第8話 奥深かった
それにしてもこの子......凄い可愛い顔してる。でも何だろう?......何かが違う。もちろん、私達には無いその『もの』が付いてるって事はそうなんだけど、それだけじゃ無い気がする。もっと根本的な何かが違うと思う。でもそれが何なのかは分からない......
ムニャムニャムニャ......あら、今笑ったわ。きっと、いい夢でも見てるんでしょうね。赤ちゃん......この村で幸せに育ってね。
ダメだ......あたしこの子のミステリアスな魅力に、どんどん引き付けられてる。一体、どうしたのかしら?......
「リラよ......まさか、その子を自分の手で育てたい......そんな風に考えてるんじゃ無かろうな?」
「えっ、あっ、な、何を突然......」
「その様子だと、どうやら図星みたいだな。リラよ......残念だがそれは諦めろ。この子は不運の星の下に生まれた子じゃ」
「不運の星の下に生まれた子......ですか?」
「そうじゃ、今に分かる。まぁ、黙って付いてまいれ」
「はい......」
ああ......バーバ様は、全て私の心を見抜いている。この子を自分の手で育てたい......確かにそんな風に思った事も事実。言い当てられてちょっとビックリした。
それと『不運な星の下に生まれた子』......って、一体何なの?
この子の私達とはちょっと違った身体の事を言ってるのかしら?
それにしても、バーバ様の驚き方は普通じゃ無かった。きっと何か大きな秘密がこの子に隠されてるんだろう......そう、考えると、ちょっと怖くなって来た......
「さぁ、ここじゃ」
「ここって......もしかして洞窟?」
「そうじゃ、早く入れ」
「はい......」
私は片手で赤子を抱き、もう片っぽの手で、松明を前にかざした。途端にオレンジ色の光が、そんな洞窟内の様子をおぼろ気に映し出す。うわぁ......結構大きな洞窟だな......こんな所があったなんて、今まで全然知らなかったわ。
サワサワサワ......
脇水が小さな小川を作って、洞窟内から外へと流れ出ている。バーバ様はご老体ながら、そんな小さな川を器用に跨ぎながら、軽快なステップで奥へ奥へと進んで行く。
きっとバーバ様は、よくここへ足を運んでるんだろう。いくつか分岐に出くわしても、さっきから迷う事無く、歩を進めてるんだから。
「あっ、道まちがえた。行き止まりだ」
間違えるんかい?!......などと、勢いで突っ込みを入れそうにもなったけど、この洞窟内に漂うある種異様な空気が、そんな無駄口を叩く事を拒んでいたような気がする。
何なんだろう? このやたらと張り詰めた空気は......神聖なような気もするし、邪悪っぽいような気もする。とにかく、この洞窟の奥深くに、何か強烈なメッセージを発してるものがある......それだけは、若干12才、まだまだ人生経験未熟な私でも、容易に分かる事だった。