第11話 それがあたしの選んだ道だった
残念ながら、それが親友ゾールが出した彼なりの忠義だった。でも決してあたしは、彼を恨んだりはしない。なぜなら彼は、自分の仕事に真面目だっただけなのだから......
でもあたしはあたしの選んだ道が正しいと今も信じてる。そして一度決めた道を、最期まで貫き通す事が、あたしの武士道であり、そしてそれが忠義の証。その気持ちに一切ぶれは無かった。
あたしは短き18年の人生に別れを告げると、剣に手を触れた。恐らく数分後には、この世から旅立ってる事だろう......ただ、端くれにも自分は空軍隊長モニカ! そう簡単に切り裂かれるとは思いなさんなよ!
「上等だぜ! このモニカ様に剣を向けるとはいい度胸だ。死にたい奴からとっとと掛かって来い!」
などどそんな罵声を上げた頃には、前も後ろも、そして右も左もすっかり囲まれていた。その数全部で10。
まぁ、逃げ道無しってとこか......別に構わないわ。端から逃げるつもりなんて無いから......
やがて、
「てやぁー!」
いきなり背後から切り掛かって来た。
「甘いぜ!」
あたしは難なく攻撃を回避すると、カウンターに打って出る。そしてその者の身体を真っ二つに切り裂いた。バサッ!
「ぐえっ......」
1人減って9人になった。
続いて正面から。今度は槍が目の前を掠めていく!
「おっと!」
これも難なくかわして見せた。そして、グサッ! バランスを崩したその者の胸に剣を突き刺す。
「ぐえっ......」
更に1人減って8人。
ハァ、ハァ、ハァ......繰り出された連続攻撃に、多少息が乱れて来た。でも、まだまだいけるぜ!
息つく間も無く次なる攻撃が! 今度は左右同時だ。
バサッ!
バサッ!
耳元を2本の剣が空を切った。1本はあたしの髪の毛を切り裂き、もう1本はあたしのローブを切り裂く。振り向き様に2回、あたしは剣を真一文字に振り下ろす! バサッ! バサッ! その度に血飛沫が舞い上がり、2つの身体が地に崩れ落ちた。
更に2人減って残りは6人。
このダブル攻撃で切り裂かれたものと言えば、髪の毛とローブだけ。故に身体へのダメージは皆無だったけど、精神的に焦りを感じ始めたのはこの頃からだった。
瞬間的なる激しき動きは、あたしの体力を容赦なく奪っていった。ハァ、ハァ、ハァ......既に心臓と肺は悲鳴を上げ始めている。あと6人、されど6人......この圧倒的人数の差は、体力が残り少なくなったこの頃に、顕著なる影響を及ぼし始めていった。
そして今度は、再び左右から2本の剣が襲い来る! バサッ! バサッ!
「くそっ!」
何とか気力で1本はかわしたモニカではあったが......
グサッ!
もう1本の剣は、モニカの左腕を切り裂いていた。
「うっ! くそっタレがぁ!」
バサッ!
バサッ!
ヤケクソで振り回した自らの剣が、2つの首を吹き飛ばしていた。
2人減って、遂に4人となる。
くっそう......左手が焼けるように痛みやがる。今の2人を倒せたのは完全にまぐれだ。残るは4......でも残ったのは......最強の4人じゃねぇか! ダメだ、目が霞んできたぜ......
「おいモニカ......そろそろ止めないか? お前はよく頑張った。ここで剣を投げたところで、誰がお前を腰抜けと批判出来ようか......あとの事は俺が上手く取り入ってやる。悪いようにはしないぞ。
次は体力を温存した最強の4人が同時に切り掛かる。お前に勝ち目は無い。頼むから幼馴染みの俺に、お前を殺させないでくれ」
きっとゾールも神にすがるような気持ちで、あたしにそんな言葉を投げ掛けてくれたんだろう......確かにもうあたしはヘトヘト。そんなへべれけ女に、あんたら最強の男達4人が一斉に切り掛かって来れば、あたしの身体なんか、あっさり分断される事だろう。
そんな事は言われなくても分かってるさ......でもな、自分を裏切る事は出来ても、ソニア様を裏切る事だけは絶対に出来ない。それだけは分かってくれ......
「さぁ、掛かって来い!」
結局、同じ事しか言えなかった。それでいい......これがあたしの選んだ誇り高き道なんだから......