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音楽が聞こえる  作者: 春野 セイ
第1章 年の差
8/21

消去



 春臣の電話番号を消去した。

 携帯電話そのものを交換しようと考えたが、そこまでする理由がない。





 あれから春臣と連絡を取らなくなって、数日が過ぎた。


 休みの日、朝寝坊して、朝と昼を兼ねた食事をしようと部屋を出ると、いきなり目の前に上背のある少年が立っていて、心臓が止まりそうなほど驚いた。


「あっ、すみません、脅かせてっ」


 男らしい声が焦っている。少年は学生服を着ていた。野球部員なのかと思わせる角刈りで、思いのほか綺麗な目をしている。鼻筋も通っていて男前だ。


「誰かな?」

「俺、春臣の友だちで森岡もりおかって言います」


 春臣の名前が出て胸が痛んだが、それを無視して少年の話を一通り聞く。


「君、前に春臣とケンカしてた子だよね」


 森岡は口を閉じると小さくうつむいた。見た事あると思った。 春臣と出会うキッカケを作った男だ。


「春臣の友だちなの?」

「あの日……、ちょっと俺、追いつめられてて、あいつにひどいことをしました。あなたに止めてもらって……。頭が冷めて、それから謝って仲直りしました」

「そうなんだ。ごめん、悪いけど、これからご飯を食べに行くんだ」

「一緒に行ってもいいですか?」

「え?」

「あなたと春臣が仲がいいの知っていて、ずっと気になっていたんです。でも、最近、春臣と一緒にいないから」

「ああ…」



 暁生は家の鍵を閉めると歩き出した。森岡がついてくる。ついて来るなと言うのも大人気ない気がして、そのままにしておいた。

 森岡にとっては自分をよく知っているのかも知れないが、こちらからすると初対面である。だが、高校生にそれを求めるのは無駄なのかも知れない。


 二人分の水が用意される。メニューを決めて、仕方なく森岡にも渡した。


「いいんですか?」

「いいよ。好きなの注文して」

「ありがとうございます」


 これがいけないのだろうか。

 森岡の顔が輝くのを見て、しまった、と思ったが後の祭りだ。


「最近、一人なんですね」

「どこかで見てる?」

「ち、違いますっ。あなたは俺の憧れで」

「は?」


 拍子抜けする。憧れと言われても、お互いのこと何も知らないのに。


「たまにです。たまに、アパートの近くまで来て……」

「そういえば、家はこの辺りなの?」

「はい。近所です」


 合点がいく。だから、初めて会ったとき、家の近くだったのだ。

 ウエイトレスがA定食を二つ持って来て、話が中断する。

 森岡は勢いよく味噌汁をすすった。





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