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惨劇の会場

ミスりました…。

まさか昨日投稿するのを忘れていたなんて。

今日、2話投稿するので簡勘弁です。

朦朧とする意識の中フィリアとレックスは周りを確認している。

何となく悲鳴が聞こえやばい状況なのは分かるが体がいうことを聞かない。

視界はぼやけてるし、体もバリアである程度ダメージを減らせたとはいえ完璧には防ぎきれず、皮膚が焦げた悪臭がする。


「(爆発…?いったい何が…)」


そこまで考えたところでフィリアの意識はきれてしまった。






「作戦大成功だな。いい状況だ」


試合会場にただ一人浮かんでいる男、ビムは笑みを浮かべていた。

今会場はパニックに陥っている。

爆発と同時に謎の集団も侵入し、虐殺を始めている。

本来ならばAコース以外の人にはドールが渡されていて、大半の人が戦えるがそこまで頭が回らず8割がたがドールも装備せず、逃げ惑っている。

魔法側もある程度使えるはずの魔法はほとんどの人が使わず、ただ逃げている。


「ただ見ているのも暇だな…。俺もやってくるか」


ビムは観客のほうに向かって歩き始めた。





――――――――――――――――――――――――――――――――





リョウは今会場に来ている。


「何なんだよ…これ」


控室のテレビで試合を観戦していたリョウだが、突然画面が悲惨なものに変わり会場に向かったのだ。

会場についたリョウの目に入ったのは血だった。

会場が血で埋め尽くされている。

殺された人の数は、まだ100の位までは来ていないのだがリョウから見れば十分な血の量だった。

大半の人は逃げたようだがいまだに走って逃げている人もいる。


「(クロは?リリアは?マーシャは?)」


会場を見渡すが見つかるはずもなく。

目の前にボロボロのレックス達を見つけた。


「レックス!フィリア!」


駆け寄るがフィリアに意識はない。


「リョウか…。ワリィな、負けちまって…」

「今はそんなのどうでもいい!何があった!?」

「全然わからねぇ。突然爆発して…」


状況が全然確認できていないようで困惑した顔をしている。


「ともかくここから逃げるぞ、立てるか?」

「なんとかな…。フィリアも運ぶぜ」

「無茶いうな、さっきの炎は相当なものだった。お前はもうボロボロだろ。俺が運ぶ」


フィリアをおんぶしようとする。

思ったより、意識がない人間をおんぶするのは難しい。

戸惑っていると、


「リョウ、後ろだ!」


後ろに敵と思われる真黒な仮面をかぶったドールを装備した奴が突っ込んできた。


「くそっ!」


急いでフィリアをおろし、相手にカウンターを加える。

地球にいた時平和主義者じゃなくてよかったと思う。

そのまま伸びて相手は動かなくなった、が


「これはやべぇんじゃねえか?」


こちらに気づいた敵が次々と向かってくるのが分かる。

これではフィリアを運べない。


「レックス、お前だけでも逃げろ!俺が退路を開く!」

「馬鹿言うな。お前がやられちまうし、フィリアも危険だ。俺も残る」

「お前はボロボロだろ。いいから逃げろ!」

「ゴメンだね!」


話しているうちに相手がすぐそこまで来てしまった。

見たところ全部一段階目のドールだが数が多く、会場全体だけでも30機ほどいる。

とても勝ち目がある試合には見えない。


一気に5機が迫ってくる。


「(まだ死ぬわけには…!)」


負けを覚悟で突っ込もうとしたとき目の前を炎が走った。


「なっ!?」


クリティウス姉妹のほうを見ると2人とも立ち上がっていた。

しかし、1人増えている。


「マジウザいんですケド!」

「あともうちょっとだったのに空気読めないワケ?」

「やりすぎだよ…。もう少し抑えなよ」

「アタシたちに指図する気?」

「弱いくせに!」

「命の恩人にどんな口きいてるのさ?」


しゃべりながらリョウのほうに歩いてきた。

余裕があるのか焦りは全然見えない。


「大丈夫でしたか?」

「俺は大丈夫だ。ただフィリアがまだ意識を取り戻さない」

「雑魚はこっちで対処します。姉妹には魔力ほとんど残ってませんが彼にも手伝ってもらえば何とかなるでしょ」

「レックスに?無茶だ。ドールは強化すれば機能するが、体がボロボロだ」

「僕の名前はケイト・N・フェニーチェっていいます。僕の得意とする魔法は回復魔法です」


白い髪の毛に結構強いパーマが入っている。

170cm前後の男子だ。


「回復?なら先にフィリアを」

「すみません。回復させることができても意識を戻らせることはできないんです。いつもならフィリアさんを優先させるんですけど今は戦力がほしいんです」

「でも…」

「命に別条はないよう見えますから大丈夫です。僕がレックスさんを治療次第、医務室へ運びます」

「…」

「お願いします。早くしないと観客がどんどん死んでしまう」

「リョウ、俺からも頼む」

「レックス…」

「今戦えるのは俺たちだけだ。これ以上無駄な犠牲はもう見たくない」


リョウは決めた。

ここは従うしかない。


「分かった。行ってくる」

「回復したら、俺もすぐそっちに行く」


リョウは敵に突っ込んでいった。


「では治療を始めます。痛いことはないので気にせず楽な姿勢になってください」

「ちょっと、アタシたちはいつまでここにいればいいワケ?」

「私たちも戦いたいんですケド」

「治療が終わるまで待っててよ。この2人を守ってくれ」

「アタシたちに盾の役をしろと?」

「矛の役のほうがいいんですケド」


この状況でも自分のペースを崩さない2人。

ケイトは流石に困った顔をする。


「頼みますよ。あとでシューと食事させてやるから」

「…ならいいケド」

「絶対だヨ?」

「男に二言はないよ。じゃあ頼む」


姉妹は少しだけ離れて近づいてくる敵の迎撃を始めた。





――――――――――――――――――――――――――






「次!」


リョウは今観客が逃げるのを手伝っている。

敵は確かに多いがこれは戦争なので武器に制限はない。

沢山ある武器を使って敵を倒していく。

大半は、会場の真ん中で派手に戦っているクリティウス姉妹に向かっているので思ったよりやりやすい。

これならいけるのでは?と思っているリョウの耳に


「お前、一段階目のくせにやるな」


と聞こえた。

声のきた方向を見ると、ドールを装備していない人が立っていた。

体全体を黒いマントで覆っていて頭にもフードがかぶせてある。

顔にも真黒な仮面がついていてすべて黒に包まれている。

相手は目の前にリョウがいるにもかかわらずリョウから目を離し、クリティウスたちを見る。


「しかし、あんな回復を使える奴がいたとは。一年にいたとしても代表には選抜されないだろうと思い作戦を立てたんだがな…。まあ作戦に支障はない、成功確率は100%だ」

「…」

「ネーム持ちも3人もいた。まったく今年の一年は有望だったのに、潰すのが残念だ」

「…何が言いたい?」

「あー?つまりなぁ…」


男が視界から消えた。


「死んでくれって意味だ」


後ろから無慈悲な声が聞こえる。

リョウの反応が一瞬遅れ背中に激痛が走る。

急いでそこを離れ状況を確認する。

予想以上に速かった。

相手がいつ持ち出したのか刀を手に持っている。。

あの刃が背中に刺さったのだと理解する。


「科学や魔法があるこのご時世に日本刀かよ…」


相手の目に驚きの色が現れる。


「日本刀を知ってるのか!?博識だなぁ。俺も貰った時初めて名前聞いたんだぜ?この刀の意味って何か知ってるか?」

「日本ってところで作られたってことぐらいは(日本刀なんだ…)」

「へぇ、そうなのか。日本ってどこだ?」

「この星じゃない」

「はぁ、夢のある話だな。じゃあこの刀はこの星にはない素材でできてるのか?」

「可能性はあるかもな」

「笑わせんなよ!今までこの星を出た人間はいないんだぜ?この星以外のものなんてあるわきゃねぇだろ!」


再びビムがリョウに迫る。

ドールを装備していないところを見ると魔法を使っているのは何となく分かる。

しかし分かったからと言ってリョウにはそれを止めるすべはない。

何より問題なのはあの刀がSバリアをいともたやすく壊したことだ。

壊れた部分はすでに治っているが意味がない。


「(あの刀、何か細工をしてあるのか?)」


きりかかってきたので腕で(ドールの装備してある)ガードしてみる。

刃は通らずはじき返される。


「(あの刀はSバリアには有効だがドールには何の意味もないのか。それなら…)」

「ドール相手にこの刃が役に立たないからっていい気になってんじゃねえぞ!」


相手が周りに球体を出現させた。

球体が向かってきたのでドールでガードする。

すると球体は爆発した。


「なっ!」


その球体がいくつもあるからたまったものではなかった。

シールドを展開して逃げ出す。


「そんな薄っぺらい盾一つでこの攻撃を防ぎきれると思ってんのか!?」


簡単に盾は壊れ再びリョウに接近するビム。

切りつけられるのはゴメンなのでビムのほうを向いて構える。


「勇ましいねぇ。だが俺のほうが上だ!」


刀で斬りつけてくると思い構えていたリョウに対し、ビムは首を絞めるという手を取った。

予想外の展開に反応でできず、首を掴まれながら持ち上げられる。





――――――――――――――――――――――――――






「リョウ!」


レックスは遠くでリョウが首を掴まれているのを確認していた。

しかし相手の数が多く応援にいけない。


「おい、クリティウス姉妹!さっきの威力がある炎を何で使わねぇ!?」

「魔力がもうないからだし!さっきアンタたちに使ったので結構きてたからネ」

「使えたらとっくに使ってルし!」


レックスは強い。

B組の中では一番強い。

おそらくビム以外の今ここにいる敵なら倒せるだろう。

だがそれは1対1の話である。

1対3ぐらいまででもやることはできるし、クリティウス姉妹もいて強いのは間違いなくレックス側だ。

だがそれは同じ数ならの話である。

今は3対30弱である。

しかも姉妹は魔力があまり残っておらず難しい状況だ。


「(あのままじゃリョウが…!)」


その時レックスの目にリョウとビムに近づいてく影が見えた。






――――――――――――――――――――――――――――――





「ぐっ…!」

「まあ、一年にしちゃよくやったよ。だが、俺が勝つ確率は100%だ」


朦朧としていく意識の中、リョウはもがいていた。

だが相手のほうが確かに格上だった。

何かしているのか手の力が以上で離れようにも離れられない。


「(くそっ、まだ死ぬわけには…!)」


その時リョウはビムの後ろに影が見る。

刹那、ビムの手がリョウから離れ距離があく。

何が起きたかわからないが気道が開き呼吸ができるようになる。


「リョウ大丈夫!?」

「…マーシャ」


リョウの目の前にマーシャがいた。

少なくともさっきまではこの会場にいなかったはずだ。

命の恩人だし、この世界では最も信頼のおける人なのだ。

見逃すはずがない。


「どうして…ここに?」

「私も試合見に来ていたの。突然爆発して1回避難したんだけどリリアとはぐれちゃって。探しに来たらあんたが危なさそうだったから助けたわけ」

「…助けてくれてありがとう。でもここは危険だ、早く逃げてくれ」

「何言ってんのよ。あいつがたぶん親玉でしょ?私も手伝うわ。これでも喧嘩は強いほうなのよ」

「そういう問題じゃ…イタ!」

「ちょっとあんた血出てるじゃない!まさかSバリアのエネルギーが?」

「あいつの持ってる刀だ。Sバリアを無効化してくる」


ビムが頭を抱えながら立ち上がり始める。

それを見てマーシャは時間がないと判断する。


「あんたは休んでなさい。私がやるわ」

「無茶だ!5人に選ばれた俺でもこのありさまだぞ!?お前じゃ…」

「私が5人に選ばれなかったのは、予選に参加できなかったからよ。あんたは私の戦ってるところ見たことないでしょ」

「それでも…!」

「あーもう!いいから黙ってみてなさい!私が今は戦うの!あなたは私が危なくなったら助けにくる、それでいいわね。それに…」


ビムの方を見据えて小さな声で言った。


「この程度で負けてたら意味がない」


自分に言い聞かせるためのものだったのか、リョウの「え?」という言葉に対して反応しない。

そう言うとマーシャはリョウの意見を聞かずビムのもとへ向かう。

ビムはすでに立ち上がりマーシャを待っていた。


「おしゃべりはもういいのか?」

「あなたの脳の中は大丈夫なの?」

「魔法側にだってSバリアのようなものはある。大した問題じゃあない」

「なら、いつでもあんたを潰していいってわけね」

「その台詞そっくりそのままお返しするぜ」


余裕なのか仮面の上からでも笑っているのが分かる。

余裕だけでなく、楽しいという感情も手に取るように読み取れた。


「…一応訊くわ。なんでこんなことを?」

「お前に言う必要はない、俺はおしゃべり好きだが口は堅いほうなんだ。まぁ強いて言うなら…」

「強いて言うなら?」

「楽しいからだな」

「…」

「見ろよ。今この光景!そこらじゅう血だらけだ。こんなに素晴らしいことあるか!?こんな高揚は初めてなんだ。血の匂いが!色が!味が!感触が!すべてが俺を高揚させる!たまらねぇよ。長い間待ったかいがあったってもんだ」


マーシャの睨み付けていた眼が汚物を見るような心の底から引いている眼に変わる。

この世界では人が死ぬという事象は決して少ないことではない。

だが、こんな理由を持つ者は滅多にいないのだ。


「分かったことはあんたが異常だってことね。倒した後にいい病院教えてあげるわ」

「俺が?お前に負ける?100%ありえねぇな、しっかり殺してやるよ!」


2人が戦闘を始めた。

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