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第12話 マリア様!

子供の頃悪戯盛りだったオリビアは、よく牛乳を飲んでるパピーを笑わせたもんだ。何が楽しいのかって? そんなの当たり前だろ。パピーが鼻から牛乳を吹き出すからだ。


正直そん時は、口から飲んだ牛乳が何で鼻から出るのか全く構造が分からなかった。でも俺はこの年になって、今ようやくその答えが分かったような気がする。つまり口と鼻は、どっかで繋がってるって事だ。



何やら突然、俺の身体に強烈な上昇Gが加わる。そして次の瞬間には、プシュー!......なんと、俺の身体が宙を舞っているではないか!



「うわぁー!」



多分、30メートルは飛んでたと思う。俺は上空からはっきりと見てしまった。遠くに見える新大陸に明かりが灯っていた事を......あの大陸には、俺と同じ人間が住んでいる! 



クジラの潮に吹き上げられたおかげで、『棚からぼた餅』的な大発見をしてしまうアダムだった。



やがて、バシャ~ン! 



引力に任せて、見事着水だ。



よっしゃあ! 何だかよく分からんけど、俺はまだ生きてる。まだ生きてるぜ! 


正直この時、俺は神に守られてる? などと自惚れたりもしてた。だってそう思うのも当たり前だろ......人食いザメ3匹に襲われて、挙げ句の果てにはクジラに食べられたんだぞ。それでもこうして生きてるんだ。きっと誰もが神ってると思うんじゃないか? 俺に限らずさ......


ならば神様、サメとクジラから助けてくれたついでに、あともう1回だけ助けてくれ。


潜在意識の中に隠れたパワーを解放しちまうと、その後一気にそのツケが回って来るらしい......なんか......身体が......全然......動かないんだ......



「うっ、ぷっ、ぷっ......」



身体が沈む......身体が......沈む......沈む......ボコボコボコ......



やがて......アダムの身体は鉛と化し、海の底へと沈んで行った。それはそれは冷たく、寂しく、そして誰も居ない孤独の世界だった。俺、このまま死んじゃうだな......殆ど意識は無くなってたけど、何となくそんな事くらいは察していたと思う。


この時俺は、間違いなく大草原を白馬に乗って駆け巡っていた。それだけは絶対に間違い無いと思う。だって、心地よい風を肌で感じてたし、七色に咲く花の香りだって、しっかりと嗅いでたからな......


それがやたらとリアルな夢だったのか、俺の魂が幽体離脱して大草原に飛んでいたのかどうかは分からない。でもとにかく気持ち良かった......もう全てがどうでもよくなる程に気持ち良かった。


よくよく見てみれば、俺の前をもう1頭の白馬が風を切って走り飛ばしている。どうやら髪の長い女性が白馬に乗っているようだ。



「おーい、ここはどこなんだ? 教えてくれ!」



パッカ、パッカ、パッカ......



俺は無意識のうちに、そんな叫び声を上げていた。でも白馬の女性は、全く反応を示してはくれない。ただひたすら手綱を持ち、一直線に走っているだけだった。正直、その女性の顔が見えた訳じゃ無い。でもなぜか俺には分かった。その女性がにこやかに笑っていると言うことを......


マリア様......あなたはマリア様なのですか? もしあなたが神様ならば、何で俺をこんな所に連れて来たのですか? ここって......別世界なんでしょう?


もちろん俺は薄々分かってた。ここが死後の世界か、その狭間だって事を......それゃあ分かるさ。魚じゃ無い俺が海に沈んでった訳なんだから......


マリア様(俺が勝手にそう呼んでるだけで、本当にマリア様かどうかは分からない)は、振り向くどころか更にスピードを上げて一気に俺との距離を広げていく。



「マリア様、待ってくれ! 俺を置いてかないでくれ!」



多分、1人になるのが恐かったのと、ここでマリア様を見失った時点で俺の『死』が確定してしまうような気がしたんだと思う。その時俺は、すがるような気持ちで手綱を握っていた事を今でもはっきりと覚えてる。



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