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第2話 少しは役に立つでしょ

一方その頃、間違って誘拐されてしまったイブの方はと言うと......


看守の隙を突いて、まんまと地下牢を抜け出していた訳である。そんでもって今どこに居るかと言うと、明かりの消された厨房の物陰で、ただひっそりと息を潜めていたのでした......



全く......何であたしが誘拐されなきゃなんないのよ? いきなり牢屋に閉じ込めるなんて酷いじゃない! なんて......目くじら立てて怒ったところで、どうにもならない事は分かってる。ダメダメ、少し冷静にならなきゃ......


一旦深呼吸してから、あたしはあらためて周囲を見渡してみた。すると......


あれれ? 結構大きな厨房じゃん。すぐ向こうに見える食堂も、テーブルやら椅子やらが無数にひしめき合ってるし......ざっと数えても5~60人は余裕で入れるんじゃ無いかな。きっとそれだけの人数がこの船に乗ってるって事なんだろう。


そうそう......実はこの船に乗ってる『人間』の事で、一つビックリした事が有る。それはオリバーさんみたいな身体の人が、やたらといっぱい居るってこと。


新種? 突然変異? 宇宙人?......前にそれとなくオリバーさんに『あなたは宇宙人?』って聞いた事が有るけど、その時ははっきりと違うって言ってた。だからきっと宇宙人じゃ無いんだろうね。


結局詳しい事は分かんないんけど、一つだけはっきりしてる事が有る。それは、2タイプの人間がこの世には存在するってこと。


仮にあたしのタイプを『Aタイプ』とするなら、オリバーさんは『Bタイプ』。『オリーブ大陸』には『Aタイプ』の人しか居ないんだから、逆に『Bタイプ』の人しか居ない大陸があってもおかしく無いと思う。


全ては摩訶不思議......この星には、まだあたしの知らない事がいっぱい有るって事ね。まだまだ勉強不足だわ......


そんな感心仕切りなあたしが、フムフム......腕を組んで2回ほど頷いたその時だった。ボッ......突如、暗闇の調理室に明かりが灯された。


まっ、不味い、誰か入って来たわ!


とにかく航行中は隠れ通して、船が着岸したら陸地へ逃げる......今ちょうど、そんなビジョンを立てたばかり。だからこんな所で見付かる訳にはいかない!


カサカサ......あたしは、物音を立てないようにボロ切れを被った。あとはもうそこらじゅうに転がってる玉ねぎみたいに、野菜に成り切るだけだ。シーン......


すると、今入って来たばかりの者達の声がザワザワと聞こえ始めてくる。



「さぁ、調理場を片付けちまおう。あと30分もすれば『ゴーレム国』に到着だ」


ゴーレム国? 聞いた事の無い名前だわ......つまりあたしは、その『ゴーレム国』に連れてかれるって事なのね......


「それにしても、今回の任務は何だったんだ? まさか『オリーブ大陸』へ観光に行った訳じゃ無いだろ?」


「まぁ、俺もよくは分からんけど、何か小娘を連れて帰るって任務だったらしいぞ。確か......12才でおでこにアザが有るとかって言ってたな」


12才でおでこにアザですって?!


「たったそれだけのヒントで、よくマルタさんは小娘を見付けられたな? 『オリーブ大陸』って言っても結構広いんだろ」


「なんて言ってたっけな? そう、サマンサ、サマンサ村だ。その小さな村の住人ってとこまで突き止めてたらしいぞ」


「なるほど......だったら早いか」


!!!......なんてこと?!


訪問者達のそんな雑談を聞いてしまったあたしの身体は、震えが止まらなくなっていた。


①12才

②おでこにアザが有る

③サマンサ村の住人


①+②+③=オリバーさん!


つまり、あたしはオリバーさんと間違えられて、誘拐されたって事なのよ! 夏祭りの夜、あたしはオリバーさんの育った家を見ておきたくて『バロック家』に行った。だからあたしがオリバーさんに間違われたんだ......なるほど! 謎が解けたわ......


でも良かったんじゃない? だってあたしがオリバーさんの身代わりになれたんだから......あたしだって少しは役に立つでしょ。オリバーさん......



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