第16話 王宮へと向かって
「そこまでだ!」
突如背後から男の太い声が響き渡る。
しまった! 前ばかりに気を取られてて、後ろは全くのノーガード。あたしはなおも役人の顔を睨み続けながら、目に見えぬ背後の者に問い掛けた。
「お主は誰だ?」
「俺はこの国の海軍隊長、ブラッドだ。お前はアダムだな?」
後ろに振り返らなくとも、あたしの背中にロックオンされた複数の弓が、背中に付いた目ではっきりと見える。激しい殺気があた背中に突き刺さっていた。
気付けば......強風があたしの前髪を突き上げている。きっと、おでこのアザがこの者達にも見えていたに違いない。
『お前はアダムか?』......その質問に対し、正直に答えるなら答えは『NO』と言う事になる。だって、あたしはオリバーさんじゃ無いから......
でももし、あたしが正直に『NO』と答えたならば、今度はオリバーさんが危険な目に遭う事だろう。どこまで騙し続けられるかは分からないけど......いけるとこまで頑張ってみよう!
ねぇオリバーさん......こんなあたしだけど、少しは役に立つでしょう? と言う訳で、あたしは思いっ切り嘘をつく事にした。
「そうだ......あたしがアダムだ」
「素直で宜しい。状況は分かってるな? 早く弓を降ろせ」
「良かろう......ただし、あたしが弓を降ろすには条件がある。あの父子を今すぐ解放しろ。あんた達だって弓なんか構えてるけど、どうせ射る事は出来ないんだろう? このアダムを生け捕る事が目的なんだからな」
「ふん、知ったような事言いやがって......でも残念ながら図星だ。良かろう......おい、そこの腐れ外道! 父子を解放しろ!」
「腐れ外道?......」
「お前だよ! 早く解放しろって!」
「は、はい、畏まりました!」
腐れ外道役人は頭をペコペコ下げながら、ブラッドの命に従い父子を放してやった。下の者に対し高武者な者程、上の者には頭が上がらないんだろう。やがて2人の姿が見えなくなると、イブは約束通り弓を投げ捨てた。
さぁ、これからあたしには、どんな運命が待ち受けてるのかしら?......だってこの国の王子と間違えられてるんでしょう?! これはワクワクせざるを得ないでしょう.....
そしてアダムと間違えられたイブはブラッドに連れられて、いよいよ『ゴーレム国』の城へと連れて行かれる事となる。ベーラとその嫡子が待ち受ける王宮へと向かって......