距離
高校時代を振り返る。
守のことは大好きだった。連絡がつかなくなり、振られたのだと自覚した時はショックだった。
きっと、男同士だったのがダメな理由だったのだろう。それか、しつこくし過ぎたのかもしれない。気持ち悪いと思われていたのかもしれない。
いろいろ考えて、落ち込んだ時期もあった。
春臣が優しい目で見つめている。
「僕は迷っている。本当は会いたくないのかもしれない」
「どうして?」
「怖いから。真実を知るのが怖い。もう、過去の事だから触れないで欲しいけど、向こうは謝りたいって」
「そっか…」
春臣はぽつりと言って、さらに考える顔になった。
「俺も一緒に行こうか?」
「え?」
暁生がびっくりして春臣を見た。
「一緒に?」
「だって、怖いんでしょ」
そうだけど。恋人も連れていくのは勇気がいるし、なんとなくそれは違うような気がした。
「ありがとう。でも、それはやめた方がいい気がする。僕、一人で会いに行くよ」
「寄りを戻したりしないよね」
春臣が真剣に聞く。暁生は頷いた。
「それは絶対にない」
「分かった。なら、許す」
へへ、と春臣が照れたように言った。そして、暁生の手を握った。
あの日以来、手を握るのも久しぶりだ。
温かい手のひらで、暁生はドキドキした。
目を合わせると、春臣がそっと体を寄せて抱きしめてくれた。
春臣もドキドキしているのが分かる。少しずつ、距離が縮まるのがうれしかった。




