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爆発

     ……………


     ―――――


 動き出す山口。

 同時に突破された防壁から三名の術師が入り込む。彼らはそれぞれ攻撃対象を見定めて襲いかかる。


 だが。


「避けろ心念しんねん!」


 シュウメイの防壁に入った途端、『老僧侶』は叫ぶ。

 それは彼の魔術的感性が引き起こす『予知能力』によって察知した忠告だった。


『ヌウ……』


 呼ばれた若僧侶・『心念しんねん』はその忠告にもかかわらず向かい来る折口レイの、目にもとまらぬ抜刀術に避けきれなかった足首を斬られる。


「なっ!?」


 心念は魔力防御を無視するように滑り入った刀と、痛みも感覚の断絶も出血もなくポトリと落ちる自身の足首に驚愕きょうがくする。


――感覚がある、落ちた足は、僕の意思で動く!?

 幻覚?

 神経操作?

 と、とにかくこちらも術で対抗する!


 心念は戦闘に備え、あらかじめ発動していた術式を完全開放するべく手を合わせる。


 『解!』


 彼の手に金剛杵と呼ばれる仏教的法具の像が現れた。

 しかし、折口はその強力な術式の出現に動揺することなく隙を見抜き、刀を納刀して、再びすさまじい速さの抜刀を行う。


 『ヌゥ……』


 心念の術式による防御を無視して、刀はぬるりと心念の胴を断った。


 「!?」


 ――刃が抵抗なく!?

 あ、有り得ない!

 僕の魔力100g分の防御性能だぞ!?

 それを削ることすらなく!?


 ずるりと心念は胴体が二つにずり落ちてゆく。だが、やはり彼は痛みも異変も全く感じられない。

 彼の正面に立つレイはその一閃の後すぐに心念へ刃を突き立てようと刀を向け攻撃を行う。


 『解!』


 その言葉と錫杖の環が鳴る音と共に、胴体がずり落ちる心念の背後から老僧侶が飛び出し、レイにそのまま飛び蹴りを繰り出す。


 『ガキィイン』


 刀で攻撃を受けたレイだったが、金属音と共に彼女は数メートル後方に圧される。

 そのすさまじい衝撃に彼女は相手の力量を推し量る。


 ――とんでもない硬さ!

 呪物である刀の刃が通らない!

 それのこの人の魔力量……!


 折口の感知能力には目の前の老人が底の知れない莫大ばくだいな魔力を秘めていることが至近距離でようやく知覚された。


 ――推定量は……。8、いや10kg!?

 私の百倍近い魔力量、『第一級魔術師』をはるかに超える『特別指定級魔術師』の域。それにこの服装。間違いない。

 違法魔術師団体『古僧會こそうかい』の僧兵で最も危険な男。

 第一級魔術師相当違法魔術師・少僧都僧兵・『忍如(にんにょ)』!

 敵は『違法魔術師』の連合か!?


 忍如は更なる追撃の為にレイとの距離を詰める。彼の背後には八面六臂はちめんろっぴの千手観音像が浮かび上がっている。

 だが彼は何かを察知し、後ろへとぶ。彼の動きとほぼ同じく、バンを囲っていたシュウメイの防壁が動き出す。


 幾枚もの防壁は忍如をはじめとした術師たちを追う様に動いている。


     ―――――


 心念が斬られたのと同じ頃、シュウメイは彼をマークする正体不明の最後の魔術師に警戒けいかいしながら魔術を操作していた。


――私の感知すら幾度もすり抜ける隠密技能。目で追う事も難しい素早さ。そして……。


 シュウメイは死角より飛来してくる『女性の霊魂れいこん』を横に跳んで回避する。しかしその霊魂れいこんは攻撃を続けシュウメイを執拗しつように追いかけてくる。

 彼は感知能力によりもう二体、同様の霊魂が襲い来ることを察知する。


――かなりの強度。

 周辺の低級怨霊とは訳が違う。それにこの攻撃と連携……!

 『霊魂操作術』でもかなり精度が高い操作が行われている!

 手練れの違法魔術師……!


 三体の霊魂がシュウメイを囲い、攻撃を加える。

 何とか攻撃される身体の部位を察知し魔力による防御を続けているがじわじわと魔力が削られダメージが蓄積ちくせきしていく。

 だが、彼は自身の魔術へと意識を集中させ、攻撃を受け続けていた。


 「ぐッ……!」


 痛みに堪えながらシュウメイは周囲の状況を広範に渡るその『魔力感知能力』によって把握し、防壁の魔術の複雑な操作を行う。


 彼の操作する防壁がレイに殴りかかる忍如、胴体を断たれた心念、ミサキと拳闘する山口、そして霊魂によってシュウメイを妨害する謎の術師を捉えるべく動く。


 ――やはり、スピードで勝る手練れを追うのは厳しい……。

 だが、私の感知の前に、速さは意味をなさない!


 そう考えつつ体に走る痛みに眉ひとつひそめないシュウメイは、ミサキと戦いながら高速移動を続ける山口、そして姿すら追う事も難しい最後の術師にも果敢に防壁を向かわせる。


 防壁の動きは遅く、しかし数は無数。そしてシュウメイはこの場にいる敵四名の機動する範囲を完全に感知し、把握していた。


 彼は正にチェスの駒を動かすが如く全員を同時に追い詰める。

 最初に防壁にとらわれたのは山口だった。


 「チッ、邪魔だ」


 山口はミサキとの格闘戦を邪魔された怒りのまま防壁を殴りつける。

 だが、彼の拳は防壁を透過。

 そして彼は防壁が自分を囲う他のもう一つの防壁と重なりはじめていることに気づく。


 ――動作中に術式の改変?

 否。条件付き切り替え型か!


 彼の戦闘に関する経験から、直感的にシュウメイの術式が複数の効果を任意で切り替えるものだと把握。

 また、彼は咄嗟とっさに腕を前に出し防御姿勢をとる。それも正に野性の勘によって攻撃の気配を覚ったのである。


 『ドガァアアアアアアアン!』


 爆風は山口の腕をわずかに焦がす。彼の防御は時間もあってか不十分であった。

 しかし。


 「良いね。その調子でどんどん重いのをくれ」


 山口は笑う。


 その直後、他の場所で防壁に囚われた心念、そして最後の術師の周囲が爆発する。


 『ドドドドガァアアアン』


 「クッ……」


 爆炎の中、心念がもがく。彼は爆発の最中さなかで自らが置かれた状況の困惑により魔力操作さえ不十分であった。

 だが、彼は全くの無傷。

 それは、彼の前に忍如が立ち爆風の衝撃を完全に受け止め、術式の効果による防御で衝撃を無力化したためである。


 「し、師匠」


 「未知の術におののくな。迷いは死に直結する。仏心を思い出せ」


 そう語る忍如は心念に背を向けたまま、煙の中から刀を持って向かってくるレイの方を厳しく見定めていた。


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