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プロローグ

処女作です。

駄文に不愉快になる方がありましたら申し訳ありません。

 ―――胸が熱い。


 火を押し付けられたような熱さ。というより、これは鋭い刃物で切りつけられた痛みに近いか?

 両足に力が入らず、目の前のテーブルに手をつこうとしたが―――

 

 ガタンッ!!

 

 両手にも力が入らない。

 テーブルの上にあった豪華な料理をひっくり返しながら、俺は無様に仰向けに倒れ込んでしまった。


 一瞬の静寂が周囲を支配し―――


「キャーーー!!」「―――様! ―――様!!」「誰か! 治癒の魔法を!!」


 女性たちの悲鳴。俺の名前と安否を連呼する声。

 治癒術師を呼ぶ声が怒号となってホールに響く。


 急に熱いものがせり上がる感覚があり、俺は弱々しく咳き込むと同時に、口から大量の血を吐き出した。

 この日のために新調した白を基調とした軍服に、真紅の汚れが広がっていく。

 

(―――毒を盛られたんだな)


 薄れゆく意識の中で俺は悟った。

 犯人の目星もつく。

 きっとあの男だ。このパーティーへ誘ってきたあの男。

 

 俺は今日、この国のとある貴族が開催したパーティーに招待されていた。

 俺自身は貴族の生まれではなかったが、およそ1年前に決着した内乱において、多大な功績を挙げ英雄と呼ばれる身分となった。

 軍人としても最高位の地位を手に入れた。

 そして二ヶ月前、俺はとある高位の貴族から、このパーティへの参加を持ちかけられていた。

 別段、その貴族とは親しいわけでもなく、むしろ俺からしてみれば内戦中に大勢が決しかけた頃、味方に参じてきた日和見主義者としてあまり評価が芳しくない人物だった。

 とはいえ、今は同じ主へと仕える身だ。

 今までは戦いにばかり明け暮れ、内戦終結後も戦後処理という名の軍事関係の仕事ばかりにかまけており、政治関係からは身を遠ざけていた。

 庶民出身なので、パーティーでの振る舞いなどの知識もなく、避けてきたという個人的事情もある。

 しかし、これからは平和な時代を迎えるにあたって、こういった場所での有力者との人脈作りは重要になってくる。 

 件の貴族にそう諭されて彼の言い分にも一理あると納得し、今日こうして参加したのだが……。


 結果、このざまである。


 襟元はすでに俺が流した血によって真紅に染まってしまった。

 治癒術師や医師が俺を診察しているのがわかったが、こういった高位の人間が集まるパーティーでは封魔の結界が張られているのが基本。

 治癒の術はもちろん、解毒の術も使用できないだろう。

 医師も手の施しようがないのか、首を振っている。


 俺は今日ここで死ぬ。戦場で敵の刃にかかってではなく、毒によって――。


 こういう死に方は予想していなかったが、俺はあの戦争において多くの敵を殺してきた。

 運良く生き残ってきたが、死ぬ順番が俺に回ってきただけのこと。


 もう胸の痛みも感じない。

 もう息をするのも億劫だ。


 俺は息をゆっくりと吐き出すと……闇へと意識を委ねた。





 ―――眩しい。

 閉じた瞼の裏に光が当たる。 

 死者の世界は光に溢れているのか?

 そういえば、死んだら迎え入れられるという神の国では、光に満ち溢れていると教ているそうだが……。

 身体は思うように動かせない。

 全身は何か柔らかくて暖かい布に包まれているようだ。

 結界の解除が間に合って、《解毒》の魔法が間に合ったのかもしれない。


 客間のベッドにでも安静にさせられているのかもしれない。

 とりあえず、人を呼んで俺が目覚めたことを知らせるか。


「オギャー! オギャー!(お~い、誰か!!)」


(――!?)


 人を呼ぶため叫んだはずが、口から出たのは赤ん坊を思わせる泣き声。

 

(――え? え?)


 呆然としていると、パタパタパタという軽やかな足音が聞こえ、俺はそっと抱き上げられた。


「レンちゃん、どうしたのかな? おなかすいたののかな?」


 抱き上げたのは亜麻色の髪を持ち、緑色の瞳をした若い女性。


(――何だ!? お前は誰だ?)


 と聞いたつもりだったが、やはり俺の口から出たのは……。


「オギャー!」


(一体、どういうことだ!?) 

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