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第8話 波を拭った

やがて私が地下の牢獄まで連れて来られると、そこに人の姿は有りませんでした。投獄される姿を誰にも見られない事だけは、せめてもの救いだったと思います。



ギー......



「入って!」



やがてモニカは突き飛ばすかのようにして、私を牢獄に押し込めました。危うく私は転げ落ちそうになってしまう。



「乱暴しないで!」



あたしは唇を噛み締めて、モニカの顔を睨み付けてやりました。恥を知れ! って言わんばかりに。


でも、なぜかモニカは全くこっちを見ていません。むしろ周囲に神経を尖らせてるようです。どんなに見渡したって、私達2人しか居ないわよ。静まり返ってるし......


あたしはもうモニカの顔など見たく無かった。見れば見る程に腹が立ってくるし、こんな落ちぶれた私を、昨日までの部下に哀れんで欲しくも無かったのです。


気付けばモニカに背を向けている私......お願いだからもう早く帰って......きっと私の背中には、そんな文字が書かれていたに違い有りません。



すると......



「ソニア様! ここに至るまでの無礼な振る舞い、伏してお詫び申し上げます!」



突然、背後からそんな声が掛けられたではないですか。えっ! なに? 反射的に振り返ってみると、私の目に飛び込んで来たものはなんと! 地に跪き肩を震わせて涙を流すモニカの姿でした。



「モニカ......」



私は思わず言葉を失ってしまう。正直、今何が起こっているのかよく分からなかったのですが、だだ何となく少し風向きが変わって来た事だけは間違い無さそうです。


そして今目の前に居るモニカは......


いつもと変わらぬ忠義の士だったのです! 



「ベーラが国王を毒殺した事は明白です! 必ずや、その証拠を私が掴んで見せます。それまでの間は、不自由をお掛けすると思いますが何とかこの場はご辛抱下さい。必ずやあたしは、あなた様を堂々とここから出して見せます。ご安心下さい!」



なんと、なんと、忠義の士は存在した......その事に気付いた途端、私はもう涙が止まらなくなってしまいました。きっとモニカは私に取って、天から舞い降りた救世主だったのでしょう。



「ウッ、ウッ、ウッ......モニカ、ありがとう」



やがてそんな救世主も、俄に眉を潜め始めました。



「ソニア様、一つ気掛かりな事が......あなた様の正当なるご嫡子の事です。生まれて間もなくベーラの子とすり替えられたのであれば、大陸に送られてしまったものと思われます。


ベーラから国権を取り戻す為には、まず真なるアダム様をここに連れ戻さなければなりません。


真のアダム様は正室なるソニア様が産み落とした子。それに対し、偽なるベーラの子は側室の子に過ぎません。


ベーラが行った国王殺しを公にし、真のアダム様をここに連れ帰る事が出来れば、この悪しき状況は一気にひっくり返ります。


ソニア様......神がこのベーラの悪行をお許しになる筈がございません。私めが命に変えましても、真のアダム様をこの城にお連れしてみせます。


私はこれから直ぐに『大陸』へ飛びます。ソニア様におかれましては、この後不自由な日々が訪れましょうが、心を大きく持ち、来るべきその日に備え、万全なる心の準備をお願い致します」



そのように語ると、モニカはニコリと微笑んでくれました。きっと私を力付けたかったんだと思います。



「うっ、うっ、うっ......」



爛々と輝くモニカの闘志とは裏腹に、私の涙は止まる事を知りませんでした。でも私がこんなにボロボロ泣いていたら、モニカに心配を掛けてしまう......ダメ! 窮地に追い込まれた今だからこそ、もっと強くならなければ......私は、そんなモニカの忠義に勇気付けられ、遂に涙を拭ったのでした。


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