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第2話 別に理解して貰えなくても、いいんだけどね

一方その頃、当のイブはと言うと......



コツコツコツ......


 コツコツコツ......


  コツコツコツ......



あたしはアダムだ! なんて勇ましく言っちゃったはいいけど......何か少し恐くなって来た。そんな嘘、バレるに決まってるからね。でもまぁ、言っちゃったもんは仕方がない。もうここは腹を括るしか無いって事よ......


それにしても、ここは何て大きな建物なんだろう。『オリーブ大陸』じゃ絶対に考えてられない高層建築だわ。あら凄い! 窓の外が雲で霞んでる! まさかこの階段は天空にまで続いてるのかしら?


そんな調子で、あたしはさっきから自問自答を繰り返しながら、この長い階段を登っている。このブラッドと言う厳つい猛者と、誘拐犯マルタに連れられてね。



コツコツコツ......


 コツコツコツ......


  コツコツコツ......



誰1人口を開く事も無く、ただひたすら階段を登り続ける事20分くらいかしら......足が大根になり掛けたちょうどその頃、ようやくゴールが見えて来た。目の前には大きな観音開きの扉が......


すると、ピタッ......突然マルタが足を止めたもんだから、あたしの鼻は、ゴツンッ! マルタの後頭部に激突してしまった。



「い、痛いっ! 急に止まんないでよ。鼻が潰れたらお嫁に行けなくなっちゃうでしょ!」



本気で頭に来たから、思いっ切り言ってやったわけ......すると何? ワナワナワナって......あんた何ブルブル震えてんのよ?! 怒ってんの? 泣いてんの? 笑ってんの? はっきりしなさいよ!


結局その答えは......怒りながら泣き笑いしていた。全部だった。



「『お嫁』に行けない......だって? ワナワナワナ......」



そこか?! まさかそこに食い付いて来るとは思ってなかった。でも......またなんで?



「往生際が悪いぞマルタ......やっぱこいつは『アダム』じゃ無い。『男』が『嫁』には行かんからなぁ......まぁでもベーラ様だってお前の命までは取らんだろ。よし、このブラッド様が一緒に誤ってやる。安心しろ。


ところでお嬢さん、あんたも不運だな。人違いでこんな所まで連れて来られたら、堪ったもんじゃないよな。ハッ、ハッ、ハッ!」



正直、今日ほど自分が愚かに思えた事は無い。『自分は王子(男)のアダムだ!』なんて言っときながら、『お嫁に行けない』は言っちゃダメでしょう。トホホホ......もう喋るの止めとこ......



「......」



やがて扉の左右で畏まってた門番の2人が、あたし達の到来に気付くと、いきなり扉を開き始めた。



「「ブラッド隊長とマルタ様のおな~り~!」」 



シャラン、シャラン......


ギギギギギッ......


(ここは大奥か?)



「さぁマルタ、元気出して行こう!」



パンッ、パンッ! なぜか楽しそうにマルタの肩を叩くブラッド隊長。そんな2人の姿を見てあたしは思った。この人達、実は仲悪かったりして?......まぁ、別にあたしが心配する話でも無いんだけどね。


因みに......今あたしは後ろ手に縛られてる。そんでもって、そのロープの先端はブラッド隊長がしっかりと握ってる。一見、捕らわれの身みたいに見えるけど、逃げようと思えばいくらでも逃げれたと思う。だって隙だらけだもん。


でもあたしは、敢えてそうはしなかった。パブロフさん親子に八つ当たりされたら困るって思ったのも事実だけど、何より『アダム王子』......つまりオリバーさんの事をもっと知りたいって言うのが一番の理由だ。


えっ? そんな理由で自らの命を危険にさらすの? って、誰もがそう思うかも知れない。でも今のあたしに取っては、それが一番重要なこと。まぁ、別に理解して貰えなくてもいいんだけどね......



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