今日もまだ半日以上あった。


 暁生は本屋へ行こうと思った。


 これまでの休みの日は、春臣が来て宿題をしていた。時々、映画を見に行ったりもしたが、たいていは部屋で過ごした。

 ほとんど自分はベッドで寝ころんで雑誌を読んでいた。それだけでも充実していた。

 人がいる。それだけでよかった。


 本屋で時間をつぶし、夕飯を食べてから早めにシャワーを浴びた。テレビを見ていると、チャイムの音にハッとした。気がつくと約束の時間になっていた。


 ドアを開けると、森岡が顔を出した。ぐいっと大きい体が玄関の中に入ってくる。


「小野寺さん、ゲーム持って来たんで一緒にしましょうよ」

「どうぞ、上がって」

「お邪魔します」


 森岡がゲームを持って来てくれて助かった。あっという間に時間が過ぎた。



 午後十時になる前に森岡を家に帰らせた。




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