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第2話 聞いてしまった!

一方、バロンよりも一足早く暇を告げたイブはと言うと......



パッカ、パッカ、パッカ!......



ホース殿、一生懸命走ってくれ! バロンに捕まってたお陰ですっかり遅くなってしまった。頼む......頼む......


やがていつもの場所で、バチバチバチ......焚き火の火が見えて来た。


ああ、良かった......まだ居てくれた!



「オリバーさん!」



「おうイブ、やっと来たか。今日はもう来ないかと思ったぜ」



「来ない訳無いじゃん! 今日1日頑張って働いたのも......あなたに会う為なんだから」



「おお、嬉しい事言ってくれるじゃんか! さぁ、こっち来い!」



「はいっ!」



あたしは、ホース君から飛び降りると、勢いのままその人の厚い胸の中に飛び込んでいった。



もう気付いてると思うけど......今の某は、某ではなく『あたし』だった。そこには、全てをさらけ出したイブが存在する。これが偽り無き、あたしの姿だ。


厚い胸板の中であたしが目を瞑れば、自然と彼の唇が重なって来る。いつもの匂い、そしていつもの舌ざわりだ。初めて唇を交わした時は、さすがにちょっとビックリしたのを覚えている。でも直ぐに唇が溶け始め、顔、上半身、下半身......そして足の指の先まで瞬く間に溶けて果てていくと、そんなオリバーさんの行為に対し、あたしの身体は為すがままに......


やがていつもの如く、彼はあたしの服を乱暴に剥いでいった。それがまた堪らない......優しく脱がされていくよりも遥かに刺激的。彼の手が上から下へと降りて来ると、もうあたしの下半身は、準備OK。いつでもどうぞと言わんばかりの温もりを見せている。


バチバチバチ......獣避けの焚き火の前で、気付けばあたし達は本能のまま結ばれていた。激しき彼の吐息に包まれながら、あたしは、彼と共に大草原を駆け巡る。彼が全力疾走を始めれば、自ずとあたしの息も上がっていく。ハァ、ハァ、ハァ、......


正直、こんな快楽がこの世に存在してたなんて......知らなかった。多分だけど、この大陸では誰も知らないと思う。


あたしだけがこんなに幸せでいいのかと、ちょっと不安になったりもしたけれど、きっとこれは神様が与えてくれたご褒美なんだと思う。


初めてこのオリバーさんと出逢ってからと言うものの、ほぼ毎日この大きな樫の木の下で、あたし達は大草原を駆け巡っている。それは自分でも驚く程に、自然な流れだった。彼が全力疾走を止めると、あたしの呼吸も自然に正常値へと戻っていく。


まだ身体の火照りが冷めやらぬあたしは、突然こんな突拍子の無い事をオリバーさんに聞いてみた。



「あなたは一体、どこの星からやって来たの?」



だって、こんな身体つきした人なんて、今まで見た事無かったから......それに、こんな快楽を共有出来るなんて、ただ事じゃ無いとも思ったりして......



「さすがのコウノトリも、他の星までは飛んでいけんだろう。だからきっと俺もこの星で生まれたんじゃ無いんか?」



「そっか......」



正直、それ以上は聞くのが怖かった。彼の事をもっと沢山知りたいと思う気持ちは山ほど有る。でも知ったが故に、彼があたしの前から消えてしまったら......そんな風に考えてしまうと、死ぬ程に恐くなる。別に知らなくたって構わない。オリバーさんが居てくれるなら、あたしはそれだけで十分......


多分、いつも彼がやって来る方角からすると『サマンサ村』の人なのかなって思う。だから最近は『サマンサ村』に行かないようにしてる。バッタリ合っちゃったりしたら、きっとどうしていいか分からないから......


でも『サマンサ村』では一体、どう言う生活してんだろう? まさか今みたいにローブを深く被って姿を隠してるのかな?......素で歩いてたら目立ち過ぎるもんね。やっぱ......深く考えるのは止めよう。考えれば考える程に、この愛する人の事を知りたくなっちゃうから......



「さぁ、そろそろ村へ戻った方がいい......あんまり遅くなると怪しまれちまうぞ」



「うん......」



毎度の事なんだけど、この瞬間がいつも辛くて堪らない。時間なんか止まっちゃえばいいのにって、いつも思ってしまう。でもやっぱ、帰らなけりゃならなかった。なぜなら、あたし達はそれぞれ違う村で生活する民......ここでこうして焚き火を囲んでいる事すら、罪深き事なんだから。



「送ってくか?」



「ううん......大丈夫」



「そっか......見られでもしたら、大変だからな」



「それじゃあ......あたし行くね」



「分かった。俺も帰るとしよう」



あたし達がほぼ同時に立ち上がると、馬達も揃ってこちらに顔を向ける。毎日の事だから、それぞれの主を乗せてそれぞれの村に帰る事を理解してるんだろう。



ヒヒ~ン......ブルブル。



あたしがホース君に股がると、それを見届けたオリバーさんも馬の背に飛び乗った。



「それじゃあ、気を付けてな」



「あのう......オリバーさん!」



「ん? どうした?」



「サマンサ村の夏祭りなんだけど......あなたの村の村長さんから、うちの『ダーリン村』に招待状が来てるの。オリバーさんって......サマンサ村の人なんでしょ?」



言ってしまった! 結局、あたしは優柔不断......詮索は止めようと心に誓ったばかりなのに、つい勢いで聞いてしまった。



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