第11話 揺れてる、揺れてる......
ザバッ! ザバッ!......
残った1匹のサメは、どうやら特大だったようだ。これまた特大な高波をバックに従えて、一気にこっちへ向かって来てやがる。
全く、おたくはいいよなぁ......海の中でもエラ呼吸出来るし、ハリケーンだって全然関係無さそうだ......少しはこっちの都合も考えてくれよ。
ああそうかい、そうかい......そんなに俺を食いたいのか? だったら好きに食えばいいだろう。お前に食われなくたって、どうせ後ろから来てる高波に飲まれて俺は終わりだ。その代わり一思いにパクッていってくれよ。俺は痛いが大っ嫌いだからな......
サメまでの距離、30メートル
高波までの距離、40メートル
どっちが先に俺を料理してくれるんだ? それにしても......高波って、あんなに真っ黒だったっけ?
そして3秒後には......
サメまでの距離、20メートル
高波までの距離、25メートル
おっと、おっと! 高波が追い付いて来てるぞ。頑張れ人食いザメ! それにしても近くで見る高波は迫力満点だ。まるで生き物にしか見えん。あれれれれ......あれって本当に高波なの? なんか今、潮吹き上げたような......
そして更に3秒後には......
サメまでの距離、10メートル
高波? までの距離、12メートル
ザブーン、ザバーン!!!
俺は遂に気付いてしまったぞ。今、思いっきり目が合っちまった。あれは高波なんかじゃ無い。ク、ク、ク、ク、クジラだぁー!
そして......
サメまでの距離、3メートル
巨大クジラまでの距離、4メートル
あわわわわ......人食いザメが食われる! それと......完璧に俺も食われるわ。ハッ、ハッ、ハッ......もう笑うしか無い!
やがて......
サメまでの距離、1メートル
巨大クジラまでの距離、1メートル
クジラの口デカー!
うわぁ......食われる!
サメと一緒に!
そして遂に......
ガブッ!
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『 ∈ Seven Seas ∋ 』完
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と思われたその時だった。
「うわぁ、真っ暗なのは嫌だ!」
バコンッ! バコンッ!
「ここから出せ! 出せって!」
バコンッ! バコンッ! バコンッ!
「なんだこの気色悪いネバネバは?!」
バコンッ! バコンッ! バコンッ! バコンッ!
どうやらオリバー、もとりアダムは、暗い所が苦手だったようだ。オール片手に、史上最強パワーで暴れ捲っている。クジラの口の中で。
「テヤー! テヤー!」
ヌルヌル壁を突き刺したり......
「チキショー! チキショー!」
ヌルヌル壁を切り裂いたり......
「出せー! 出せ!」
ヌルヌル壁をくすぐってみたり......
どうやら人食いザメは、成す術も無く食道へと流されて行ったようだ。多分その後胃酸で溶かされ、クジラの栄養になっていくのだろう。でも俺は流されなかった。きっとマミーとパピー、そしてイブが、俺の潜在的パワーを引き出してくれたんだろう。
このまま口の中で踏ん張ってるだけじゃ、いつかは必ず胃袋に流されてしまう。俺は身体の全てのパワーをオールを持つ両手に集中させた。そして、
「てやぁー!」
一気に全パワーを解放する。手応え十分だ! すると、ベリベリベリ......どうやら俺は何か分厚い壁を切り裂いたようだ。
途端に、グラグラグラ......
おお、揺れてる、揺れてる! クジラが暴れまくってるぞ! この後、俺はどうなっちまうんだ?!
そしてその結果は、直ぐに現れたのである......