信用ならない仲間
タイトルを酷く表現しすぎた。
タイトルって本当難しいですよね。
意味わからない英語でも並べるべきかな…。
「リョウ、はいこれ」
「これは何だ?クロ」
夜9時、リョウは部屋に居る。
親睦会のおかげで休みがもらえたのだがダンスの予定もないので正直暇である。
そんなリョウにクロが1枚の紙を渡した。
紙には「男子会への招待状」と書いてあった。
「子供か!?」とツッコむところだがクロだから許す。
「明日ね、みんなで男子会でもやろうかなぁって思ってね」
「へ、へぇ…」
正直リョウは嫌だった。
地球にも女子会はあったが男子会なんて聞いたことがない。
いや、もしかしたらあるかもしれないがあまりメジャーではないのだろう。
少なくともリョウは聞いたことがなかった。
「(男子会かぁ。そんなむさくるしそうなものが存在するなんてね…。できれば参加したくないけどクロの誘いだしなぁ)」
クロのほうを見ると、いい返事が帰ってくるのを確信しているがのごとく嬉しそうな顔をしている。
この顔を見ると断ることはできない。
「わかった。明日も暇だし参加するよ」
「ありがとう!あと、レックス、ケイト、シューレスも呼びたいんだけど」
「いいんじゃないかな」
「だよね!電通しておくよ」
喜びながら電通をうち始める。
男子会の前に合コンを味わってみたかったなとリョウは少し落胆していた。
しかし、テンションがかなりハイになっているクロは気づくことはなかった。
そして次の日の12時過ぎ…
「みんなダンス練習大変だね」
結局今いるのは3人。
リョウ、クロ、ケイトだ。
シューレスは結局来ないし、レックスは午前中のみ参加。
食堂にいる今はもういない。
「お前はいいのか?」
「これでも小さい頃ダンス習ってたんだよ」
「へぇ~、うらやましいですね。僕は正直初心者も同然で」
まぁ、この3人でも盛り上がってはいるが。
ケイトとクロはどことなく気もあってるみたいだし。
「僕カレーライスで」
「から揚げ定食を」
「激辛麻婆豆腐をください」
3人は学食で飯の注文をしている。
「ケイト君、それ食べられるの?」
「もともと麻婆豆腐大好きなんですよ。ここの辛さは癖になるものがあってね」
ケイトの手に赤く染まった麻婆豆腐が置かれる。
この麻婆豆腐はこの学食では有名なものの一つで主に罰ゲームに使われる。
それほどまでに辛いのだ。
「俺から見たら罰ゲームだな」
「僕から見ればご褒美なんですよ」
座る席を決め、飯を食べ始める。
クロとリョウははじめケイトがどういう風に麻婆豆腐を食べるのか気になって見ていたが、本当においしそうに食べるのを見ると「マジか」と思ったが何の行動も起こさず普通に食べ始めた。
余談だが本当においしそうに食べるもんだから食べたことない人が、「食べてみたいなぁ」と思い食べてひどい目に遭ったという被害者が沢山いることを彼は知らない。
「ねぇ、ケイトってネーム持ちなんだよね?」
「はい。Nですね」
「得意魔法は何なの?」
「回復魔法です。戦闘じゃ役に立ちませんけど」
「そんなことないぞ。その魔法のおかげで俺は助かったようなもんなんだからな」
「俺は君を回復させた覚えはありませんけど」
「レックスやあの姉妹を回復してくれたおかげで敵が減った。本当に助かったよ」
するとクロが目を輝かせながら
「それってあの魔科祭での事件のこと?」
「そうです」
「2人の活躍聞かせてよ!」
「僕は戦ってませんよ、リョウさんに訊くのが一番です。二段階目にもなってましたしそれを聞くのは?」
「それも風の噂で聞いたよ、本当なの!?それってつまり10年に一度の逸材っていうことじゃん!」
「そんなすごいものじゃないさ。逸材って言ったって別に…」
話していると遠くにマクアドル先生を見つけた。
こっちが気づいたのが分かると手を振ってきた。
気づくまでずっとあそこで待っているつもりだったのだろうか。
マクアドルから出てきたとなると何か用事でもあるに違いない。
「ゴメン2人とも、急用思い出したんだ」
「えー、続きは?」
「また今度だ。それに聞きたきゃ部屋でいつでも聞けるだろ?どうしても聞きたかったらケイトの知ってる範囲で聞けば?」
「僕の知ってる範囲なんてたかが知れてますよ?」
「う~…。まぁ急用じゃ仕方ないか。後で埋め合わせしてよ?」
「もちろんだ。じゃ、また」
そう言うとその席を立ち食器を片づけるとマクアドルの方へ向かった。
「悪いねぇ、せっかく友達と楽しくしていた時間に」
「いえ。で、用は何ですか?」
「本題の前に訊きたいことがあるんじゃないのかい?」
「どうしてそう思うんです?」
「絶対に君が意味の知らないであろう単語がでていたからね」
「…」
「別に必要ないならいいんだけどね?本題入っていいかな?」
こいつ、思ったより察しがいいんだな。
「…ネームってなんですか?」
「やっぱり質問あったんじゃないか」
うまくいったと言わんばかりの顔をつくる。
こいつにドヤ顔されたらどれだけイラっとするのだろう?
「ネームっていうのは言いかえれば才能だ」
「才能…ですか」
「この世にはねそこに生まれれば間違いなく魔法の才能が備わる家系があるんだよ。さらにその家系は何かの魔法に特化しているっていう特典付きでね」
「そんなことあるんですか?」
「君だって見てきただろう?レックス君たちが戦ったクリティウス姉妹を覚えてるかい?あの子たちは確かUだったかな。炎の魔法が得意だったんだろうねぇ、すごいものを見せてもらったよ」
「努力であそこまでいくのは?」
「不可能だ。仮に生まれてすぐに特訓を始めたとしてもあそこまでいくことは出来ない」
「絶対なんですか?」
「絶対だ。何度も実験されたが結果はすべて失敗だった。人間の寿命を人間のままで永遠にするのと同じくらい無理なことと言う結論に至ったそうだよ」
残念だよね、と言いながらさっき食堂で買ったらしきパンを取り出し食べ始める。
飲み物はお酒らしく匂いが漂う。
「それはいったい何人存在するんですか?」
「不明だよ。例えばUだったら親のどちらかがそうであるのは間違いない。でも、その後生まれてくる子供に受け継がれるかは分からないんだ、魔力は絶対だけどね。クリティウス家は運よく2人ともに受け継がれたみたいだけどね」
「なるほど…。じゃあ絶えてしまった家系も?」
「私が知ってる限りではB,E,Vの3つがこの国からはいなくなってるね」
「この国から?」
「もしかしたら帝国にはいるかもしれないということだよ」
最近、ビムと戦った後からリョウは戦争のことを少し真剣に考え始めていた。
別に地球に帰るのをあきらめたわけではない。
ただ、今のリョウにはこの世界も大切な世界の1つなのだ。
正義感の強い(地球では学校の授業はさぼったりしてたが)人柄なのでなおさらだ。
「さて、ネームのことについて知れたことだし本題についてはなそうか」
「それは?」
「ある人の監視をしてほしいんだよ、君にね」
「監視…、ですか」
もちろん驚いた。
リョウの経歴にスパイ活動なんてなければ殺し屋だったことさえありはしない。
普通の学生を過ごしてきたのだ。
そんな彼に監視を頼むなんて人違いもいいところだ。
「あの、そういうのはちょっと…」
「いや、別に君が知らない人を見はれって意味じゃないんだ。生活している範囲で変わったことがあったら教えてほしいっていう話だ」
「ホントにそれだけでいいんですか?」
「うん。それだけでいいよ」
「それだったらかまいませんけど…、なんで俺なんです?」
もっともな質問だった。
監視をするなら、小さな出来事に気づくならプロがやったほうがいいのは明白だ。
「監視してほしい対象がね」
「相手は誰なんですか?」
マクアドルは食べていたパンを置き、言いにくいのかリョウから目をそらした。
たっぷり5秒、間が空いた後マクアドルは言った。
「クロツェフ・アリアジートだ」
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リョウは今部屋に居る。
1人でだ。
夜の7時を過ぎたにもかかわらずクロは帰ってこない。
ケイトと話が盛り上がっているのか、ダンスの練習があるのか分からないがリョウにとって帰ってきていないのは好都合だった。
今、クロを見るとひどい目でしか見れないような気がするからだ。
名前を言われた後リョウはなんでかを問いただした。
あんないい奴をなぜ監視しなきゃいけないのかと。
するとマクアドルはさっきとは打って変わってなんのためらいもなく「彼が魔科祭の時、ビムたちを手引きした可能性がでてきたからだよ」と言った。
その後にも理由を言っていたが、正直覚えていない。
反論はしなかった。
普通なら反論するリョウだったが、どこかでそう言われて納得している自分がいたからだ。
クロには、表には出さないようにしている感情が少し溢れて見えるということがあるのだ。
いつも笑顔しか見せない彼がそういう顔をすると、余計暗く見えるのだ。
もちろんそれだけでは疑う理由になるには不十分だというのは分かっている。
でも、疑っていた。
理由はまだリョウがクロを信用しきれていないからだろう。
クロは笑顔を絶やさない人だ。
つまり、笑顔以外見せることはないということだ。
考えてみればリョウはクロの寝顔以外で無表情でさえほとんど見たことがない。
常に作り笑顔をしているのかと思えてきた。
「(疑いたくはないけどそれじゃあ、自分がすっきりしない)」
リョウは決めた。
「(監視しよう。別にマクアドル先生に従ってるわけじゃない。監視して無実が分かれば俺がすっきりする。それだけだ)」
それを決めると早めに寝ようとベットに入った。
寝る前に、ドールが進化する前に見た世界について訊くのを忘れていたのを思い出しクロのことは考えずドールのことを考えながら寝た。




