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友達

久しぶりにリョウが本文に登場!

ただ、この類の話はあまり得意ではなくて…。

今回のは温かい目で見てください。

よろしくです。

「リョウ殿!」


クロの所に向かっている最中、サクに呼び止められる。


「サク!無事だったか!」

「私はリョウ殿の使い魔です。あれくらいどうってことはありません!」


本当に頼もしい使い魔を持ったと思う。

が、今はそれどころではない。


「サク、悪いが急いでいる。移動するぞ?」

「分かりました」


リョウが進む方向に少し後ろからサクがついていく。


「リョウ殿!いったいどこへ?」

「クロの所だ」

「クロに何かあったのですか!?」

「…敵に寝返った」

「…そうですか」

「あまり驚かないんだな」

「マクアドルから話は聞いていました。ですから多少は頭が追いついています」

「俺は、いまだに信じられない」

「リョウ殿…」


暗い顔をするリョウ。

今まで仲が良かった奴が敵なんていまだに信じられないに決まってる。


「戦うんですか?クロと」

「もちろんだ。俺は、あいつの本音が知りたい」

「本音…ですか?」

「あいつは今まで笑顔しか見せてこなかった。だがそれは嘘で塗り固めた笑顔だ。つまり俺は本当のあいつを見たことがない」

「…」

「俺はあいつにどんな事情があるか知らない。でも俺はあいつの本当の笑顔が見たい」

「…それは、ミリーナが言っていた戦争には関係していませんよ?」


予想外の言葉に返事が少し遅くなる。

その間に一つの建物の前に降り立つ。


「意地悪言うなよ、サク」

「すみません」


中に入り様子を確かめる。


「…でもまぁ、なんだかんだ言っても一番の理由は友達だから、だな」

「リョウ殿らしい意見です。でもクロはどう思ってるんでしょうか?」

「俺と同じだと思うが一応聞いてみるか?…どうなんだ、クロ!」


奥のほうからクロがやってくる。


「…どうして?」

「ここが分かった理由か?そりゃ、4年間もお前と同じ部屋だったからな。お前の魔力は覚えたよ。誰よりもな」

「そうじゃないよ。どうしてあそこを抜け出したの?」

「4年間も一緒にいたんだぞ?理由ぐらいクロなら分かるはずだ」

「…そうだね」

「で、お前は俺のことどう思ってるんだ?」


俯き、申し訳なさそうな顔をする。


「楽しかったよ、リョウとの学校生活は。でも、リョウとは友達にはなれない」

「友達って、そういうもんじゃないと思うんだけどなぁ…。そんななれる、なれないはないと思うけど…」

「リョウはここに何しに来たの?」

「決まってるだろ。クロ、帰るぞ」


驚きを顔にあらわにする。


「…僕は、リョウの敵だよ?」

「また味方になってくれればいい話だろ」

「発想がすごいね」

「それにまだ俺とサク以外はお前が敵だとは気づいてない。普通にいけるさ」

「…僕は本当にいい友達を持ってたんだね」

「持ってたんじゃない。持ってるんだよ」

「…ありがとう。でもね、どうにもならないこともあるんだよ」


地響きと同時に後ろから大きな人影が現れる。


「…やるしかないのか?」

「僕としてはここで引いてほしい。それに僕を倒したってこの侵攻は止まらないんだよ?」

「俺は今ここにお前を取り戻すために来てるんだ。戦争は仲間に任せた」

「…分かった。そこまで言うなら―――」


後ろの物体の正体があらわになる。

大きなゴーレムだった。


「―――僕は全力でリョウを倒す!」


「オ…オオオオオオオォォォォォォ!」


ゴーレムが雄たけびをあげリョウたちに突っ込む。


「サク!お前はゴーレムに集中しろ!クロは俺が隙を見つけたら戦う!」

「はい!ではリョウ殿、この『ごーれむ』という石の人形の弱点を教えてください!」

「そんなの知るわけないだろ!?」

「名前だけ知ってるんですか?」


ゴーレムの攻撃によりサクとリョウは離れ離れになる。


「(…もしかして、この世界にはゴーレムって言う概念はないのか?)」


「へえ、ゴーレムを知ってるんだ?みんな石人形って言ったのに、リョウは物知りだね」

「この世界にゴーレムって言葉マジでないのか?」

「この世界?」


言ってはいけないことを言ってしまったと思い、すぐに戦いに集中する。





ゴーレム

地球ではギリシャ神話にそれらしきものが登場しており、ある話ではアダムが世界で初めてのゴーレムだったのでは?という説もある。

今、リョウの目の前に現れているのはリョウが思い描いていた通りのゴーレム。

高さは10mほど。

全身が岩や、金属でできておりとても大きい。


リョウは様子見として、手榴弾を投げてみる。

銃では崩すことができないのは分かっているので使わない。

爆発が起き、ゴーレムの右腕が少しえぐれる。


「(…あの調子だとあと2回ぐらい投げれば右腕は壊せるか?一応まだ5つあるし両腕ぐらいなら!)」


当たり前だがゴーレムに痛みはない。

攻撃対象をリョウに定め、右手でいいストレートをしてくる。

握りこぶしだけでも2mはある。

リョウはそれをかわし腕に沿って移動する。

先ほど手榴弾を当てた場所に来ると、再び手榴弾を出し、そこに押し込むようにして設置する。

ゴーレムが無造作に腕を動かしリョウにあてようとする、がそこで爆発。

見事に腕が落ちる。


「リョウ殿!」

「ああ。これならいけ―――」


しかし、取れた右腕は地面に落ちて3秒と経たないうちに小さな小石に分解されながらゴーレムにくっつく。


「デスヨネー」


建物の一部も無理矢理はがされゴーレムの一部となる。


「リョウ。諦めて退いてくれる気にはなった?」

「なに言ってるんだよ。これからだろ?」

「あらかじめ言っておくよ?これが僕のネームの能力。命がない物の一部を自由に使って新しい何かを作る」

「ずいぶん強い能力だな。なんで魔法側に入んなかった?」

「ネーム持ちだとばれると何かと注目されるからね。あえて科学側に入って、しかもAコースにすればなおのこと目立たない」

「なるほどな…。となると以前戦った剛石竜もお前が?」

「いろいろかき集めてね。中身もまねることができればそいつ特有の技も使えるようになるんだ」


ゴーレムの左腕から1つの大きな岩が取り外される。

それがリョウとサクに襲い掛かる。

予想外の行動だったが距離がある。

避けるには十分だった。


「これはゴーレムの形をした、ただの泥人形。僕が操ってるからゴーレムの概念があるなら捨てたほうがいいよ?」


岩が単体で降りかかってくるがゴーレムも攻撃はやめない。

だが、攻撃は当たることはなかった。

もし、クロも何かしら魔法を唱えてくれば当たったかもしれない。

だが目の前にいるのは直線的な攻撃しかしてこないただのデカ物。

いくら、3段階目のドールのままのリョウとはいえ、避けるのはさほど難しいことではなかった。

けれども、ゴーレムはあまりにでかくクロの所にいくことすらできなかった。

避けられるとはいえ、ずっと守りではいつかは負けてしまう。


リョ(こういう訓練も積んでおくべきだったなぁ…。いや、俺の学年に不死身の壁になれる奴なんて使い魔を含めてもいないよな…)


ケイトがいたのだがリョウが知る由もなかった。


「これならどうかな…?」


3段階目になって得られた攻撃方法、レーザー的なものをヒュニスの先から放つ。

これはヒュニスが自由自在に動かせるリョウにとってはうれしいものだった。

うまくやれば弱点を狙い撃ちできるし、死角もなくなったからだ。

しかし、これは燃費が悪かった。

もともと内蔵されている燃料を使えば10秒、Sバリアのエネルギーを使っても30秒が限界だ。


レーザーがゴーレムに当たる。

が、これもあまり効果はなかった。

削ったそばから回復していくのでどんな攻撃も本当は意味がないのだが。


サクも攻撃するが、まだ子供。

大きさだって竜になったって、小学1,2年生の子供ほどしかない。

いくらノティスと言えども無理があった。

ゴーレムにダメージを与えることに執着した場合は。


「サク、作戦変更だ。ゴーレムの態勢を崩すことのみに集中しろ!」

「了解しました!」


ノティスがもともと特化しているのは隠密性と速さだ。

ここでは隠密性は役に立たないが速さは大いに役に立つ。

その速さは尋常ではない。

人の子供ほどの大きさがあるのに、人の目には見えないような速さも出せるのだ(直線の場合)。

サクはワイヤーを使いゴーレムの足のバランスをおかしくさせる。

ゴーレムはあまりの速さに対応できずバランスを崩し倒れた。

リョウが命令を出してから6秒しかたっていなかった。


「サク、そいつを押さえてろ!」

「ええええ!?リョウ殿、それは困難を極めるかと!」

「できる限りでいい。俺がクロを倒せばそいつは消える!それまで耐えろ!」

「や、やってみま…うわ!」


サクに分裂していた岩が襲い掛かる。

ワイヤーを持ちながら岩をかわす。

リョウはクロの前まで来た。


「…やっぱりサクはすごい使い魔だね」

「お前だってうまくいけばあいつ以上の奴を使い魔にできるぞ?」

「この戦いが終わった後にでも探してみるよ」

「一緒にな」

「…今からでも遅くないよ。さっきも言った通りラブトリアはリョウを歓迎するんだよ?僕の仲間になってくれれば」

「今ミューズデルを攻撃しているのはラブトリアだろ?」

「…」

「なら無理だ。俺は誰も失いたくない。リリア、ケイト、レックス、マーシャ…それにお前も」

「世の中そんなうまくいかないよ。リョウは夢の国の住人なの?」

「…あながち否定できないかもしれないな」


この星ではどういうわけか宇宙に出ることができない。

出身が地球であるリョウはこの星の人から見れば夢の国の住人と言っても過言ではないかもしれない。


「?」

「いや、この話はまた今度で。それよりクロ、なんで本気を出さない?」

「こんな巨大な人形を作ったのになんで本気じゃないと思うの?」

「当たり前だ。ただデカいだけ。あんな攻撃あたるわけないだろ」

「…でも、リョウだって本気出してないでしょ?」

「お前が出してないのに出すわけないだろ」

「だって…」


サクとゴーレムが後ろで争っている中、静かに時間が進む。


「なんでそこまで帝国側に肩入れをする?お前は昔のことを話したがらなかった。少し話した時も決まって暗い顔をした。つまりあまりいいとは思っていないんだろ?」

「…」

「悩み事があるなら一緒に悩んでやる。問題があるなら一緒に解決してやる。どんなことでも力になってやる。だから、な?」

「…んだよ」

「え?」

「無理なんだよ!」


突然クロが泣き出した。

それと同時に後ろからゴーレムの一部が飛んでくる。

まったく気が回っておらず、見事に食らってしまった。

背中の方の骨が何本か折れる音がする。

そのまま壁に叩きつけられた。


「僕だって悩んだよ!初めて君と会ったときは一人と仲良くしておけばそれでいいかなと思って話しかけた!でもそしたらどういうわけか君は逸材だった。そして人望もあった!必然的によく話す人たちが増えてしまった!」


サクが押さえていたゴーレム本体が起き上がりリョウに向かってパンチを入れようとする。

リョウはそれに反応し、急いでかわす。


「いずれこうなることは分かっていた。だから話す程度でよかったんだ!それなのにリョウに対してはどういうわけか自分から話にいってしまった!リリアさんや、マーシャさんなんかは、僕によくしてくれた!」


サクも応戦しようとするがゴーレムの硬さに手も足も出ない。


「昨日の夜だって悩んだんだよ!命令で一部の人間を除いてミューズデルの人間は皆殺しっていう命令が出てる!逆らうことはできない!だから悩んだ!それでかけあってなんとかリョウだけは逸材ということもあって殺さなくてもいいっていう許可が下りた!でも他の人は…無理だった」


痛みに耐えながら回避のみをするリョウ。


「もう友達として接することはできないと思う!でもリョウには生きていてほしいんだよ!だから、だから、だから…」


言いながらクロは崩れ落ちる。


「…」


黙ってクロの話を聞いていたリョウ。

結論は出た。


「誰だ?」

「え?」

「誰がお前をそこまで追い詰めたんだ?と訊いている」

「まさか…マスターとやりあうつもりなの?」

「そいつがお前をそこまで追い詰めたのならな」

「無理だよ!マスターはコロナを完成させた!たてつけばリョウが死んじゃう!」


コロナ。

ミリーナの考えは当たっていたのかと心の中で舌をうつ。

だが結論は変わらない。


「安心しろよ。死にそうな場面に出くわすのは慣れっこだからさ」

「そういう問題じゃない!それにリョウはコロナがどんなものか知らないでしょ!?」

「知ってるよ。無限の魔力が得られるんだろ?」

「知ってるならなんで?勝てないのは分かるでしょ!」

「いいや、わかんないね」


ぽかんとした顔をして固まるクロ。


「この世に絶対なんてないんだから勝てる可能性はある。それに―――」


クロの前に来て頭をなでながら言った。


「クロを苦しめたやつだ。一発殴らなきゃ気が済まないしな」


しばらくの間時が止まったかのように呆けた顔をするクロ。

泣いていた顔に少しだけ笑顔が入る。


「今の台詞となでる行動、僕が女子だったらすぐ惚れてたよ」

「なら、お前が女子じゃなくて残念だったな」

「…何を言っても無駄みたいだね」

「当たり前だ。絶対助けてやるから安心しろ」

「…うん」


ここでクロは笑顔を見せた。

嘘偽りのない本当の笑顔だった。


「よし、じゃあさっさとその親玉を倒しに…いてて」

「ご、ごめん。痛いよね?さっき結構ひどい音してたし…」

「気にすんな。これくらいはどうってことねぇよ」

「待ってて、大して得意ではないけどちょっとした回復魔法なら使えるから」

「なら、少しだけお願いしようかな。サクも―――」

「なにやってるんですか?」


突然響く知らない声。

クロは聞き覚えがある声。


「…ジークさん」

「何やってるんですか、O。そいつが先ほどあなたを襲ったのは見ていました。マスターは反抗しなかったときのみ仲間に迎え入れるといいましたが?」

「誰だ、お前?」

「初めまして、ジーク・T・エリオスといいます。貴方のことは資料で拝見しましたよ、リョウ・アマミヤさん」

「俺の資料?変態か、お前」

「失敬ですね。資料を作ったのはOですよ?それに大した情報も載ってませんでしたし」

「そうなのか、クロ?」

「…はい、すみません」


Tはサクとリョウたちの間に降り立った。

しかし、警戒するそぶりも見せず普通に話を続ける。


「ところでアマミヤはどこかお偉いさんの子供かい?」

「なんでだ?」

「Oが作った資料、雑といってもいいほど情報がありませんでした。マスターに提出するものだったのに、あれはひどかった。だから私も調べたんですよ。でもどういうわけか全く出てこなかった」

「…」

「かなり深くまで探しましたが消した形跡すら見当たりませんでした。ありえない話ですが事実です」

「それでどこかのお偉いさんの子供なら、残さなくてもいいことがあるんじゃないか。そう考えたわけだな」

「そうそう。で、どうかな?当たってる?」

「残念ながら外れだな。そんないい血筋の人じゃねぇよ、俺は」

「そうですかぁ…。あと考えられるのは、この星出身じゃないっていうぶっ飛んだ考えなんですけど」

「いい線いってるな。まぁ、教える気はないけどな」

「なかなか夢のあるヒントですね。まぁいいです。殺してしまえば一緒ですし」


建物の壁に爆発が起きる。

外から敵兵が流れ込んでくる。

一気に囲まれてしまった。


「まだこんなにいたのか!?」

「悪いですけどO、貴方は反逆罪で私が粛清します。もちろん母親の命もないと思ってください」

「…!」

「させると思うか?」

「どこにいるかも知らないくせに…。それに貴方はまず自分の心配をするべきです」


確かに周りには100を超える数の敵。

いくらリョウやサク、本気を出せるクロといえども分が悪い。

そんな時、そこに近づいてくる影があった。

サクが一早く気づく。


「リョウ殿!何か近づいてきます!これは…」


Tが立っていた場所に突っ込んできた。

Tはひらりとかわし距離をとる。


「私に気づくなんて、さすが将来の召使いね」

「ミィヤ!」

「将来のリョウの嫁なのよ?後で私の呼び方の指導もしなくちゃね…」

「どちらさんですか?あなたは?」

「この魔力、かすかだけど覚えがあるわ」

「何?」

「忘れたとは言わせないわよ…。あなた私の寺を襲撃した一味よね?」

「寺?…ああ、貴方巫女ですか!」

「クロのことは今までの生活からなにか無理強いされたっていうのは分かってたわ。だからなにも言わなかった。おそらくあなたはあの時のリーダーね?」

「そうですが、何か?」

「やっと、見つけたわ…。サリス、ノリス、命令よ!奴を殺すわ」

「「承りました」」


~ゴーレムを倒した後のサク~


「(リョウ殿…、いつまで話しているのですか!?そんな悠長に話してない…で!?)」


分裂しているゴーレムの一部がサクに襲い掛かる。

それでも必死で避けながらゴーレムを立たせまいとうまくワイヤーを使う。


ク「世の中そんなうまくいかないよ。リョウは夢の国の住人なの?」

リョ「…あながち否定できないかもしれないな」


「(まだ話してる!?いくらリョウ殿といえどもこれはあんまりです!あとで一言言っておかない…と!?)」


ゴーレムが寝ながら腕を振り回してきた。


「きゃあ!」


殴り飛ばされ、ゴーレムから離れてしまう。

それでもワイヤーで必死に押さえこむ。

しかし、離れたところからでは大して力は入らない。


「(リョウ殿~~~~~!まだですか!?)」


ク「無理なんだよ!」


大きな声が聞こえたかと思うとサクを狙っていた岩がリョウのほうへ飛んで行った。


「あっ…」


リョウが壁に叩きつけられる。

ゴーレムも大きく力を入れワイヤーをちぎり始める。


「(えっ!?ちょっと、これは…!ヤバいやばいやばい)」


しかし、もう限界だった。


「(あっ…)」


ワイヤーが切れゴーレムがリョウのほうに向かった。


「……、まぁいいか♪」


初めて使い魔で言ってはならない言葉を使った瞬間だった。

彼女自身でさえ理解できるほどすがすがしい笑顔だったという。

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