第7話 ベビーフェイス登場!
すると次の瞬間には!
「怯む無かれ! 上空から助太刀申す!」
などと叫びながら、バサッ、バサッ、バサッ!......突如頭上から現れたその者は、あれよあれよと言う間に4、5人を剣であっさり切り落としてしまったでは無いか!
奴らの言葉を借りるなら、きっとその者が『ベビーフェイス』なのだろう。俺はその者の容姿を見るなり初めて分かったような気がする。なぜ、奴らがそう名乗ったのかと言う事を......
かっ、可愛い......
しかし、ここは戦場。そんな煩悩にまやかされている場合では無かった。見ればそんな『ベビーフェイス』は、コンドルの背中に乗って剣を振り回している。驚いたのは俺よりむしろ奴らの方だったと思う。まさか頭上から攻撃を受けるとは、夢にも思っていなかっただろうに......
「やばい、あれは『ベビーフェイス』だ! 一時退散!」
色を失った荒くれ者共は、我を忘れて逃げ出す始末。一方、『ベビーフェイス』は、尻尾を巻いて逃げるその者達に攻撃の手を緩めない。なおも急降下を繰り返し、その度に、1人、また1人と地に崩れ落ちていく。
残念ながら......村は見渡す限り火の海と化していた。更に数多の村民が、無惨な姿へと変貌を遂げている。何て酷い事を......
昨日までは平和で笑顔の絶えなかったこの村が、一夜にしてこの有り様。これが運命と言うのならば、神は何て酷い仕打ちをしてくれるのだろうか......この真面目で働き者な村民達が、一体何をしたと言うのだ......俺は思わず呆然と立ち尽くしてしまった。
「あんたは何やってんだ? この忙しい時によ!」
「えっ?」
急にそんな言葉を投げ付けられ、俺は直ぐに正気を取り戻した。見れば『ベビーフェイス』は、既に傷付いた村民達の救護を始めているではないか。
「まだ助かる命が山ほど有るだろ! 今あんたに出来る事を直ぐにやれ! 途方に暮れるのはその後だ!」
「お、おう!......」
俺は目が覚めた。『ベビーフェイス』の言う通りだ。俺は剣を投げ捨てて傷付いた人を救護し、なおも燃え続ける火に水を投げ続けた。そんな作業は夜通し続き、あっと言う間に朝を向かえる事となる......
一夜明け、その被害の大きさに改めて驚かされてしまう。200人を数えた『臥龍村』の人口は、一夜にしてその半分。消失した家屋は数限りなく、辺り一面が焼け野原と化していた。
もし『ベビーフェイス』が来てくれなかったら、俺のちっぽけな命は元より、この村自体が『ポパイ大陸』の地図から消え無くなっていただろう。俺達村民に取っては正に『神の救世主』。どんなに感謝しても感謝しきれるものでは無かった。
「このご恩は一生忘れやせん。あんたが来てくれなかったら、この『臥龍村』は、きっと滅亡していただろうに」
深々と涙ながらにそう語ったのは、俺の親父、村長のダビデだった。
「別に大した事はしてないよ。お礼を言うなら、ガルーダに言ってくれ」
見ればさっきから、俺達が献上した新鮮な魚をひたすら食い続けてる。よっぽど腹を空かしてたんだろう。
「ところで......奴らは一体何者なんだ? 何でこの村を襲って来た?」
「奴らはこの大陸の自警団。自警団と言っても、見ての通りそれは名ばかりだ。実際は盗賊と何ら変わらん。遂に奴らはこのイバンを寄こせと言って来やがった」
俺は愛する我が子の肩を抱きながら、不覚にも涙ぐんでしまった。俺と契りを交わした『妻』が昨年病死してからと言うもの、どうも涙脆くていかん......俺は然り気無く袖で涙を拭った。