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年ドンと首なし馬

作者: 黒灰 賢二郎

 遥か南の島に゛年ドン゛と言う神様がいました。

 ゛年ドン゛は、島の子供達を見守る優しい神様でした。


 しかし、子供というのは間違いやすい存在です。

 

 ですから゛年ドン゛は毎年の大晦日の夜に子供がいる家を訪ね、悪いところを鬼の形相で叱り、良いところを優しく誉めます。

 最後に子供が元気に成長出来るように゛年ドン゛が自らついた餅を授けていました。


 ゛年ドン゛には常に従う゛首なし馬゛と言う霊獣がいました。


 ゛年ドン゛は毎年゛首なし馬゛に跨がり、子供達の所に行き、餅を配ります。


 そして総ての子供達に餅を配り終えると゛年ドン゛は自分がついた餅を肴に、島人から献上された焼酎を飲み、年を越します。



 ある年のこと、゛首なし馬゛は゛年どん゛の食べている餅を食べてみたくなりました。

 ゛首なし馬゛は゛年ドン゛に餅を食べたい、とせがみます。


 「餅が食べたいとな、良い良い、食べよ食べよ!」


 ゛年ドン゛は機嫌良く゛首なし馬゛に餅を食べさせようとします。


 しかし゛首なし馬゛は首から上がありません。

 だからもちろん口も歯もありません。

 そのため゛年ドン゛は゛首なし馬゛の首の残りにある喉の穴に餅を突っ込みました。


 そんなことをすれば餅は喉に詰まります。

 もちろん゛首なし馬゛も例外なく喉に餅を詰まらせました。


 (くっ苦しい・・・!何してくれてんじゃ゛年ドン゛のアホー)


 ゛首なし馬゛は必死に胸を叩いて餅を飲み込もうとします。

 しかし、餅はなかなか飲み込めません。


 ゛首なし馬゛は身ぶり手振りで、餅が喉に詰まった、助けてくれ、と訴えます。


 しかし


 「ははは、なんじゃ、゛首なし馬゛よ躍りたいのか?良いぞ良いぞ!一緒に踊ろう!~~~~北から南へ細長く 南の端が~~~~~♪♪♪♪」  


 上機嫌になった゛年ドン゛は苦しみまくっている゛首なし馬゛を無視して、歌いながら躍り始めます。


 ゛年ドン゛が焼酎を飲んで上機嫌で歌って踊るのは毎年のことです。


 ゛首なし馬゛も条件反射でつい、踊ってしまいます。

 しかも後ろ足で立ち、前足で器用に踊ります。


 (って、違うわ~!なんで踊り出すんじゃボケ~!)


 ゛首なし馬゛は、踊りたいのではなく、喉に詰まった餅をどうにかしてくれと、゛年ドン゛に訴えます。


 (そうだ、焼酎で流し込めばなんとかなるはず!)


 ゛首なし馬゛は焼酎を、指差そう、と前足を焼酎に向けます。

 しかし、゛首なし馬゛の前足には指は無く、蹄です。つまり、蹄差した、わけです。


 蹄では正確に差すことができません。


 「なんじゃ、まだ餅が食べたいのか?わかった、わかった!」 


 ゛年ドン゛は゛首なし馬゛が餅が食べたいのだと勘違いしてまた喉の穴に餅を突っ込みます。


 (なんでまた餅を突っ込むんじゃ!殺す気か~!駄目だこのままじゃ!・・・そうだ、念話で焼酎を飲ませてくれと頼めばいい!)


 実は霊獣である゛首なし馬゛は゛年ドン゛と念話で意思疎通が出来るのです。


 『゛年ドン゛様、゛年ドン゛様、焼酎を、焼酎を飲ませて下さい!』


 「なんじゃ、今度は焼酎か?今年の゛首なし馬゛は、積極的だのう~!」


 ゛首なし馬゛の積極的?な姿勢に゛年ドンはさらに機嫌が良くなり、たっぷり飲ませてやろうと、焼酎の一升瓶ごと゛首なし馬゛の喉の穴に突っ込みゴボゴボと流し込みます。


 焼酎が流し込まれたことで喉に詰まった餅はきれいに流されました。


 しかし、急に焼酎を流し飲まされた゛首なし馬゛は一気に酔いが廻り、そのまま気を失うのでした。












 そして次の大晦日。


 ゛年ドン゛が子供達に配る餅をついている時、゛首なし馬゛は、出来上がった餅を見て無いはずの顔を青くするのでした。





     おしまい







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