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リョウの休日その1~恐怖と困惑~

ようやく俺の出番だ。

フィリアが2回も主人公枠で出てるのに俺がないのはおかしいだろ。

えっ?

お前主人公なんだから別にこんな回いらないだろ?


俺視点なのはまだ2回目なんだからいいんだよ!

それよりこれ、前回の話の俺視点バージョンだから。

「ん~…、眠い」

「そんなこと言わないで、早く行こうよ」

「でもなぁ、リリアの提案となると嫌な予感しかしないんだけど」


読んでくれてる方々、こんにちは。

リョウです。

やっとこの機会が来たぜ。

主人公なのに俺がメインの話が一話も無かったのおかしかったろ。

ようやくこの時がきたんだよ。

だけどどういうわけか、その記念すべき第一回目でまさかのリリアの呼び出しだ。

俺、この世界来てからほんとついてねぇよな…。


「まぁまぁ、そんなこと気にしないで。なら早く行って下見してこようよ?」

「お前はどうしてそんなに早く行きたがるんだ?」

「早く行っても駄目なことはないでしょ。遅れるとダメだけど」

「それはまぁ、そうなんだけど…」

「じゃあ行こうよ。何事も早いに越したことはないんだから!早起きは三文の得って言うでしょ?」

「それは使い方間違って…って、押すな!」

「さあ行くよ!楽しみだなぁ」


無理矢理クロに押されながらリョウは部屋を出て、体育館へ向かう。







待ち合わせ時間より20分も早く着いてしまった。


「何にもないね?」

「いくらリリアでも体育館自体に細工はできないだろ。でもこれじゃあ、下見はできねぇな」


ったく、折角早く来たのにこれじゃ意味ないじゃねぇか。

これで連れてきたのがマーシャとかだったら少し嫌味が言えるんだけどなぁ。

でも今はクロ。

こいつにはなんかこう…そういう風なことは言いづらい。


「ねぇ、リョウ。誰か来たみたいだよ?」


なに?

こんなに早いのに来る奴がまだいたのか。

リリアは一体だれを呼んだんだ?


「クロく~ん、あなた~♪」


…。

今聞いちゃいけない声を聞いたような気がする。

いや、あいつは居るはずないだろ。

だって、転校生だぜ?

どう考えてもここに来るのは場違いもいいところだろ。


「ちょっと、何恥ずかしがってるのよ?ああ、人前だから?」

「ええ~っと、ミィヤさんだよね?」

「名前覚えてくれてるの?ありがとう。ミィヤ・ケリニアスっていいます」

「僕はクロツェフ・アリアジートっていうんだ」


き、来てやがる…!


「な、なんで居るんだよ!?」

「今回はちゃんとお誘いがあったので。リリアからちゃんとね」

「あの野郎…!」

「それよりあなた、折角早く来たんだから…ね?」

「そのいつもやってるあれやろう、の目はやめてくれ。俺はお前とそんな関係になったことはない」

「じゃあとりあえず倉庫にでも…」

「聞けよ」


だめだ。

こいつはなんでこうも面倒くさいんだ。

初めて会った時も結構強気だったけどあの時の方がマシだよ。

…ああ、あのころが懐かしい。


「リョウ?なんか遠い目してるけど大丈夫?」

「ああ、大丈夫じゃないかもしれない」

「なら、私が看病しますよ!保健室へ行きましょう」

「普通の男子ならこの場面、うれしいんだろうけどお前が相手だと恐怖しかない…」


腕をつかんで引っ張ろうとするミィヤ。


普通の女子に引っ張られたのなら、しかもミィヤのようなきれいな人ならうれしいんだけどなぁ。

なんでこうなっちゃったんだろう。

もしかして俺が悪いのか!?

いや、断じてそんなはずは!


「さっ、行きましょう!体調が悪い人を放っとけないわ」

「いや、やっぱ大丈夫だから」

「何言ってるの!何かがあってからじゃ遅いのよ?」

「マジで大丈夫だから!頼むから離れ、ってマーシャ、フィリア!」


た、助かった。

頼むからこいつを俺から引きはがしてくれ!


「…リョウ。その人は?」

「えっ?お前なら知ってるだろ?転校生だよ。フィリアは初めてだよな?」

「はじめまして、フィリアさん。マーシャさんも顔を合わせた程度でしたよね?私はミィヤ・ケリニアスって言います。よろしくお願いします」


こいつ、本当に丁寧な言葉使ってやがる…。

ついでにせめて人前でだけでも俺にべったりになるのやめてくれないかな。


「ご丁寧にありがとうございます。フィリア・リトルトリアといいます」


フィリア、気づくんだ!

こいつ、猫かぶってるぞ!?


「…マーシャ・クリーシャよ」

「よろしくお願いします」

「ねぇ、いきなりで悪いんだけどあんた、なんでリョウにくっついてるの?」


なっ!?

そこを突っ込むとは…。

いや、でも核心をついてくれただけ良しとするべきか?

とりあえず誤解を…。


「なんでって…、ラブラブだからですよ?」

「「ラブラブぅ!?」」


しまった!

先手を打たれた!?


「ち、違う!誤解だ!」

「またまたぁ、この人恥ずかしがり屋なんだから」

「ちょ、どういうことよ?」

「まさか付き合っている人がいたなんて…」

「リョウ、付き合ってたの!?」

「違うから…!誤解だから、誰か助けて―!」


結局レックスが来るまでひどい目に遭いました…。









「さて、みんな集まったわね。これから楽しいことを始めたいのだけど…、リョウ、どうかした?」


力を使い果たしたかのような状態のリョウに少し事情を聞こうとする。


「気にしないでやってくれ。すぐに元気になる」

「そう?ならいいのだけれど。じゃあ、改めて只今より『肝試し』をやりたいと思いまーす!」

リリア以外『肝試しぃ?』

「肝試しって、あの肝試しか?」

「それ以外ないと思うんだけど?ちゃんとこわーい仕掛けは準備してあるわよ!」

「普通肝試しって夏やるもんじゃね?」

「何言ってるのよリョウ。寒い中、まぁあまり寒くないけど、そんなときに肝を試すのが普通でしょ」

「そうだよ、リョウ。何言ってるの?」


えっ?

なに?

肝試しって普通夏やるもんじゃないの?

わざわざ冬!?

ここって変わったところあるよなぁ…。


「きっと疲れがまだ残ってるのね。まぁいいわ。夏にやろうが冬にやろうが私のやることは変わらないし。それじゃあさっそく、これ引いて頂戴」

「おみくじ?」

「そりゃ、肝試しに一人で行くのはあまりに酷よ。だから面白イベントがあるように男女の組みになってもらいます♪」


言っちゃったよ。

面白イベント狙ってるって言っちゃったよ。

わざわざ参加する奴いるのか?


「あの…、リリアさん」

「ん?何?」

「私こういうのは苦手なのでちょっと…」


ほら見たことか。

主張が一番小さいフィリアが最初に嫌がったぞ?

誰も参加しないだろ。

なんか2人でやり取りしてるな。


「やぁぁぁぁ!」


うおおおおっ!?

どうしたんだ、フィリア!?

それにはいったい何が写っているんだ!?


「さて、後のみんなは参加でいいかしら?」


な、なんか黒いオーラが見える!

頭が逆らうなって言ってる!

ここは従うしかないか。


「よし、じゃあみんなこれ引いて頂戴!」


全員がくじを引く。(男女分かれて)

ペア

赤ミィヤ、リョウ

青レックス、リリア

黄フィリア、ケイト

緑クロ、マーシャ



…。

悪意しか感じないぞ。

なんだこの組み合わせは?


リョウはリリアが通路について説明しているとき、真っ白になっており一切話が頭に入っていなかった。


「さっ、私たちも行きましょ?」

「リリアめ、後で許さん…!」


ミィヤに話しかけられ、ようやく我を取り戻し転移装置に乗った。

転移先は本当によくできたお化け屋敷だった。

見た感じ場所は…


「病院か?」

「そうみたいね」


口調が元に戻っている。


「口調が元に戻ったな」

「そりゃあ、あなたしかいないもの。でもあなたを想う気持ちは変わらないわよ?」

「それは残念だな。少しは大人しくなってほしいのにな」

「むしろ気分あげあげよ!2人っきりですもの」


やっぱりそうなるか…。

とりあえずさっさとここを出よう。

こいつと2人っきりだとマジでやばい。


「あっ、待ってよ!なんで黙っていくのよ?」

「お化け屋敷だぞ?黙って進んだほうが面白みあるだろ」

「そうだけどあなたの隣にいないとキャッってな感じで抱き付けないじゃない」

「それ、普通俺に言うか?」

「いいのいいの。さっ、行きましょ!」


歩いて2人は進み始めた。










「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「…」


進み始めてから5分、ずっとこれだ。

ミィヤは仕掛けが動くたんびに驚き、リョウは全然動じない。

仕掛けは別に怖くないというわけではない。

実際、かなりリアルにできてるし結構施設の中も凄いこだわっている。

しかし、タイミングが微妙だった。

8割がたがいつ出てくるのか何となくリョウには分かってしまった。

顔だけ見ても十分怖いのだが、タイミングと合わさって初めて悲鳴が出るのがお化け屋敷だ。


「こ、怖い…」


さっきからミィヤもリョウの腕を掴み離れようとしない。

顔からして、よこしまな思いはなく心の底から怖がっているようだ。


「巫女ってのは悪霊退散!みたいなことやるんじゃないのか?」

「今のご時世にそんな依頼こないわよ!幽霊なんていないんだから!…ん?」


少し広くなった空間が目に入る。


マーシャとクロがいた。

クロはそりゃあもう超震えているのが少し遠くから見ても分かる。


「あら、リョウ。なんか満喫してるみたいね」

「今は言ってやるな。こいつ、マジで怖がってるみたいだから」


半泣き状態のミィヤを見て納得するマーシャ。


「じゃ、次私リョウと行くから」

「えっ?何それ?」

「あんた聞いてないの?ここは組み合わせを入れ替える空間よ。リリアが言ってたじゃない」

「そうだったか?」


真っ白になっていたリョウにリリアの声は届いていなかったので初耳だ。


「まぁ、交換ってなら仕方ないな。じゃあミィヤ。ここでお別れだ」

「えっ?嘘でしょ?」

「そういうルールだからな」


それに危険も回避できるし。


「ちょっと、待って!」

「いや、待てと言われましても…」

「ごめん。僕からもお願いします」


少し気力を取り戻したクロが懇願するような目をする。


「どうした。おまえまで」

「見たところ、ミィヤさんも怖がりみたいだけど?」

「そうだな。すげぇ絶叫してたぞ?」

「ダメだよ!僕と2人になったらここから進めないよ!」

「目をつぶって5分くらい歩けばいいじゃん」

「そんなこと言わないで!後でなんでも一つお願い聞くから、助けて!」


小動物のような目で見つめてくる。

なんかそこまでされると断った場合、俺が悪役みたいじゃないか。

…。


「…マーシャ、ミィヤと行ってくれるか?」

「えっ?なんでよ?」

「組み合わせは交換しておきたいと思うんだけどあの2人がなんだか可哀そうに見えてきたんだ」

「それは…、まぁそうなんだけど。せっかくの機会なのに…」

「せっかくの機会?」

「なっ、何でもないわよ!分かったわ、あなたはクロと行きなさい。私はミィヤと行くわ」

「よし、決定だ。クロ、行くぞ」

「た、助かったぁ~」


何か言うと思ったミィヤは何も口にしなかった。

不思議に思ったリョウに気づいて言った。


「安心して、私はリョウ一筋だから」

「そこは心配してない」

「私、マーシャさんと少し話したいことがあるんです」

「あんな怖がってたのに話せるのか?」

「…最大限努力してみます」


リョウとマーシャはそれぞれのペアを連れてその部屋を後にした。












「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「…」


ペアを変えてから歩き出して5分ほど経った。

リョウは疑問を抱いていた。


なんで、さっきと同じ状況になるんだ?

ペアを変えた。

しかも男に。

なのに。

なぜ悲鳴も腕をつかまれているというこの状況もミィヤの時と全く一緒なんだ?


「リョウ、絶対離れないでね?」

「お、おう…」


なんかミィヤといた時より緊張する。

落ち着くんだ、俺。

今一緒にいるのは男、そう男。

変なことをすれば一生後悔することになるぞ?

人生が終わる。

地球に帰る前に変態というレッテル貼られて人生終わりなんて絶対ごめんだ。


無心になろうと必死なリョウとは裏腹に、クロは驚くたんびにリョウに抱き着く。


「ひぃぃ!ろくろ首!」

「…!」


これもあまり怖くない。

っていうか、今どきお化け屋敷でろくろ首が出るのか?

それより早くゴールに着いてくれ…。

マジで何かに目覚めそうで怖い。


ところがろくろ首を最後に突然びっくり要素がなくなる。

逆に怖い。

なにかデカいの仕掛けてるんじゃないだろうな?


「なんか…、何もでなくなったね?」

「そうだな。なんでだろうな」

「…」

「…」


なんだこの空気。

抱き着かれるのも嫌だがこの空気もちょっと…。


「ねぇ、リョウ?」

「ん、なんだ?」


話題があるのか、ありがたい。


「リョウって、小さいころとかどんな人だったの?」

「小さいころ?なんでそんな話を?」

「こうやって一年間、一緒の部屋で過ごしてきたけど過去のこと知らないなぁと思ってね。嫌なら無理にとは言わないけど」


…。

過去のこと。

普通ならおそらく話した。

けど、親睦会より少し前から監視を頼まれていた。

そんなことを思い出してしまった。

もしかして俺を探っているのではないか?

けど…、信じたい。

クロを。

もちろん地球のことについて話すことはできないができる限り話してやりたい…。


「そうだな…。いいよ、何でも聞いてよ」

「本当!?じゃあ…」







「…へぇ、リョウはいろんな経験をしてきたんだね」

「そうだな。もしかするとそうなるのかもしれないな」

「本当にすごいよ。話してたら出口まで来ちゃったし」

「えっ?出口」


あっ、本当だ。

出口だ。

結局なんにも出なかった。

最後の方かなり手抜きだな。

まぁ、助かったけど。


「早く行こう。出口見たら今お化け屋敷にいるの思い出しちゃった。周りを見れば気味悪いし」

「そうだな。だけどいい経験させてもらったよ」

「何かあったっけ?」

「クロの驚く顔が見れたからな」

「趣味悪いよ、リョウ」

「笑顔しか見てこなかったからな。でも分かったよ。やっぱりクロは笑顔が似合うな」

「うん!お母さんにも言われたことあるよ」

「クロの母さんにか?どんな人なんだ?」


するとクロの顔が一瞬曇る。

言っちゃいけないことを口を滑らせて言ってしまったらしい。


「いや、普通のお母さんだよ」

「そうか」


それ以上は聞かない。

隠し事があるのはお互い様だ。

そこに入られるのがどれほど嫌なのかはよく知っている。


「さ、体育館に戻るぞ。準備はいいか?」

「いつでもいいよ」


転移装置に乗り体育館に戻った。



戻った体育館にはフィリアとケイト以外のペアが居た。

フィリアの転移装置の前にだけのっぺらぼうの立体映像が映し出されている。

まぁ、面白そうだしいいか。

しかし、気になるのがリリアとレックスだ。

なんかぐったりしてる。

あれでは記事どころではないだろう。


理由を聞こうとリリアの所に行こうとしたとき、悲鳴が聞こえた。


「きゃぁあああぁぁ!」


帰ってきたフィリアの悲鳴だ。

全員がビクッとする。

しかし、そのおいしいであろう場面ですらリリアは元気が無かった。



そのあとすぐ解散になり理由が聞けなかったのだが後日、リリアの部屋に聞きに行ったところ同じ部屋の人に「その日から一枚の写真を持ったまま元気がないんですよ」と言われ話すことすらできなかったそうだ。

ただリリアが「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」と呟いているのを聞いたリョウだった。

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