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異世界での合宿

遂にインターネットが帰ってきました!

インターネットがない環境は現代っ子から見ると辛いです。

突然だがこの世界に四季はない。

確かに気温の変動はあり、春夏秋冬と言う言葉は存在する。

だが気温の変動は大きくても10℃が限界である。

それだけ変われば暑くもなるし寒くもなるのでは?と思うかもしれないがミューズデルは科学が発展した都市である。

そのため、都市内では肌寒くなることもないし暑くなることもない。

なので大体の人が春夏秋冬という言葉を知らないのだ。

だから都市内でしか生活したことのない人たちによって四季がないとされる。

しかしそれはミューズデル内に限る話である。

つまりミューズデルを出ると気温の変化を感じることができるということである(多少は)。








親睦会から月日がたち12月の後半に入っていた。

さっきも書いた通り気温は変化するがたいしたものではないし、そもそも科学の力によって学校で気温の変化はほとんど感じられなかった。

雪は降らない。

ホワイトクリスマスが懐かしく感じられる。

親睦会から結構経ったが特に変化はなかった。

ドールが2段階目に進化したのは未だにリョウのみだし、クロも目立った行動はとっていない。

マクアドルとも大した会話はしていないし、ミリーナとも音信不通になってしまった。

それでも平和な日常が続いたのは本当にうれしかった。

そんな日常にヒビが入り始める。


「合宿~?」

「そうよ、合宿」

「せっかく長い休みがきたと思ったらこれかよ」


自分の席でうなだれるリョウ。

リョウたちは今Bクラスにいる。

今日は長期休暇の前日である。

長期休暇というのは簡単に言えば冬休みだ。

この学校に夏休みはなく、冬休みと春休みのみだ。

それぞれ大体1ヶ月ぐらいづつある。


「いいじゃない。たった一週間よ?」

「一週間を勉強に使わなくちゃいけないならそこを休暇とは言わないでほしいな」

「勉強は、ほとんどないんじゃないかな」


クロが会話に参加してきた。


「どういうことだ?」

「合宿とはいっても勉強合宿なんて言ってないでしょ?それに行く場所はアメミリア森林だよ」

「アメミ…なんだ?」

「アメミリア森林よ。ここからちょっと遠いけど自然があふれてるわ」


自然があふれている…。

久しぶりに聞いたような気がする。

ここに来てから自然と言えるものを見たのは最初の雑木林と草原だけだった。

ミューズデルに来てからは観葉植物くらいは見てきたが本当に草木が生い茂るという光景は見たことがなかった。


「自然か…。いいな」

「でしょ?僕も自然なんて久しぶりで」

「でもあそこ猛獣もそうだけど胡散臭い奴いるじゃない」

「猛獣?胡散臭い奴?」

「猛獣はバルドスのことだね」

「バルドス?」


どっかで聞いた覚えがある…。

頭を少し悩ませるが出てこなかった。


「簡単に言えば猪にすごい牙をつけた感じの動物だよ」

「どっかで聞いたことあるような気がする…。で、胡散臭い奴ってのは?」

「そこ、寺があるのよ」

「寺?」

「そ。で、そこで働いている女の人がいるのよ。職業はなんていったかしら」

「巫女か?」

「そう、それ。よく知ってるわね。何でも神様を信じてるやつらしいじゃない?このご時世にちょっとねぇ…」

「でも、お前たとえばお守りとか持ってるじゃん」

「それはそれ、これはこれよ。関係ないわ」

「でもすごいんでしょ、実力は。なんでも神様を呼び出せるとか」

「クロ、あんなのは神様じゃないわ。あれは怪物よ」

「見たことあるの?」

「一度だけね。今回行くところとは違う寺の巫女だったけど現れた神様とやらはまさに化け物だったわ」

「どんな感じだったの?」


するとマーシャは紙を取り出し絵をかき始めた。

「あんな恐ろしいの一回見たら忘れられないわよ」とサラサラと手を止めずに書き続ける。

マーシャの画力はなかなかのものである。

2、3分後、完成したのか紙を見せる。

そこにかかれていたのは体が亀で尻尾が蛇の生物だった。


「こんな感じよ」

「うそ~。マーシャ、これはないんじゃない?」

「でも鮮明に覚えてるのよ。名前も言ってたわね。なんて言ったかしら」


マーシャの画力にスゲーなんて思いながらリョウは絵に見入っていた。

気づくと2人の目線がリョウにいっている。

巫女を知っているのだからこの「何か」についても知ってると思ったのだろう。


「…玄武」

「そう!言ってたわ!あんたすごいわね」

「これは神様なの?」

「いや、俺も知ってるのは名前だけでね」


さすがに知っていることをすべて話すとクロからも怪しまれかねないのでそこは控えた。


「そっか。まぁ、そんなもんだよね。で、今回行くところにいる巫女さんはなんていう神様を持ってるの?」

「これを神様って言うのかはちょっと微妙よね…。名前は知らないけど龍と似ていると聞いたわ」

「何に一番近いの?」

「それがこの世界にいる龍とはどれも似つかないそうよ」


へぇ、青龍みたいな感じのドラゴンはいないのか。

…ん?


「えっ?龍が存在する?」

「何言ってるのリョウ。動物園とか行ったことない?土砂龍とか水龍とか。学校に飼っている生物の持ち込みは1,2年生は禁止だから誰も持ってないけど、実家にいるって言う人もいるよ」

「そういえば、あんたはたぶん見たことないわよね。今回行く森林にはいたかしら?」

「うぅ~ん…、いないこともないけど見つけられたら運がいいよね」

「へぇ、見てみたいな。ところでさっき言ってた1,2年生は持ち込み禁止っていうことは3年生以降はいいのか?」

「うん。魔法側では使い魔を使役し始める時期だしね」

「私たちにはそんな力はないから、代わりみたいなもんよ。ほしい人はね」


…使い魔的なやつか…。

なんかいい流れだな。

わくわくしてきたぞ。

今回の合宿でそんな感じの奴を捕まえられれば…!


「あっ、でも絶対に自分で飼うとか言って捕まえたりしないでよ?」

「…なんでだよ」

「飼えないからよ。お祭りで金魚すくいあるでしょ。でもあれをやる人は金魚を飼える人のみ。飼えないのに生き物を引き取っちゃだめよ」


リョウはがっくりした。

折角テンション上がってきたのにこれだ。

前にもあったような気がする。


「まぁ、3年生なったらそれ専用の行事があるからそれまで待ちなよ」

「…そんなのあるのか?」

「一回だけね。科学側の生徒が自分の使い魔を探しに行く行事があるんだよ。その後なら、使い魔として使役できるからお金もかからないんじゃないかな?」

「使い魔っておかしくね?」

「僕に言われても…。そう言われてるのは事実だし」

「ともかく、使い魔がほしいならあと2年待ちなさいってことよ」


2年…。

道のりは険しく長いのか…。


「で、話戻るんだけど。巫女が操る龍。リョウは知らない?」

「青龍だろ」

「名前は聞いてないから私は知らないけど、何でも頭が龍なのに胴体が蛇だそうよ」

「えっ、そんなんで頭支えられるの?」

「分からないけど。しかも空を飛ぶんですって!」

「飛ぶって…。羽でも生えてるの!?」

「可能性はあるわね。いや、でも神様なら飛ぶことくらい何もなくてもできるのかしら」


リョウはこの会話を笑いをこらえながら聞いていた。

確かにリョウのイメージの中でも青龍の頭は龍で体は蛇のようになっている。

でもあくまでそれは形のみだ。

そのまま想像すればひどいものになってしまう。

さらに羽なんて加えるとは…。

それを真剣に話しているもんだからタチが悪い。


「ちょっとリョウ、何してるのよ。これ見て」

「?」


そこにはかなりリアルに描かれた頭が龍で体が蛇な青龍が書かれていた。

更に天使の羽のようなものまで描かれている。

こらえきれず大爆笑してしまった。


「ちょ、そんなにおかしい!?」

「こんなに議論したのにまさか笑われるとは…」

「リョウ、笑ってるっていうことは本当の青龍の姿知ってるんでしょ?教えなさい!」

「分かった!分かったから少し待って!は、腹が…」

「そんなにおかしかったかしら?」


平和だなぁ、とリョウは思っていた。

こんな風に毎日が過ぎればいいのに。

そしてミリーナの言っていた戦争は実は誤りだったということになればいいのにと思った。

しかし、ミリーナの言っていた戦争は少しずつ、動き始めていた。









合宿当日

リョウは指定されたところに向かっていた。

この合宿では1~5年生までが参加している。

初めて1年生が上級生と対面するときである(部活で会っている人も数多くいる)。

班分けはフレア先生が

「今回はランダムなの。1班一年生は10人。私たちで決めるから楽しみにしててね」

と言っていた。

これも交流のためとかいうのだろう。

この学校はやたらいろいろな人との交流をさせようとしている。

慣れたといえばそうだが、せっかくできた友達と一緒にいたいという気もしていた。

しかし、リョウにはそれ以上に疑問に思っていることがあった。

それは、アメミリア森林の広さだ。

1学年大体5000人いる。

単純計算で25000人が森林に泊まることになる。

そんなスペースあるのか?と思ったが全然答えは分からなかった。

そんなことを考えていると人ごみが見えてきた。

指定場所についたようだ。


「(知り合いいないかな…)」


そんなことを思いながら探していると


「リョウ、同じ班みたいね」


後ろから声をかけられた。

首からかけた紐の先にはカメラが。

この世界ではあまりお目にかかれないリョウの知っているカメラの形をしたもの。

コンパクトになったここのカメラはメガネに同時搭載されているなんてザラでどんなに安いものでもフヨフヨ浮かんだ球体がきれいに撮ってくれるなどリョウには考えられないものばかりだった。


「リリア、お前もここが集合地点なのか?」

「そうよ」

「他に誰かいるか?」

「知り合いは私たちぐらいよ」


知り合いが1人とは少し寂しいがいないよりはましである。


「今日からよろしくね、リョウ♪」

「楽しそうな顔しながらカメラをかまえないでくれ。嫌な予感しかしない」

「見た感じこの班には私しか新聞部はいないのよ。それなら私が頑張るしか―――」

「リリア?」


突然知らない声がした。

その声を聞いた瞬間、リリアの背筋がピンと伸びる。

リリアが固まり顔から汗が噴き出し始める。

後ろには青い髪をしたショートカットの女性が立っていた。

美しいとも見えるし、カッコよくも見える。


「ぶ、…部長」

「なんだ。お前もこの班か」

「は、はい。そうです」


いつも活発なリリアが固まっているのを見るのは珍しかった。

それだけ権力があるのだろう。


「そこの男は誰だ?お前の彼氏か?」

「彼氏だなんて滅相もございません!この人はリョウ・アマミヤ。例の一年生で2段階目のドールに達した奴です」

「…」


黙りながらリョウの方をむいた。

さっきリリアも部長と言っていたし、おそらく先輩だと思ったリョウは礼儀正しくすることにした。


「リョウ・アマミヤです」


と言いながら一礼をする。

すると部長は


「別に訊いていない。それに今リリアからも聞いた」


…。

さすがにこの答え方は予想外だった。

てっきりあっちも自己紹介してくるのかと思っていた。

こんな返事されたことないもんだから返答ができない。

億劫そうな顔をしながら「まぁいい」と話を進める。


「俺はクレア・ランパードだ。3年で新聞部の部長をやっている」

「よ、よろしくお願いします」


リョウが返事を返す頃にはクレアの顔はリリアの方をむいていた。

そこまで俺に興味なしかよと、今までの人たちとは違う反応に困惑する。


「リリア」

「は、はい!」

「期待しているぞ」


不敵な笑みを浮かべながら言った。

リリアは「はい!」と返事していたが手が震えているのが分かった。

その返事を聞くとクレアはどこかへ行ってしまった。

リリアが未だに震えている。

何か危ない人であるというのは想像がつく。


「だ、大丈夫か?」

「え、ええ…」

「全然大丈夫には見えないな。あの人、そんなに怖いのか?」

「怖いというより、危ないのよ…」

「それは何となく」

「これ以上言うといろいろまずいから言わないでおくわ」

「聞きたくなるじゃないか」

「あなたが聞けば変態扱いされるわよ?」

「いったい何が!?」


変な疑問が浮かび上がる中、合宿は始まった。

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