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音楽が聞こえる  作者: 春野 セイ
第2章 それから
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待ち合わせ


 守ともう一度会う。


 緊張であまり眠れなかった。でも、自分には支えてくれる人がいる。


 守は、ただ謝りたいと言っていた。二人とも高校時代から卒業できていないのかも知れない。ここで会って話をすれば、前に進めるかもしれない。



 待ち合わせは駅前のカフェにした。

 約束した時間より少し前に店に着いた。大きく深呼吸する。


 店内に入ると、客も多くがやがやしていたが、誰もいないような静かな場所よりも、緊張しない気がした。


 守は先に入って座っていた。顔つきは、前と違ってこわばっている気がした。彼は、暁生にすぐに気がついた。ホッとした様子で手を振った。


「来ないかと思った」


 テーブルに着くなりそう言われた時、守も同じ気持ちだったのだと思った。


 ――怖いのだ。


 高校生の頃は何も考えなくてよかった。けれど、今は違う。


「来てくれてありがとう」


 守は笑ったが、無理しているように見えた。


「大丈夫?」


 思わず心配すると、


「え?」


 と言って、暁生を見ると苦笑した。


「何か食べる?」


 守に聞かれたが暁生は首を振った。長く話をするつもりはなかった。


「僕はコーヒーにするよ」

「分かった…」


 守は立ち上がると、無言でレジの方へ行ってしまった。

 暁生は、席について窓の外を眺めた。

 前に、桜子と待ち合わせした時も、たくさんの人が歩いて行くのが見えた。みんな、忙しそうに歩いて行く。


 春臣は今頃何をしているだろう。


 ふと思って携帯電話を見たが、連絡はない。今の時間ならアパートに来ているかもしれないし、今日は来ないかもしれない。


 時刻は、午後の七時を過ぎたばかりだ。


 守は、営業の仕事をしていると言っていた。今日は早く上がらせてもらったのかもしれない。

 いろんな事を考えていると、二人分のコーヒーを乗せたトレーを持って守が戻って来た。


「お金払うよ」

「いいよ、今日は俺が誘ったし、おごるよ」


 払う払わないの問答するのも嫌だったので、心遣いに甘えることにした。


「ありがとう。頂きます」

「うん」


 守がにこっと笑う。少し、顔に赤みが差して先ほどより元気に見えた。




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