第7話 あたしはリラよ
「バーバ様、この子......左のおでこにアザがあるのと、下半身に何か変なものが付いてるんですが......もしかして、病気なんでしょうか?」
「突起物? 変なもの? 何だかのう? どれどれ......わしが見て新是よう。どうも最近、目がかすんで困るわい。どれどれ......どれどれ......」
あたしの名はリラ。バーバ様の一番弟子よ。ここでちょとあたしの師匠、バーバ様の事を紹介しておくわね。
長老、魔術師、占い師、予言者、村長、そして更には薬剤師などなど......数多の看板を使い分けるそんなバーバ様は、御年90を数える大賢者様。なかなか凄いでしょう!
『砂かけばばあ』にしか見えない、なんて言ったら怒られるかも知れないけど、そんなバーバ様のお悩みは、物が2重にも3重にも見えると言う事らしい。さすがの大賢者様も、年には勝てないって事なんだろうな......
「おう......突起物が3個出ておる」
「1個です」
やっぱ重症だわ......
「ん? んん? んんんん?! なっ、なんと!」
「どうしました?! バーバ様!」
「こっ、この子は?!」
「この子がどうしたんですか?!」
「間違いない......おお、神よ!」
「あのう......バーバ様、ちゃんと説明して頂かないと分かりません。何をそんなに1人で盛り上がってるんですか? 一体、この子がどうしたって言うんですか?!」
「リラよ......お前、今年でいくつになる?」
「いきなりあらたまらないで下さい。私なら今年で12になります......それがどうかしました?」
「12才か......フムフム、ならばもう立派な大人だな。よしっ......その子を抱いて、わしに付いて来い!」
「え、あ、はい......」
ツカツカツカ......
ツカツカツカ......
私の名はリラ......『こうのとり』の篭に乗って、この『オリーブ大陸』にやって来たのが、ちょうど12年前の今日。だからきっと12才なんだと思う。
私が暮らしている『サマンサ村』は人口50人。みんなで助け合って、何とか幸せに暮らしている。村はこの『オリーブ大陸』の東南端にあって、北が上向きの地図で見れば、村の右と下は全部海だ。
天気が良くて空気が澄んでる時は、遥か遠くに別の『大陸』が見えるけど、海はいつも荒れててね......
バーバ様の話に寄ると、過去に何度か船でそんな海を渡ろうとした人が居たみたいだけど、みんな荒波に飲まれちゃって生きて帰った人は居ないそうな。
『この海は呪われている』......それはバーバ様の昔からの口癖だ。せっかく『こうのとり』様に導いて頂いた大事な命......そんな危ない事をして、命を落とす人達の気持ちが私には分からない。きっと『神様』の天罰が下ったんだと思うよ。
『サマンサ村』の北側には、狩猟民族の『ダーリン村』、それで西側には、遊牧民族の『タバサ村』が隣接してる。そのもっと先には、また別の村が有るみたいだけど、積極的な交流が無いから、私はよく分からない。
きっとバーバ様なら詳しいんじゃないかな? 因みに私の『サマンサ村』は、地の利を生かして漁業で生計を立ててるんだ。新鮮な魚には事欠かないよ。
まぁ、漁業と言っても海はいつも荒れてるから、船を出しても精々1キロ先くらいまで。それ以上沖合いへ進むと『呪い』が掛かって、船はあっと言う間に沈没しちゃう。頼むから無茶はしないで欲しいなっていつも思ってる。ああ......怖い怖い......