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平和な日常

茶番…じゃないけどアクションなしがしばらく続きます。

コメディ系も好きなのですがあまり得意ではないのでご容赦を。


「はーい、みんな。久しぶりなのは分かるけど席に座ってね~」


今リョウたちはBクラスに集合している。

魔科祭以来の集合である。

今は、クラスの担任であるフレア・ランパードの話を聞くため席に座ろうとしている。


「今日集まってもらったのは、配布資料があるからなの」


資料が配られていく。

こういうのは何故か紙を使うらしい。

紙にはポップな感じで〈魔法と科学の親睦会♪〉と書かれていた。


「(…学校の行事なのに親睦会?)」


少なくともリョウはそう思った。

クラス全員に資料が配られたことを確認するとフレアは話し始める。


「知って人もいるかもしれないけど、2週間後くらいに親睦会があります。同じ学年の人しか来ないからそこは安心してね。詳細は資料を読んでほしいんだけど今回の目玉行事は「ダンス」よ」


先生の口が楽しいものを見つけた時のように吊り上がり、目がいたずらっ子の目に変わる。

リョウはこの時、なんで踊りじゃなくてダンス?と思っていたがもうツッコむのも馬鹿らしくなってきたので、できる限り考えないようにした。

「めんどくせ~」「楽しそ~」「いい服あるかな」などの声が聞こえてきた。


「しかも!この行事には賞品があります!」


生徒の声が「おぉ~~!」で重なる。


「ただ、資料にも書いてあるんだけど賞品がほしければ正式に参加しないといけないの。参加方法は2人組をつくること。参加用紙は資料の下についているから組んだ人と一緒に腕輪に読み込ませてね」

「賞品はなんなんですか~?」

「それは教えられないの。でも去年は5万銀(銀=円)と、校内の売店で一年間商品がすべて20%割引になる切符だったわよ」

「お、おぉ~~?」


5万はすごいが後ろがいいのか悪いのかわからず、微妙な反応になってしまった。

学校行事で賞金が出るのをリョウは初めて聞いた。


「ともかく!正式な参加者が多ければ多いほど盛り上がるからぜひ参加してね。じゃ、今日はこれで解散」





「参加する?」

「俺はしねぇな、たぶん」

「私は出たいですね…。今月やばいんですよ」

「そりゃ、あんな買い物すればそうなるわよ」


リョウは今、Bクラスでマーシャとフィリアとで「親睦会」について話している。


「フィリア、同盟を裏切る気か!?」

「それとこれとは話は別です!マーシャさん、組んでくれませんか?」

「フィリア、ペアは男女じゃなきゃいけないのよ?」

「そうなんですか、じゃあリョウさん」

「それも駄目ね」

「できれば俺は出たくはないが、なんでだ?」

「ここ、読みなさい」


マーシャが指をさした場所には

参加条件  その①男女の組であること(1人対1人である)

      その②学年が同じであること

      その③今回の親睦会は普段顔を会わせることがない魔法と科学の生徒の仲を進展させるためのものであるので、魔法側の生徒は科学側と、科学側の生徒は魔法側と組むこと


「「…」」

「わかった?」

「…これはないです」

「これじゃ、参加する人が極端に減っちゃうんじゃないか?」

「そうね、だから一年生の頃は幼馴染とかが組んで出るくらいしかないから数は少ないらしいわよ。まぁ、どうしても出たいなら今日から食堂に毎日通えば?」

「なんでだ?」

「今日から食堂が科学と魔法の、共同になるのよ。2週間の間だけね」

「そんなことできるのか?」

「食堂につづく転移装置の行き先を変えればいいだけじゃない」

「…科学ってすげぇ」

「マーシャさんは出るんですか?」

「私は誘われたらどうか分からないけど自分からは出ないわ」

「フィリアはどうするんだ?」

「私も今回はちょっと遠慮します。知らない人とダンスはちょっと」

「だよな。じゃあ今回の親睦会は食事を楽しむのが一番になりそうだな」

「まあ、いいじゃないですか。タダ飯ですよ」

「なんか悲しい親睦会ね…」

「もはや親睦会でもないような気がするけどな」


そんなことを言いながら時計を見ると6時だった。

ここから食堂に向かえば少し早いがちょうどいい時間だ。


「じゃ、俺クロとや―――」

「リョウ君、フィリアちゃん、レックス君、リン君、ベル君。いる~?」


突然、フレア先生が息を切らせながらクラスに入ってきた。

クラスには呼ばれた5人のうち2人しかいなかった。

っていうか、フィリアはクラスが違う。


「私とリョウさんしかいません」

「私の失態ね。あとで電通送らないと」

「で、なんですか?」

「はい、これ」

「「?」」


プリントが一枚ずつ2人に渡される。

そこには<魅せろ!選ばれし者>と書いてあった。







今リョウはマーシャとフィリアに加えクロと一緒に食堂に向かっている。

しかし、リョウとフィリアの雰囲気はどう見ても重いように見えた。


「なにかあったの?」

「どうも2人ともダンスを強制的に踊らなくちゃいけなくなったらしいのよ」


すると覇気のない声でフィリアが


「2人ともじゃないです。でも5人の中から1人はでなきゃならないそうです」

「あの3人に任せられるとおもうか?」

「間違いなく嫌がりますね。そうなった場合、じゃんけんですかね」

「勝てる気がしねえよ」

「というわけらしいわ」

「じゃんけんできるなら別にいいんじゃないの?」

「この2人、じゃんけん弱いのよ」

「じゃんけんに弱いも強いもないような…」

「この2人は特別なの。2人とも最大24連敗よ」

「ある意味強運だね」


クロが感心する。

まぁ、確かに確率で言えば恐ろしいことになるからそれもそうだろう。


「あんたはダンスでるの?」

「出るよ」

「「「でるの!?」」」

「幼馴染がいるんだ。でも今回は一年生でも出る人、多いみたいだよ」

「そうなのか?」

「それなら少しは緊張が緩みますね」


少し2人がホッとしたところで食堂についた。

見た目は変わってないが、確かに制服が少し違う生徒が見えた。


「…なんか緊張しますね」

「そんなんじゃ、代表に選ばれたときあんた倒れるわよ?」


注文する場所やメニューは特に変わってなかったのでいつも通り注文を済ませる。


「あの、リョウさん」

「なに?」

「以前私を介抱したって言ってた人、いますか?」

「え~っとね…」


あたりを見渡してみる。

白い髪なんて普通なら目立って仕方ないが、ここでは髪が思ったよりカラフルなので目立つようなことはないようだ。

しかし、パーマがかかっている人は地球よりも少ないので結構強かったはずだからすぐ見つかるかなと思いながら探す。

すると、友達らしき人と食べているのを見つけた。

あっちも気づいたらしく軽く会釈してきた。

リョウは3人を連れてそっちへ向かう。


「お久しぶりです、リョウさん」

「久しぶり。この前は助かった」

「戦闘要員になれなかったんですよ?俺は何もしてませんよ」

「そんなことない、本当に助かったんだ。フィリアがお礼を言いたいらしいんだけど」


と言いながらフィリアのほうを見ると口を開けて静止している。


「フィリア?」


呼ばれると我を思い出したように「はっ!?」と言う。


「リョウさん、本当にこの人ですか?」

「そうだけど?」

「…」


買ってきた日替わり定食をテーブルに置くと


「そ、その節はお世話になりましたぁ!」


と、人見知りのフィリアらしくないハッキリとした口調でお礼を言う。

頭もしっかり下げられており、謝りに来た会社員のようだ。


「お久しぶりです、フィリアさん」

「知り合いなのか?」

「休日に少し会ったことがあるんですよ」

「その時もお世話になりました!」

「フィリア、どうしたのよ?」


マーシャが尋ねるとマーシャに以前のことを説明する。


「へー、そんなことがねぇ」

「本当にありがとうございました!」

「やめてくださいよ、僕だって楽しめましたから」

「おかげで俺はあいつらの餌食になったけどな」


友達らしき人が入ってくる。


「あんたがリョウ・アマミヤかい?俺はシューレス・D・ジルリアだ」

「よろしく」


握手をしようと右手をだすと、少しジルリアは驚いた顔をしてから応えた。


「ネーム持ちである俺に握手を求めるなんて、お前肝座ってるな」


ネームってなんだと訊きたかったが、常識だとなんか嫌だったのでそこはスルーする。


「ケイトが世話になったみたいだな」

「初の人もいるので改めて自己紹介します。ケイト・N・フェニーチェって言います。よろしく」

「クロツェフ・アリアジートって言います。クロって呼んでください」

「マーシャ・クリーシャよ」

「2人ともよろしくお願いします。さっ、自己紹介も済みましたしみんなで食べましょ。席空いてますからどうぞ」


リョウたちは席に座る。

思ってたよりフレンドリーだった。


「あの~」


座るとすぐにマーシャが遠慮がちに尋ねる。


「2人は今回の親睦会でダンスってする?」

「僕は不参加ですよ」

「俺は参加するぜ」


それを聞いてリョウがフィリアに小声で話しかける。


「フィリア、ケイトと組んで出たらどうだ?」

「何言ってるんですか、あれだけお世話になったのに頼まれでもしない限り嫌ですよ!」


本音は目立ちたくないからである。


「でも、今年は参加者が多いですよね。7割くらいだったかな」

「「えっ?」」

「そんなにいるんですか?多いっては聞いてたけど」

「なんでも賞品がすごいって噂があるからだそうですよ。俺じゃ、いくらそれでも知らない人とは組みたくないですけどね」

「お前はもっと積極的になれよ。彼女そのままじゃ出来ないぜ?」

「大きなお世話だよ」


…まさか傍観者の方が少なくなるとは。

が、少し驚きながらも大してリョウは気にしてなかった。

ケイトの言う通り知らない人と組む方が彼にとってはありえなかったのだ。

ところがフィリアの方をむくとなんか悩んでいる顔をしている。


「フィリア?」


話しかけると突然吹っ切れたかのように顔を上げる。


「…リョウさん」

「なに?」

「ごめんなさい」


そう言うとリョウの返答を待たずフィリアは


「あの、ケイトさん!」

「ん?何ですか?」

「私と組んでくれませんか?」


ケイトは驚いたが、二回ほど瞬きをすると


「僕なんかでよければいいですよ」


快く快諾する。

するとフィリアは小さく、注意してみなければ分からないほどちいさくガッツポーズをとった。


いきなりのことでついていけないリョウににやけながらマーシャが


「まさかあの子の方が先に組む人見つけるなんてね」

「えっ?え?」


マーシャが笑っている。


「リョウ、同盟はたった今消えてなくなったわよ」


リョウの時間が止まる。

…。

…。


「う」

「どうしたのリョウ?震えてるよ?」


クロに話しかけられてからたっぷり10秒後


「裏切り者ぉぉぉ!」


叫びが食堂の一部に響き渡った。

フィリアの顔はなぜか達成感に満ち溢れていた。

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