表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

身を切る改革

作者: N(えぬ)

 ワンボックスカーの上から立候補者が自分の政見を訴えている。

「ああ、選挙が始まったのか」

 道行く人の、少なくとも半分くらいの人は、おそらくその程度の興味しか無いというのは、誰でもなんとなく知っている。

 それでも今回の選挙は、何かしら不安を抱えた民衆に多少なりとも選挙への興味を持たせているかもしれない。

「今こそ、議員自らの身を切る改革を実行しなければなりません!」

 マイクを握りしめたスーツ姿の中年男性が来る前の上から道行く人に前のめりに声を上げている。

 コーヒーショップで一息つきながら本を読んでいた男性は、

「落ち着いて本も読めないなぁ……。あの候補者、演説の中で、もう3度『身を切る』と言ったな。議員の利益を削っての意味で言っているのだろうが、今あの人が言ってる利益は、庶民からしたら納得のいかないものだろ。それを削るのは、正しい形になったというだけのことじゃないか。ちっとも『身が切れてない』よ」

 そんなことを思いながら、少し離れた駅頭の人だかりを見ていた。


 選挙カーから響く演説に、空虚な反論を心に描く人がいる中で、新たなひらめきを受ける人もいた。

 電車の運行遅延に頭を悩ませていた、ある電鉄会社の幹部がいた。彼は駅頭の選挙演説を聴いて、

「身を切るか……身を切る。そうか、電車の遅延がこれで少なくなるぞ!」と飛び上がった。

 この幹部の提案はすぐに試験導入された。

 駅を出発する電車を見送りながら、

「どうだい。どの電車も時刻ぴったりに発車できるじゃ無いか!」

 幹部は満面の笑みで傍らの部下達に言った。

「は、はい。素晴らしい成果です」

 部下達は拍手で電車を見送った。


 幹部の発案により、電車のドアには、素晴らしい切れ味のカッターが取り付けられていた。

時間が来れば、すーっと閉まり、有無を言わさず、カバンだろうが、なんだろうが……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ