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フィリアの休日その1

今回は息抜き回ですね。

土曜日、朝8時起床。

いや、今日もいい天気…じゃないですね。

生憎のくもりです。

今日はマーシャさんと、リリアさんと、私とで買い物に行くんです。

基本的に生徒は校内にある便利屋コンビニで買い物済ませなくちゃならないんですけど、そこには本やお菓子とかはあってもそれ以外の娯楽商品は売ってないんです。

だから外に今日は買い物に行くんです。

外出許可をもらうための手続きも踏みましたしばっちりなんです。

でも一つ問題がありまして…、私内気な性格だった(少し解消されました)もんですから友達と外に行くなんてことは、まずなくて。

私服をほとんど持っていないんです。

普通に下着に、ズボンに、上の服しかなくて。

重ね着する服とか小物アクセサリとか持ってないんですよ。

「せっかく外に行くんだから私服ね!」って言われて何も考えず了解したのが失敗でした。

しかも一緒に新聞部のリリアさんが来るじゃないですか。

ダサい服を記事に載せられて校内の笑いものなんてゴメンです。


「何、そんな焦った顔してるの?」


今話しかけてきたのは今、部屋が同じのピス・ロジックさんです。

私とマーシャさんで何かあったわけじゃないですよ?

ピスさんとそのルームメイトの間でもめ事があったらしいです。

にしてもこのしゃべり方、いつ聞いても特徴的ですよね…。


「実は、今日買い物に行くんですけど…」

「オシャレができなくて、困ってると」

「はい。オシャレが…、なんでわかったんですか!?」


ちょ、ちょっとした変わり者だと思ったら心理学の知識持ってるんですか!?


「あなた、分かりやすいもの。すぐ、分かるわよ」

「…助けてもらえませんか?」

「小物なら、いくつかあるけど」

「服は?」

「あなたと、私じゃ、身長が全然違うのよ」

「…そうですね」

「それに、小物も正直、フィリアに合うかは、分からない」


そう言いながらピスは小物を取り出した。(小物=アクセサリ)

で、出てきたのが


「ドクロに、刀、爆弾…。私には合いそうにありませんね」

「なら、覚悟を決める、しかないわね?」

「うぅ~…」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「フィリア、遅いわね」

「まだ5分経ってないわよ?」

「あの子はいつも5分前行動をとる人のはずなんだけど」

「そういうこともある…、あれフィリアじゃない?」


結局、悩んだにも関わらず持ち合わせの服にしてしまいました。


「すいません。遅れてしまいました」

「いいわよ、これくらい。早く外に出ましょ」

「久しぶりの校外だもんね。楽しみだわ」


…2人ともなんかおしゃれに見えます。

なんでそんな服、二人とも持ってるんですか。

恥ずかしい思いはしたくないです。





「久しぶりに来たわね、ここ」

「私とマーシャで、入学する前まではよく来てたわね」

「ここは何が売ってるんですか?」


今三人は大きなショッピングモールの前に来ている。


「この中にたくさんお店があるのよ」

「見せたほうが早いわよ。フィリア、ついてきなさい」

「は、はい」


連れられて中に入るといっぱいお店がありました。

私はこんなところ来たことないので感激です。

って、見とれていると二人からはぐれてしまいそうです。

この歳で迷子の放送に名前を呼ばれるのはごめんなのでちゃんと後を追わないと。

ついていくとなんかきらびやかな所に着きました。

ここは何でしょう?


「ここは?」

「服を売ってるところよ」

「ここはね、最初に来るって決めてたの」

「どうしてですか?」

「あなたをおしゃれにするためよ」


…へ?


「あなたがおしゃれをほとんど知らないのは知ってたの」

「だから、私たちが可愛く見繕ってあげようと思ってね」

「本当ですか?」

「任せなさい。どんな男子でも一目惚れするような可愛いフィリアに変えてあげるわ」


…嬉しいです。

やはり友達はいい存在です。


「さっ、選ぶわよ。早く来なさい」

「よろしくお願いします!」




「フィリア、次これ着てみて!」

「私をゴスロリにする気ですか?」

「これは?」

「なんで白い服の真ん中に台所って書いてあるんですか!?」


もう、遊ばないでください…。

さっきまで「フィリア、顔の評価はおそらく高いから…」とか言いながら真剣に考えてくれてたのにいったい何ですか?


「フィリアこれは?」

「もうキグルミじゃないですか!」

「あまいわねフィリア。この道を乗り越えてこそ初めてオシャレに近づくのよ。言ってしまえば通過儀礼みたいなもんよ」

「絶対使い方間違ってますよ、それ!?」

「じゃあいっそのことステップアップして水着着る?」

「…もういいです、自分で探します!」


そう言うとフィリアはその店を後にした。


「あっ、フィリア!」

「やりすぎたかなぁ。まあ自分で見て回るのもありかもね」

「でもあの子、ここ来るの初めてじゃなかったっけ?」

「「…」」





二人ともひどいです。

私が確かにオシャレに疎いことは自覚していますがあれが間違いだってことぐらい分かります。

こうなったら私が自分で見繕うしかないですね。

さあ、違う服屋を…ってここどこですか?


「…」


…やばい。右も左もわかりません。

でも、ここで止まってると係員さんに連れてかれないし…とりあえず動きましょう。





「フィリアいた?」

「いないわ。さっきまでならともかく、これだけ時間たてば探す範囲も相当なものよ」

「弱ったわね。そろそろお昼時なのに」

「腕輪の番号聞いてないの?」


生徒が支給された腕輪は万能でゲーム機能こそついてないが、メールやインターネット検索もできるし周りを気にしなければ電話もできるのだ。


電通メールの番号は聞いたんだけど、電話のほうは…」

「電話じゃないと気づかないことありそうだしなぁ…。まぁ、私たち16歳だし大丈夫だと思うけど…」


話していると2人のお腹が同時に鳴った。


「「…」」


ちょうど近くにカフェが見える。


「…あの喫茶店にフィリアいないかしら?」

「探してみる価値はあるわね」


2人はカフェの中に吸い込まれるように入っていった。






「お腹、すきましたね」


なんかいろんなところ歩いていたら結構奥の方に来てしまったような気がします。

お金もありますし昼ご飯、買えないことないんですが。

…できる限り人と話したくないんです。

少しは人見知りも解消されたと思っていたんですが、全然ですね。

自分から話しかけようとするとダメになります。

自動販売機とかありませんかね。


「お客様」


…話したくないと思っていたそばからこれですよ。


「…なんですか」

「私はそこの牛牛亭(ぎゅうぎゅうてい)で働いているものです。お昼はお済ですか?」

「まだですけど…」

「でしたら!手軽に食べられる肉まんなんていかがですか?」


…肉まんですか。

名前の割に軽いもの勧めてくるんですね。

お腹もすいてますしそれくらいでしたら。


「…お店はどこですか?」

「あちらになります。並んでいるお客様もいらっしゃいますので並んでお待ちください」


並んでいるお客さん…2人じゃないですか。

人が多いのもあれですけど2人ってなんか心配になりますよ。


ぶつくさ考えながらもフィリアは列に並ぶ。

メニューがいくつかあるようだが、迷わず肉まんを注文した。

店員の営業スマイルが輝いていたのが物凄いフィリアの頭に残った。

席を見つけて1人座る。


「悪くないですね」


一口、口に含んでみるがそこそこのものだ。

だが「めっちゃうまい!」というわけではない。


学食の方にも肉まんはありますけど、冷凍だから正直微妙なんですよね。

このまま、グルメ旅っていうのも…。

はっ、いけないいけない。

私はおしゃれになって2人を見返すんです!

これを食べ終わったら急いで行かないと…。

でも、服屋はいったいどこにあるんでしょう?


「あの…」


ん?今声をかけられたような。

目の前には白い髪にパーマがかかった男子。


「な、何でしょうか?」

「フィリア・リトルトリアさんですか?」

「はい、そうですけど」


な、なんで本名を?

まさか変質者!?


「リョウさんのお友達の?」

「リョウさんの知り合いですか?」

「そんなもんです」


違いましたね。

いや、まだ完璧には信じるわけにはいきませんけど。


「何か用でしょうか?」

「いや、なんか困り果てたような顔をしてたもんだから」


そんな顔してました!?私?

あまり知らない人とは話したくはないのですが、この人なら店の案内してもらえないですかね。


「実は、友達と服を買いに来たんですけど。初めてだったので道に迷ってしまったんです」

「奇遇ですね!僕も友達と来たのですがはぐれてしまいまして」


類は友を呼ぶってこういうことなんですかね。


「もしよければ、一緒にしばらく行動しません?服屋の場所も教えますよ?」


…それなら。


「わ、私からもお願いします」

「じゃあ、善は急げですよ。こっちです」






「見つからないわね」

「そうね。今はこの店の大きさが恨めしいわ」


マーシャたちは今買い物をしながらフィリアを探している。

しかしこのショッピングモールはとてつもなく広いのだ。

たった2人で何の手がかりもない1人を探すのはまず不可能と言ってもいいくらいだ。


「電通もたぶん見てないわね」

「折角カメラ持ってきたのに」

「今の会話からカメラが出てくるところはなかったわよ」


変な会話と買い物をしながら2人はフィリアを探し続ける。

因みにその時の2人の両手には結構な量の買い物袋がぶら下がっていた。






「どれがいいんですかね?」

「俺に女子の服について訊かれても…」


今フィリアたちは案内された服屋に来ている。

ずらっと並ぶ服の数にフィリアは少し圧倒されていた。


「わからないなら、店員に訊いたらどうです?」

「私、人見知りなもので…」


案内してもらったのに、オシャレなんて考えたことないからよくわからないです。

私だけのおしゃれをしたいんですけど、素人はまず流行からですかねぇ。

でもそれだとイマイチ納得がいかないんですよね。


「フィリアさん」

「何ですか?」

「フィリアさん、オシャレしたいんですよね?」

「そうですけど」

「どんなおしゃれがしたいんですか?」

「…どんなおしゃれ?」

「清楚にしたいとか、活発な感じ出したいとか、あるじゃないですか」


…考えたこともありませんでした。

確かにそう言うのは決めるべきですかね。


「私って、どっちな感じします?」

「会ってまだ1時間経ってないのに僕に訊きますか」

「雰囲気でかまわないです」

「…活発じゃないですか」

「人見知りですよ?」

「個人的な意見です。それに服だけで気分も変わるかもしれませんよ」


…活発かぁ。

じゃあそれで探しましょう!

いいのありますかね。






「今何時?」

「6時ね」

「あれから見つからなかったわね。電通も…あら?」

「返信来てた?」

「6時半に出口で待ってます。ですって」

「なら出口まで行きましょう。でも分かるのかしら、出口の場所?」






「今日はありがとうございました」


この人は変質者じゃありませんでした。

よくよく考えたら学校指定の腕輪してるし同じ学校の生徒なんですよね。


「いや、僕も楽しかったですし」

「お店の案内だけじゃなく出口まで案内してもらったんです。いつかお礼させてください。それに友達と来ていたんじゃ」

「友達って言いましたけど、軽いパシリみたいなもんなんです。一緒に来たのが女子2人と男子1人だったんですけど女子が2人ともその男子にべた惚れでね」

「それはいろいろ災難ですね…」

「慣れっこですから。ん?」


腕輪が鳴る。


「ちょっといいですか?」

「どうぞ」


離れて話し始めましたね。

しかし、この服大丈夫ですかね…。

買うのに悩んで結局水色のワンピースを買ってしまいました。

麦わら帽子も買おうとしたら「それは夏じゃないですか」とツッコまれたので遠慮しました。

活発を想像して買いましたけど彼には「活発と言うより清楚では?」と言われてしまいました。

まぁ、そこはこだわるつもりはないですからいいですけど。

シンプルすぎましたね…。

中に着るシャツとかも買いましたけど表に出ないから意味ないですし。

あっ、電話終わったようですね。


「ゴメン、もう戻らなくちゃ」

「分かりました。私はここ集合場所にしましたから大丈夫です」

「それじゃあ、また」


走って行ってしまいましたね。

あっ。

そういえば、彼に名前訊くの忘れてました。

腕輪してましたし、同じ学校の生徒だから大丈夫だとは思いますけど。

もしかして先輩という可能性も!?

なんか心配になってきました…。


「フィリア~」


あっ、マーシャさんにリリアさん。

私の服、どんな感想くれますかね?


「さっきはゴメン、言い過ぎ…って服買ったの?」

「どこに売ってたの、それ?私見てないんだけど」

「えーっと…、2階の服屋さん?」

「たくさんあるわよ」

「確か値札が…」


えーっと…、あっこれですね。


「この店、入ったことな………」

「どうしたの?」


値札を持ったマーシャの手が震えている。

リリアが値札を覗き込むようにしてみる。

そして目を見開いた。


「壱、十、百、千、万…7万…!?」

「服一着で7万…!?」

「?…7万ぐらいなんですか、カードがありますから」

「「カードォォ!?」」

マ「フィ、フィリアってお金持ちだったの?!」


リ「人は見かけによらないってことね。誕生日にカメラでも―――」


マ「それは最低な人間の所業ね」


リ「す、すみません…」

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