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第4話 イルカになった

「お~い、居たか?!」


「こっちは居ないぞ!」


「どっかに隠れてる筈だ!」


「探せ!」


「探せ!」



あらら......オリバーさん、あなたはどれだけ人気者なの? なんて、感心してる場合じゃないか......それにしても困ったわ。この様子じゃ、船が大陸に着くまでに見付かっちゃいそう......



そうこうしているうちにも、



「あっ、居たぞ! アダムだ!」



まっ、不味い!......



あたしが慌てて物影に隠れると次の瞬間には、



ピシッ、ピシッ、ピシッ!



なんと、立て続けに矢が飛んで来たわけ。こりゃ参ったな......弓相手に丸腰じゃ、太刀打ち出来ない。


ところが......



「殺すな、手足を狙え!」



なるほど......殺すつもりは無いって事か。だったら別に恐いもん無しだわ。あたしは静かに物陰から目だけを出してみた。すると射手は全部で3人。20メートル後方に2人と、ほんの5メートル手前に1人。弓を構えながら、ゆっくりと歩み寄って来ている。


まぁ、1本くらい手足に矢が突き刺さるかも知れないけど......やってやれない事は無さそうだわ。どうせこのまま隠れてたって、捕まるだけだし......よし、覚悟決めるとしましょう!



ハァ~......


まず1回、大きく息を吸った。そして、



フゥ~......


今度は大きく息を吐く。そしてもう1回、



ハァ~......


さっきよりもっと大きく息を吸い込むと、



「我は『オリーブ大陸』一の名手、イブなり!」


大声を上げて突撃を開始! 



タッ、タッ、タッ......!



「うわぁ、来た!」



ビシュン! 


まずは手前の1人か放った矢が、目の前に迫り来る。危ない! 反射的にかざした玉ねぎに矢が突き刺さって目の前で木っ端微塵に砕け散った。


うわぁ、目が染みる!......などと涙を流している場合じゃ無い。直ぐ様、更なる2本の矢が前方から迫り来る。


あたしは一気に手前の輩の襟首を掴むと、その者を『盾』にした。すると、プスッ、プスッ!



「ぐえっ!」



背中に2本の矢が突き刺さった『盾』は、奇妙なうめき声を上げながら、コトン。見事......弓と矢をあたしの足元に落としてくれたのである。ラッキー!


こうなるともう後は早業勝負。見れば後方の射手達は、慌てて次なる矢を弦に絡ませている。遅れてはならじ! と言わんばかりに、あたしは弓と矢にむしゃぶり付いた。そんでもって、



せ~の~......ピシュン、ピシュン!



「うっ......」


バサッ!



「うっ......」


バサッ!




勝負あり! ふぅ......やっとここで一息だ。正直、別に息が上がってる訳でも無い。日頃の鍛練と心の準備が、こう言う時に物を言うもんだとつくづく感じ入った瞬間だったと思う。


あたしは、無意識のうちに大陸を見詰めていた。精々あと3キロってとこかな......


次に身を乗り出して海面を見詰めてみた。あら、意外と海は穏やかだ。


何とかいけるかな? 


うん、いけそう?!


よし......いっちゃおう! 



と言う訳で、せ~の~、チャポン!



あたしはイルカになった。背びれも無ければ尾びれも無い。でも代わりに手と足が有るから大丈夫!



「ひ~は~ふぅ~、ひ~は~ふぅ~......」



そう言えば忘れてた......あたし『オリーブ大陸トライアスロン大会』で3年連続優勝してたんだっけ......こんなの楽勝だわ。光速でイルカ達を追い抜いていくイブだった。


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