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第9話 どういう技なの?

一方、そんな夏祭りの真っ只中、渡せるかも分からないローブを買ったイブはと言うと......



何で昨晩は来てくれなかったんだろう......あたし、ずっと待ってたのに......また明日って、言ってくれたじゃない?! 


本当はね。あなたに迷惑が掛かると思って、夏祭り来るつもりは無かったの。でももう居ても立っても居られなくなっちゃってさ......そんなこんなで来てみたはいいんだけど、なに、この人の数? これ見付けんの至難の技だわ。


さっきから当てずっぽうで見回ってみてはいるものの、全く見付かる気がしない。因みに、『夏祭りに来たって、俺は見付けられないよ』なんて言ってたけど、やっぱ何かに化けてるってことなの? だとしたら一体何に? それと何のため? もう意味が分かんない!



そんなこんなで、放浪を続ける事、数時間。飲まず食わずで歩き続けていれば、さすがにお腹が『そろそろ何か食わせろ』と唸り声を上げて来る。グ~、グ~......


19:50分

疲れきったあたしは、1人虚しく体育座りでシーフードドックを頬張っていた。どうやら、あたしの周りだけで吹き続ける『哀愁』と言う名の風は、この場所を完全に気に入ってしまったようだ。



やがて、スタスタスタ......背後から耳障りな足音が近付いて来る。何となく直感で分かった。それが誰かと言う事を。またあいつだ......



そして結果は?



「おお、イブじゃないか! どこ行ってたんだ? 探したんだぞ」



やはり大当たり! 『ダーリン村』の忌々しき狩人仲間、バロンだ。あたしに取って、招かれざる客である事は言うまでも無い。



「あちこち見て回ってただけだ。それがどうした?」



「別にどうもせんよ。これ旨いぞ。食うか?」



見れば、一口噛った牛タンロールをあたしの顔の前に差し出しているではないか。誰がお前の食い掛けなんて食うか!



「もうシーフードドックで腹一杯だ。遠慮しておく」



「そうか、旨いのにな......それは残念」



ムシャムシャムシャ......その人間自体が生理的に合わないと、食べてる音すら、耳障りな雑音にしか聞こえて来ない。牛タンロールに罪は無いが、こいつが一口噛った時点で、あたしの中では『食べ物』から『毒物』に変化を遂げている。


早々に『食べ物』たるシーフードドックを平らげると、あたしは直ぐに立ち上がった。その理由は他でも無い。単にこの者と離れたかっただけだ。



「某はもう一回りして来る。せっかくの夏祭りだ。貴殿も十分に楽しまれるがよい」



「おいおい、そんな急がなくてもいいだろう。大人達の夏祭りは、オールナイトなんだからよ。おっと、もうすぐ『みんなでダンス』の時間になるぞ。俺達の仲のいいところを皆に見せ付けてやろうぜ!」



などと勘違い言葉を並べながら、何と! 然り気無くあたしの腰に手を回して来たではないか!


もう我慢の限界を超えていた。触られた腰がアナフィラキシーショックを起こしている。なので......思いっきり言ってやった。



「某には、心に決めた人物が居る。故にお主の入り込む隙間は無い。金輪際、付きまとうのは止めてくれ。はっきり言って、死ぬ程に迷惑している」



本気でズバッと言ってしまった。多分バロンのメンツは丸潰れだったと思う。周りに仲間がいっぱい居るからね。でもあたしが悪い訳じゃ無い。全く空気を読めないお前の責任だ。


さて......一体どんな言葉が返って来るんだ? 正直、ちょっと恐かったけど、こっちは別に悪く無い。言いたい事が有るんなら、はっきり言えばいい。あたしも負けてはいない。


するとバロンは、あたしが想像していた言葉よりも、遥かに奇怪な事を言い出したではないか。



「オリビア・バロック......お前が心に決めた人物とは、そんな名前なんじゃないか?」



怒り狂うでも無く、実に冷静沈着。意外過ぎる反応だ。もしこいつの口から『オリバー』と言う名が飛び出していたのなら、きっとあたしはこいつの期待通りに取り乱していただろう。でもそんな名に聞き覚えは無かった。



「オリビア・バロック??? 誰だそりゃ?」



そこだけは、素直に正直に答えてやった。



「どこまでもシラを切り通すつもりなんだな。まぁ、いいだろう......『ダーリン村』の人間が『サマンサ村』の人間と関係を持ったら、どう言う事になるか思い知らせてやる。これが最後の忠告だ」



そこまで語ると、バロンは私の前からあっさりと立ち去って行った。正直、オリビア・バロック何て言う名は初めて聞く?......いや、待てよ......聞いた事が有るぞ。


そうだ......そうだ......さっきローブ売ってた娘の名は......確か、オリビア! そう、オリビア・バロックだ! 


オリビア......オリバー......オリビア......オリバー......『OLIVIA』......『OLIVER』......うっ! スペルそっくりじゃん! 


まさか......まさか......オリバーさんは、オリビア・バロックに化けてた? ってこと?! うっそう......


まぁ、本人かどうかは分からないけど、少なくともオリビアさんはオリバーさんの事を知ってる......それだけは間違い無い!



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