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第7話 夏祭り

その翌日......それは夏祭り当日のこと。オリビアはただ一人、何やら物思いに更けている。



12才を迎えるまでのあたしの心は、100%『オリビア』だった。それがいつの間にか、『オリバー』があたしの心を支配し始め、気付けばあたしの心は100%オリバー色に染まっている。


今日、夏祭りのフリマでローブを売る見た目乙女のあたしは、間違い無くオリビア。でも心は全くの別人オリバーだった......


結局悩んだ挙げ句、昨晩は樫木の下には行かなかった......あたしはイブさんが好き。でも好きだからこそ、不安定なこのあたしの運命に彼女を巻き込みたくない......そんな気持ちが心の中に同居していた事も事実だった。


会いたい、でも会わない方がいい、会いたい、でも会わない方がいい、会いたい、でも会わない方がいい......気付けばそんな言葉を頭の中で繰り返しながら、1枚、そして1枚と、花びらを千切り続けていた。



すると、



「中々いい色のローブだ。それがしにも見せて貰おう」



そんな客の呼び掛けに、突然瞑想の世界から現実に駆け戻る恋に悩む乙女、オリビア姫だった。


あら大変、お客さんだわ! そう言えばあたし......夏祭りのフリマでローブを売ってたんだ。ずいぶん前からマミーと一緒に頑張って作ってきた自慢の作品ばかりだよ。



「あらお客さん、お目が高いですね。これは、うちの売り物の中でも一番人気で......えっ?......な、なんで~?!」



「おお、貴殿はいつぞやの森の中で『めしべの奇跡』を摘みに行くとか言ってた生意気娘......」



イブさんだぁ~!......



「ええ......あの時は、あたしの命を救って頂き、本当に有り難うございました」



今、瞑想の中でずっと登場し続けてたイブさんと寸分も変わらぬイブさんが今、目の前に居る。口から心臓が飛び出す程の驚きだったけど、必死にあたしは唾で心臓を飲み込んだ。何とかセーフ......


あたしがオリバーだよ! 何て言っちゃおうかとも思ったけど、それをここで理解させるには、無制限の時間が掛かる。しかも、「あら、可愛いローブね。これ貰おうかしら」「毎度あり~! それなら50ペリカで~す!」てな具合で、イブさん以外にもお客さんが居たりもした。とてもじゃ無いけど、他人の前で話せるような内容じゃ無い。



『サマンサ村の夏祭り』......

それは年に1回だけ、しかも1日だけの短いお祭り。近くの『ダーリン村』や『タバサ村』はもちろんだけど、それ以外の遠くの村まで、あちこちに招待状を送っている関係で、この日だけはいつも静かな『サマンサ村』が大賑わいを見せる。


そんな『サマンサ村』の『夏祭り』は、以下の通りに行われる。ほぼ毎年、同じプログラムだ。


(10:00)

村長さんが、夏祭り開催を宣言し、皆で祭壇を囲んで今年一年の平和と豊穣に祈りを捧げる。村長さん、緊張して思いっきりセリフ噛んでたわ......


(11:00)

仮設ステージAで、伝統の『サマンサ村漁師踊り』のお披露目。11才以下の子供による演舞なんだけど、今年はあまり上手い子が居なくて、あたしは12才で卒業なんだけど、今年だけはそんなこんなで無理矢理踊らされたんだ。でも大勢の人の前で披露するのってやっぱ気持ちいいよね。でも頑張り過ぎちゃって、足が筋肉痛......やっぱ年なのかな?


(12:00)

みんなでバーベキューランチ! 今年も狩猟民族の『ダーリン村』と遊牧民族の『タバサ村』からいっぱい肉の差し入れを貰ったから、大盛り上がり。やっぱ新鮮な肉は美味しいわよね。今も胃の中で肉が踊ってるわ......


(13:00)

仮設ステージBでカラオケ大会! パピーが焼酎で顔を真っ赤にして『海はよ~、海はよ~、親父の海はよ~~~♪......』って気持ち良さそうに歌ってた。あれは一体どこの惑星の歌だったんだろう? 


(14:00)

暫しご歓談タイム。あたしはカラオケ大会の運営から解放されて、ここでやっと一息。でもマミーはあれこれ雑用で忙しいから、ここでフリマの店番をマミーとタッチ。


取り敢えず、20時からの『みんなでダンス』までは、あたしもゆっくり出来るかな......何て思ってたのも束の間。1時間もしないうちに、今イブさんがあたしの前に現れたってわけ。これはちょっと不意打ちだった。ビックリ!



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