第12話 ガルーダ!
「そうか......それがお前の選んだ道ならば、致し方ない......」
カシャッ。
カシャッ。
カシャッ。
カシャッ。
4本の剣が同時に抜かれる。東、西、南、北に1人ずつ。無傷の屈強なる剣の達人らが、四方から今にも自分に襲い掛かろうとしている。
一方、あたしは立っているのもやっとだった。切り裂かれた左腕からは、ダラダラと血が流れ続け、意識は朦朧とし始めている。しかも、正面に立つゾールの姿が二重にも三重にも見えてる始末。もはやこんな自分だったら、屈強な兵士の剣を血で汚す必要も無かろう。それ程までに、今の自分は無力だったと言える。
やがて、その時がやって来た.....
「者共、この謀反者を成敗せよ!」
「「「御意!!!」」」
終わった......
ソニア様、お力になれず......
申し訳ございませんでした......
あたしは最期の力を振り絞り、弱々しい力で剣を握り直した。その時だ......
バサッ、バサッ、バサッ......
バサッ、バサッ、バサッ......
何やら、背後から羽ばたくような大きな音が近付いて来る。あたしはその音に聞き覚えがあった。
まさか、まさか、まさか......
お前......来てくれたのか?!
そして、ゾール達が一斉に剣を振り上げた正にその時だった!
バサッ!
............
............
............
気付けば......あたしの身体は宙に浮いていた。そして、下を見下ろせば、ゾール達4人の途方に暮れた顔が眼下に見下ろせる。
「有り難う......ガルーダ」
バサッ、バサッ、バサッ......
コンドルの背中に乗った空軍隊長モニカは、意思を持った自らの『飛行機』に今回は辛くも救われた。そしてそんな『飛行機』は、両翼3メートルにも及ぶ翼を豪快に羽ばたかせながら、その高度をぐんぐんと上げて行く。
「さぁ、ガルーダ! あたしを連れてっておくれ! アダム様が待ってる『ポパイ大陸』へ!」
運命とは皮肉なもの......モニカが向かった先にアダムは居ない。アダムが女の子と間違えられて『オリーブ大陸』へ連れて行かれた事など、もちろんモニカは知るよしも無かった。
野蛮な男しか居ない『ポパイ大陸』に、傷付いた美戦士がただ1人降り立ったりしたならば、一体どう言う事になってしまうのか......悲観的な事ばかりを考えてしまう。
今はただ祈ろう......忠義の士モニカが苦難を乗り越えて、無事アダムを救い出す事を。