資料8 ある心療内科カルテ
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阿嘉霧メンタルヘルスケアクリニック 患者カルテ
氏名:磨田イクミ
年齢:31歳
主訴:心霊などの幻覚症状を自覚的に訴える。幻聴・幻視。
既住歴:25歳時に盲腸の手術で1週間入院。
併存症:目立ったものはなし。
家族歴:『霊感』を訴える者が父、祖母などにあり。遺伝的疾患の可能性。
生活歴:家族構成は夫と息子一人の三人。
学歴は阿嘉霧東小学校卒、西羅牟中学校卒、山清高校英語科卒、三須賀大学文学部英米文学科卒。
翻訳家として大学卒業後、複数の書籍の翻訳を行う。出産・育児時の休業後も仕事に復帰し翻訳業を続けている。
子育てに関しての悩みに関しては強いストレスを感じている兆候はあまり見られないが今後もヒアリングを続ける。
交友関係も広く、月に数度会う友人も3名ほどいるとの言。夫婦関係についての悩みも対話による解決が行われており特筆すべき問題は未だ見られない。
社会の適応に関しても自営業である職業の特性上ストレスは多いようであるが過剰適応として見られる問題などは見られていない。
現病歴:一週間前、9月21日の19時ごろ自宅で作業をしていたところ壁を透過して走り去る『猛牛』を見たと語っていた。その牛の上にはその牛の首に刃を突き立てる人間が乗っていたとも語る。特殊な幻覚であるために特別の恐怖心や強い困惑を見せており、時間がたった現在でも動揺した様子を隠せずにいた。また、本人はその光景を幻覚と明言しているが、その根拠については本人も自身が無い様子である。
それ以降の一週間で幾度か別種の『半透明の人間』を見る体験をしたとも語っているため病気としての進行がかなり進んでいる可能性も考えられる。
診断および治療の方針:ストレス要因の特定が急務であると考えられる。患者の強い不安を緩和するためにプラセボ薬の処方も併せて当面は精神療法的介入を目指しカウンセリングを続ける。




