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第8話 それは不味いって!

「なるほど......自警団か。もう何でも有りって感じだな」



「多くの人命が失われてしまったわい......やはりこの可愛い孫息子を差し出すべきだったのかも知れん......わしは大きな過ちを犯してしまったようだ。死んでいった村人達に顔向け出来ん......」



「いや親父、それは違う。仮にイバンを渡してたとしよう。でもそれで事は済んだと思うか? 奴らはこの村の全てを吸い尽くすまで絶対に手を緩めなかっただろう。


確かに尊い人命が幾つも奪われた事は事実だ。でも、俺達はお前らの言いなりにはならない! その決意を伝えられただけでも、村に取ってプラスだったと思ってる。


もう過ぎ去った過去の話をするのは止めよう。問題はこの後だ。奴らがこれで引っ込んでるとは思えん。奴らだって痛手を負ってる訳だから直ぐには来んと思うが、また襲って来る事は時間の問題だ。


重要なのはその備えを今からやっておくって事だろ。でも今の俺達には、コンドルの背に乗った『救世主様』が付いてくれてる。奴らも迂闊には手を出せんだろう。


それはそうと......自己紹介がまだだったな。因みにこの年寄りが村長のダビデで、俺が息子のジャック。それで更に俺の息子のイバンだ。で......『救世主様』は?」



「あたしか?......あたしはモニカ、ガルーダの背中に乗って、ある人物を探し回ってる。それで早速なんだが......」



「あんたはこの『臥龍村』の恩人だ。俺達の知ってる事なら何でも教えるぞ。人を探してるって?......どんな奴だ? 特徴を教えてくれ」



「名前はアダム。もっとも、ここで何と呼ばれてるのかは分からん。年は12才で、おでこにアザがある『美男子』だ」



「おでこにアザがある12才か......イバンは見ての通り『自警団』が狙って来る程の美男だが、おでこにアザは無いからな......」



「やっぱ分からないか......」



「ここいらじゃ、見掛けんかも知れんな......特に最近じゃ、そんな容姿端麗の若者はみんな自警団の連中に連れてかれちまってる。まぁ、他の村の連中にも聞いておくとしよう。どこまで力になれるか分からんけどな」



「つまり、自警団の所に容姿のいい若者が集まってるって事だな? なるほど......そう言い事か。よし、いい事思い付いたぞ!」



「ん? いい事ってなんだ?」



「この村に今後、自警団の連中が来なくなって、更にあたし......い、いや俺の探してるアダムにも会える方法が見付かった」



「ほほう......そんな方法が有るのなら、是非聞かせて欲しいものじゃ......のう、ジャックよ」



「あんたの考えてる事って、まさか......」



「さっき、砂浜で村長を助けてる時、あいつらの長は俺を気にいってたようだ。ジャック、あんたは昨晩自警団に逆らったお詫びと称して、俺を自警団に差し出せ。今後、村には来ないって条件付きでな。中々いい方法だろ」



「あんた......モニカって言ってたよな。ならばモニカ! 言わせて貰おう。あんたは奴らの事を少し甘く考え過ぎてる。奴らの所へ行くって事がどう言う事なのか君は分かっていない。大勢の虫けら達から辱しめを受けるって事なんだぞ。


いくら村を守る為とは言え、『臥龍村』の救世主にそんな仕打ちを受けさせる訳にはいかない。誰が何と言おうが、そんな事はこの俺が絶対に許さん。ここは聞き分けてくれ」



「ありがとよ......俺を心配してくれるその気持ちには感謝する。でも、もうこれは決めた事だ。この村を救った事に恩義を感じてるんなら、今後はあたしの言う事に従ってくれ」



多分、あたしの目は必死だったと思う......自警団の拠点に、美男子が集められていると聞いてしまった以上、もうそこへ行かぬと言う手立ては無い。


話に寄ると、自警団なる組織は重装備を施した強力なる戦闘集団。そんな連中の拠点に1人で忍び込む事すら難儀なのに、ましてやアダム様を探し出す事など至難の技だ。ならばジャックに『貢ぎ物』と称し、連行して貰った方がよっぽど話が早い。


あともう1つ......あたしが去った後のこの村が心配でならない。ジャックが『貢ぎ物』と称して、素直にあたしを自警団に差し出せば、この村の安全を担保する事にも繋がる。更に言ってしまうと、村の命運を差し置いて、あたしの身を案じてくれたジャックの気持ちが無性に嬉しかった。


今思い返せば......この時既に『女』であるあたしは、ジャックを『男』として見ていたのかも知れない。息子のイバンがイケメンなら、やはりその父親のジャックもかなりのイケメンだ。その時、やたらと心臓がバクバクしていたのを今でもはっきりと覚えている。



「まあまあ......別に今焦って決める事も無かろう。奴らだってまた直ぐには攻めて来んだろうし。そんな事よりジャック......お前もモニカさんも、泥やら汗やらですっかり身体が汚れとる。湯にでも一緒に浸かって来たらどうだ。身も心もすっきりすれば、またいい案も浮かんで来ると言うものじゃ」



「おう親父、それはいい考えだ! この森の奥に最近掘り出した『回復の湯』が有る。共に一夜を戦った仲間同士だ。裸一貫、とことん語り合おうじゃないか!」



な、な、な、なんてこと?!



そっ、それは不味いって!



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