表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/133

第5話 その名はジャック!

バチバチバチ......



「ああ......何て事だ......」



「酷いことを......」



燃えていた。激しく燃えていた。燃えていたものは......村だった。見れば、馬に股がった巨漢共が、逃げ行く弱き村民達を追い掛け回しながら、剣で切り付けている。



「村長さん、あんたはここで隠れててくれ。あたしが奴らを退治してやるから!」



鼻息を荒くしながらそんな言葉を述べ終わると、すかさず、ピーッ! 胸ポケットから取り出した笛を力強く吹いた。



すると、



バサッ、バサッ、バサッ......



どこからともなく、大きな羽ばたき音が......そしてあっと言う間に現れたその者とは、



ブルルンッ! 



ガルーダだ!



笛の音に素早く反応し、駆け付けてくれた相棒は、到着早々あたしを背中に乗せるべく、その身を屈ませてくれた。


見れば、お腹が大層膨らんでいる。きっと新鮮な魚をたらふく食していたんだろう。食事中に突然呼び出しちゃって可哀想だったな......などと、言ってる場合でも無かった。



「ガルーダ、仕事だ! 気張って行くぞ!」



ガルルルル!......



きっと燃え上がる炎を目の当たりにして、ガルーダも事の重大性を理解してくれたんだろう。気付けば、2人揃って武者震いが止まらなかった。


そして、バサッ、バサッ、バサッ......あたしを背中に乗せたガルーダは、決死の急速飛行を開始するのだった。



 ※  ※  ※



一方、突如夜討ちを掛けられた『臥龍村』の村民達はと言うと......



「早く! 子供達を地下に隠せ!」



「村長が見当たりません! どこへ行ったんでしょう?!」



「奴らは家に火を放っています! 村中が炎に包まれています!」



「腕っぷしの強い若者達が必死に戦ってますが、もう防ぎ切れません!」



「どうしたらいいんでしょうか?! ご指示を!」



「ジャック様!」



「ジャック様!」



「ジャック様!」



村長の姿が見えぬ以上、村人達は嫡子たるその者に全てを託すしか無かった。時間の経過と共に、戦況は悪化するばかり。このままでは、皆殺しの憂き目に遭ってしまう事だろう。



「かくなる上は......それがしも『臥龍村』の戦士! 刺し違えてくれようぞ! 者共、付いて参れ!」



兵を動かす頭脳たる役目を果たしていたその者が、自ら前線に出るともなれば、それは正に背水の陣。切迫感がピリピリと伝染していく。



「「「御意!」」」



ガラガラガラ......



村役場の引戸を勢いよく開けた村長の嫡子ジャックは、僅かな手勢を引き連れて、最後の聖戦へと立ち向かって行く。



「さぁ逃げろ、逃げろ! ハッ、ハッ、ハッ......」



グサッ!



「う、うわぁ!」



「それで隠れてるつもりか?! ワァ、ハッ、ハッ!」



グサッ!



「うっ!......」



扉を開けた途端、ジャックの目に入り込んで来たものと言えば、それは正に大殺戮。つい今しがた武器を持って飛び出して行ったばかりの兵達も、矢に当たり、剣で切られ、皆揃って朱に染まっている。



「よくも我が『臥龍村』の大事な民に......許さん! 絶対に許さんぞ!」



村長の嫡子......その名はジャック。村の誰よりも剣使いに長けたその者は、誰よりも温和で優しく、そして誰よりも争い事を嫌う平和主義者だった。しかしこの時のジャックは、そんな優しきジャックに有らず。阿修羅王その者の姿に変貌を遂げている。


その時、俺は完全に我を忘れていた......親父から引き継いだ『平和主義』の理念だけじゃ、何一つ守れやしない!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ