表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バンジージャンプ

作者: あまなす

この時期は、お天気だとウンザリする

花粉症にウンザリしてるわけだけど

まあ、天気に罪はない、仕方ない


外に出たくなかったけど

約束だから、仕方ない


アパートの下の階では、先ほど

新しい住人の引っ越しが終わった模様

さっそく、表札を見てみる


木場


キバなのか? コバなのか?

まあいいか、人の名前に罪はないから

これも、仕方ないなあ


近くの横丁の古本屋

黒ねこが寝ている

本の上で、珍しく

本好きのわたしとしては

本の上に横になるなんて

と、言いたい気持ちもあるのだけれど

いかんせん、ねこの言葉を話せない

仕方ないので眺めることにする

まったく、昼間っから寝てるなんて

けしからんヤツめ


手を伸ばしてみる

ねこの耳が、ぴくっ

ちょい動く

フフッ

いいもの見れちゃった


昨日の夜、考えたこと

死んじゃいたいけど痛いのはゴメンだ

あー、なんて、わたしらしいんだ

そんなんだから、いまだに生き長らえてんだよ

まったく、仕方ないな


そんなことを、突然、簡単に思っちゃう自分に

ひどく驚きもしちゃった

あまりに驚きすぎると、逆に自分でも

アレッ?

って思っちゃうくらい、ひどく冷静に対応できたりして

ああ、いま、なんかわたし、ヘンに冷静だなあ

なんて、人ごとみたく

あるいは、俯瞰的に

そんなふうに自分を分析できたりする


そうは言っても、そんなようなこと、そうそうあるはずもなく

経験したことなんてないかなあ

っていう人だって、珍しくないのかも


そんなもんですか?


ああ、この人は、経験したことがない側かあ

だからって、軽蔑とか、そんな感情はない

ただ単に、経験したことがない、それだけのこと

バンジージャンプをやったことがない

そういうのと一緒だ

バンジージャンプ、二回、やったことあるんだなあ、わたし


島を離れて、上京、もうすぐ十二年

三十を前に、いろいろ考えちゃう

もう少し、と思う

けど、できるのかな、やれるのかな

とも考えちゃう


最近、知り合った人からの誘いで

駅前で、募金活動のお手伝い

募金をしたことはあった

お金を入れるとき、ちょっと恥ずかしさがあった

けど、箱を持っての募金活動は、なかった


バンジージャンプみたいなものかな


最初にお金を入れてもらったとき

なんだか恥ずかしさがあった

案外、できるものだなあ

なんて、わたしは、声も出さず

ただただ、立ってるだけなんだけど


バンジージャンプみたいなものだったなあ


もう少し、ここでやってみるかなあ

ちゃんと飛べんじゃないかなあ


募金活動の帰り、いつもの街の景色が、少し違って見えた

そんな気がした


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ