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第8話 O・L・I・V・E・R!

「某もこのローブを買わせて貰うとしよう。それでなんだが......」



「どうしました?」



「贈り物にしたいと思っておる。名前なんか入れてくれたりするのか?」



実はそんなリクエストも有るかと思って、刺繍糸と針を持って来ていた。やっぱサービス業は顧客満足有っての商売よね。きっと、パピーかマミーにあげるお土産なんじゃ無いかな?



「ええ、もちろん出来ますよ。糸は何色がいいですか? それと......何て入れましょう?」



「糸の色はピンクで。それと入れる文字は......」



「ちょっと待って下さいね。今メモりますから......はい、じゃあどうぞ」



「まずはアルファベットで『O』」


「はい!」



「次に『L』」


「はい!」



「そんで次に『I』」


「はい!」



「次に『V』」


「はい!」



「次に『E』」


「はい!」



「そんで最後に『R』」



「はい、分かりました。全部繋げると『O・L・I・V・E・R』 オリバー......でいいんですね。えっ? それって!」



「ん? 何かおかしいか?」



「い、いいえ......別に」



と言う訳で、あたしは自分が編んで作ったブルーのローブに、何の因果か、自分の名前を入れる事になったの......もちろん嬉しかった。だってそうじゃない......あたしだって、いや、俺だって......イブが好きなんだから......



「恋人へのプレゼントですか?」



よせばいいのに、余計な事を聞いてしまった。ずるいみたいだけど、イブさんの本心が聞けるいいチャンス! なんて思っちゃったのよ。どう答えてくれるんだろう?......正直、ちょっとドキドキだった。



「恋人か......恋人とは、某がそう思ってたって相手がそう思って無ければ、恋人同士とは言わんのだろう。ならばお主が今繰り出した質問の答えは、NOと言う事になる」



その時のイブさんの表情はとても寂しそうだった。そんな事は無いよ! って、オリバーが言って上げれれば、それなりに説得力が有るんだろうけど、今のあたし、つまりオリビアがそんな事言ったって、何の気休めにもならない。やっぱ昨晩、いつもの樫木の下へ行っとけば良かった......



「そんな事無いと思います......オリバーさんだって、このローブをプレゼントされたら、きっと、きっと喜ぶに決まってます!」



「有り難う......気休めでもそう言って貰えると嬉しいよ。でも会えるのかすらも分からんのだ。このローブだって、渡せるのかどうか......」



「大丈夫、絶対に渡せます! 今晩この村で、必ずオリバーさんはイブさんの前に現れますから!」



「おお、そうか......可愛い売り子さんと話してたら、何だか自信が湧いて来たぞ。きっとこのローブも渡せる事だろうよ。有り難う。はい、お代。釣はいらないよ。お主、名を何と申す?」



「オリビア......オリビア・バロック」



「そうか、いい名前だ。お主も早くいい人と廻り合う事だ」



すっかり自信を付けて、笑顔で去っていくイブだった。目の前には、100ペリカ紙幣が1枚、風に揺れている。


そのローブ......120ペリカなんだけど。しかも刺繍代が追加で10ペリカ。でもまぁ、ローブあたしの所に戻って来そうたがら、それは良しとしよう。


それとイブさん......あたしはもうとっくにいい人と廻り合ってますよ。強くて、優しくて、綺麗で、ちょっとお茶目で、一途なあなたに......



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