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第13話 その者、悪魔の化身だった

一方その頃、『ゴーレム国』の居城では......



「ベーラ様、申し訳ございません。モニカを取り逃がしました」



今や、絶大なる権力を掌にしたベーラ兄妹の元へ、汗を流しながら駆け込んで来た大男は他でも無い。モニカをガルーダに連れ去られたばかりの陸軍隊長ゾールだった。



「モニカを取り逃がしただと? 全く何やってんだ! 人事をもう1回考え直さんといかんな......」



頭ごなしにゾールを叱り付けたその者はベーラに有らず。その兄のゴルド参謀長だった。いつの間にかそんな大層な身分になっていたと言う訳だ。もちろん血の繋がった兄妹だけに、ベーラの信頼もやたらと厚い。



「も、申し訳ございません......」



「まぁ、そんな頭ごなしに怒る事でも無いでしょう......鳥に連れ去られたんたがら仕方が無いわ。ゾール、大義であった。お前は一旦帰って少し身体を休めるが良い」



「あ、有り難うございます。それではこれで......」



顔を赤くしながら、立ち去っていく陸軍隊長のゾールだった。名誉だけを糧に日夜戦い続けて来た軍人だけに、さぞかしプライドが傷付けられた事だろう。ベーラのフォローがせめてもの救いだったに違いない。



「おいベーラ、モニカ空軍隊長はソニアの子を連れ戻しに行ったんだろう......それって、かなり不味くないか?」



「別に放っておけばいいわ。多分、男しか居ない『ポパイ大陸』に向かったんでしょう。普通はそこにソニアの子が居ると思うわよね」



「なに? 違うのか?」



「12年前の記録を調べさせたのよ。そしたらビックリ! なんとソニアの子は『オリーブ大陸』に送られてたのよ。だから安心して。『ポパイ隊大陸』にソニアの子なんか居ないから。


もう『オリーブ大陸』に人を送ったわ。選りすぐりの1人をね......彼女ならきっと直ぐ見付けてくれるでしょう。もっとも、ソニアの子がまだ生きてたらの話だけどね......」



「あの国王シーザーとソニアの子だ。俺はまだしぶとく生きてると思うがな......でも男が女だけの『オリーブ大陸』に連れてかれたとあっちゃ、一悶着あったんじゃないか? それすら前代未聞の話だからな。それと......『オリーブ大陸』ったって結構広いだろ。選りすぐりの人を送ったからと言って、ソニアの子を直ぐに見付けられるのか?」



「そこは大丈夫。記録に寄ると連れてかれたのは『サマンサ村』って小さな村よ。あとオデコにアザが有るらしいわ。しかも12才って分かってる訳だから、直ぐに見付かるわよ」



「なるほど......そこまで分かってるんだったら話は早いな」



「まあね......今回はちょっとこんな面倒な事になってるけど、これからはそんな事も起きなくなるでしょう」



「また何で?」



「シーザー国王は甘過ぎだったのよ。あたしだったら、男と女を大陸で分けるなんて、まどろっこしいやり方はしないわ。大陸の民なんか皆殺しにしちゃった方が早いじゃない。ねぇ、国王のアダム君もそう思うでしょう?」



「う、うん......僕も、そ、そう思う」



「あら、やっぱあなたは賢いわね。あたしの子だけあるわ。少し落ち着いた秋頃かしらね。兵を両大陸に送って一気にみんな殺しちゃいましょう。楽しみだわ。フッ、フッ、フッ......」



「全く......お前は恐ろしい女だな。俺はお前の身内で良かったよ」



「親に感謝しなさい」



「ところで......お母さん」



「あらどうしたのアダム? モジモジしちゃって?」



「僕ね......もう国王になったんだから、お嫁さんが欲しい」



「お嫁さん? あらビックリ! やっぱ絶倫国王シーザーの血は争えないわね......まぁ、あなたの言う事も一理有るわ。国王が独身じゃ格好が付かないもんね。あなたはどんな女が好みなのかしら?」



「僕ね......キレイで強い人がいい」



「キレイで強い人? 分かったわ。あたしがあなたの妃に相応しい人を見付けてあげましょう。まぁ、楽しみに待ってなさい」



「やったぁ、お母さん、有り難う!」



もはや、偽りなるアダム国王は、育ての母、ソニアの事をすっかり、忘れているらしい。12年間、愛情を注いで貰った恩を一瞬にして忘れてしまうような資質は決して国王に向いているとは言い難い。


今、ここに即位を成し遂げた偽りなるアダムは、決して悪人とまでは言わない。しかし、国王と言う立場ともなると、全てにおいて物足りなさを隠し得ない。


その事が長きに渡って繁栄を続けて来た『ゴーレム国』を、一気に混乱へと誘って行く事は誰の目で見ても明らかだった。しかし、この体制が変わる事は万に一つも有り得ない。なぜなら、そこにはベーラと言う悪魔の化身が存在していたからである。くわはわら、くわはわら......


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