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音楽室と体育館  作者: 多手ててと


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21.大学2年生・夏(その2)

初日の午前中、チョウパティー・ビーチに設けられた特設コートで私の初めてのオリンピックゲームが始まった。4チームづつ分けられた1次リーグでは上位2チームが決勝トーナメントに進める。3位でも成績が良ければトーナメントに潜り込める。だが長々とやるわけには行かない。夕方にはインドアのゲームがあるからだ。


もし、仮に極めて順調にビーチもインドアも勝ち進んだとしよう、それでも同日にゲームがある日が3日ある。特にビーチの準決勝とインドアの準々決勝が同日にあるってどういうことなのさ。正直そこまで残れるかというとどちらも苦しい。だが全力を尽くさなければならない。


幸い今現在、雨は小降り。風はそこそこ。このコートだとほぼベストのコンディション。


相手チームはビキニだが、私たちはワンピース。ほぼ真上から照り付ける太陽は、雨雲すら突き抜けて私の肌に紫外線を突き入れる。こんな環境でビキニなんて信じらない。ああ、誰かSPF200 PA ++++++++++++++ 滝に打たれても大丈夫なぐらいに強力なウォータープルーフ性能を持つ日焼け止めを作ってくれないだろうか?


相手はノルウェー。意外に思うかもしれないがビーチバレーが盛んな強豪国で、今回のグループリーグ最大の敵だ。早苗が集めた情報によると179と186ある私たちでも二人の合計身長では10cmも負けてる。当たり前のように二人ともオールラウンダーだが、片方はレシーブに少し難があるようだ。


最初のサーブ権はこちら。早苗は最初から思いっきりスパイクサーブをストレートでライン際に決め、幸先よく1点。レシーブが上手い方の選手を狙ったのが意表を突いたかもしれない。2点目もサービスエース。クロスの一番奥を狙ったサーブに相手はよく触ったが、ボールはリカバリー不能なところへ飛んでいく。これでクロス側の選手も少し下がった。


3本目も一番奥。ただし真ん中近くのどちらが取るか躊躇しそうなところにエースを決める。あちらの選手は下がったところだったので、前を狙われることを気にしすぎていたのだろう。


4本目はクロスの前目。相手はダイビングしてボールには触るもそのままネットにひっかかる。早苗はここまですべてスパイクサーブでエースを決めている。彼女は元からサーブが強く精度も高かったが、レベルの高いトルコリーグで揉まれたせいか、より強力な武器になっている。おかげで私はブロッカーの位置で何もしなくていいのでとっても楽。


5本目はストレート。相手が飛びついて、初めてまともにトスできる場所にボールが上がった。なおビーチではトスのことをセットと言うが、面倒なので私と早苗はトスと言い続けている。だが勢いを殺しすぎたのか、レシーブした選手の体勢が整う前にトスを上げなければいけない。やけくそ気味に高くあげられたトスは風に流されるので打ち切るのは難しそう。私はブロックするのを止めて、ネットから離れる。この動きをビーチではフェイクというが、私と早苗は面倒なのでリリースと言い続けている。


案の定相手はなんとかこちらに勢いもなく返すだけ。しかも低い。いいの? 私がこのゲーム初めてボールを触ったのはダイレクトスパイクだった。これで5点目。ここまですべてブレイク。さすが早苗は頼もしいなあ。


1セット目はワンサイドで終わったが、さすがに2セット目は立て直してきた。サイドアウトを繰り返し、7対7でコートチェンジ。ビーチは地形効果が大きいので合計が7の倍数になるごとにコートチェンジする。そしてこれでこちらが有利な地形になり、相手はもう肩で息をしているのを隠せなくなっている。1セット目から走らせまくったからね。


幸い早苗のサーブの番だし、ここで点差を広げる。普通バレーボールはインドアでもビーチでもサーブ権のある方が不利なのだが、早苗はこの不利をひっくり返すだけの力を持っている。私たちは順調に初戦を勝利で飾った。ノルウェーはコンディションのピークを日程の後の方に持って来ているのかもしれないので、初戦で当たったのはラッキー。4チーム中3チームが決勝に進む場合もあるので、ここで勝てたのは決勝トーナメント進出にかなり近づいたといっていい。


試合時間も短くダメージも少なかった。それでも私たちは急いでクールダウンして、着替えてビーチを後にする。数時間したらインドアの初戦があるからだ。


インドアの会場のアリーナに直接関係者の車で運んでもらう。会場がそれなりに近く、交通規制されているので、車内で軽食を食べているうちに着くことができた。遅れるどころか早く来すぎたようだ。他のチームメイトがまだ来ていない。


私と早苗は控室に潜り込んで仮眠をとることにした。あっという間に起こされたが時計を見ると30分は寝ていたようだ。さて、ここからもうひと試合かあ。インターハイの過密日程を思い出した。


この試合私はリベロなので、基本レセプションとディグをこなせばいい。ジャンプするのは、せいぜいセッターが使えなかった時に、アタックラインの後ろからジャンプしてトスを上げる時ぐらいなので負担は少ない。リカバリーで東奔西走させられると困るけど。


相手はアルゼンチン。サッカーならともかくバレーではこちらの方がランキングが上だ。身長もあまり変わらない。1セット目、相手のサーブを私が声かけして拾う。きっちりセッターに上げたので後はみんなの邪魔にならない位置で相手のブロックに備えられる位置に移動。複数のアタッカーが同期するかのように動き、誰が打つかわからせないようにする。こちらのブロッカーが速攻を決めてサイドアウト。この試合もいい感じに始まった。


「ナイスキー」


いいスパイクでしたね、と声をかけて一つローテーションする。だがこちらのスパイクサーブはコートを外れた。この攻めるサーブとやらで味方が外すのを見ると私のやる気がとても落ちる。


「ナイサーです」


口ではこう言うけど、女子の6人制だからまともにスパイクを打たれても拾える可能性はそこそこある。それなのに試合の最初のサーブでミス。オリンピックの初戦だし、緊張しているのかもしれないけれど、3回に1回ミスるリスクのあるサーブより、とにかく入れてけサーブの方が遥かにマシ、というのが私の持論なのだが、あまり賛同を得られない。早苗はちゃんと入れてくれるからいいよ。


そして、やはり相手は堅実にサーブを入れてきた。


「取りまーす」


声かけしてセッターに上げる。すると先ほどのローテーションで前衛に上がっていた味方セッターが、いきなりツーアタックを決めてくれた。これでまたサイドチェンジ。


次のこちらのサーブは上手く入って、相手の守備が乱れた。相手は返すことができず、ここで初めてブレイクが入った。


「ナイサーです」


もちろん今度は心から言えた。もう一本お願いします。次のサーブもいいところに行ったがうまく拾われて、セッター、そして速攻。これは私の守備範囲だったので飛びついてセッターに上げる。こっちも速攻でお返しだ。Cクイックを早苗が決める。何気に早苗はこれがファーストタッチだ。


インドアも初戦はいい感じで行けそうな気がする。

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