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第5話 逃げちゃった

「分かった。父さん」......アダム次期国王


「意義はございません」......ソニア王妃


「アダム様に忠誠を誓いますわ」......モニカ空軍隊長


「某は王族の決定にただ従うのみ」......ゾール陸軍隊長


「御意!」......ブラッド海軍隊長



そして、ベーラが、



「私もアダム様を......」



言葉を発し始めたその時でした。私はきっと我慢の限界を超えていたんだと思います。



「あなたに発言する権利など有りません! 身分を弁えなさい!」



!!!



え? な? なに?!



突然私が立ち上げたそんな雄叫びに、皆一瞬、時が止まっていました。無理も有りません。王妃と言う立場となってから今日に至るまで、私が声を荒げたのはこれが初めてだったのですから。



「身分? 一体、あたしがどのような身分だと言われるのですか? 話の意味がよく分かりませんが......」



「なんですって?! あなたは、下働きの身でしょう。ここが場違いだと思わないのですか? 今すぐこの部屋から出て行きなさい! 言う事を聞かなければ、牢獄に入れますよ!」



自分の身体がブルブルと震えている事は分かっていました。遂に堪忍袋の緒が切れてしまったのです。国王シーザーの忌の際である事はもちろん分かっていましたが、1度関を切った濁流を止める事など、出来る訳も無かったのです。



そんな激しく立ち上がる火花にいち早く反応したのはなんと、病床から三途の川に飛び込もうとしていた国王シーザーでした。



「この火急な時に、お前達は何をいがみ合っておるのじゃ! 今こそ、皆が一丸とならなきゃならん時ではないか!」



こんな事では、死ぬに死に切れん! きっとそんな気持ちでいっぱいだったんでしょう。でもあたしは、一度抜いた剣を束に戻すつもりなど、毛頭有りませんでした。



すると、ベーラはここぞとばかりに、飛んでも無い事を言い始めたのです。正直、私は信じられませんでした......



「いいえシーザー様、この火急な時だからこそ、はっきりさせておかなければなりません。どうやらこの女は、あたくしベーラの身分を履き違えているようです。


あなたの口からはっきりとこの『アバズレ』に言い聞かせてやって下さい。真実を告げる事こそが、国王たる者に課せられた最期の勤めじゃ無いのですか?」



「「「「ア、アバズレ?!」」」」 王妃に?! うそ......



その言葉の衝撃は凄まじかったです。まるで大地震でも起こったかのような衝撃が、居合わせた者達の心に波紋を広げて行きました。



「んんん......」



もっと驚いたのが、国王シーザーの反応です。んんん......ってどう言うこと?! 何黙っちゃってるのよ?!



「あ、あなた! 真実って......どう言う事なんですか?!」



「ちゃんと話して上げなさいよ。あたしがアダムの何なのかって事をさ!」



「ちょっと、何よそれ?! アダムのって......あなた、ちゃんと説明して下さい!」



「いや......俺は......よく分からん......アダム、お前なら......知ってるんじゃないか?」



死を直前にして、最期の足掻きを見せる『ゴーレム』国の王、シーザーでした。この場に及んで言葉を濁し、言いずらい事を息子に押し付けようとするその振る舞いは、末代までの恥としか言いようが無いと思いました。



「アダム! 言いなさい!」



涙声で叫び声を上げた私は、もはや半狂乱。これまでに作り上げた清楚なイメージが、見事崩れ去った瞬間だったと思います。



やがて父に振られたアダムが、周りをキョロキョロ見渡しながら、遂に口を開いたのでした。



「ベーラは......」



「「「「ベーラは?!」」」」



「僕の......」



「「「「僕の?!」」」」



「お母さん。ベーラは僕の本当のお母さんだよ」



な、な、な、なんと!......私は思わず耳を疑いました。クラクラクラ......めまいが止まりません。



「あなた......ど、ど、ど、どう言う......事なのよ......」



「まぁ.....なんて言うか......とにかくすまん......ソニア......うっ......」



遂に国王シーザーは、まるで重圧から逃げるようにして、いち早くこの世を去って行きました。『死人に口なし』とはよく言ったものです。まるで死ぬタイミングを見計らっていたかのような、それはそれは実に見事な死に際でした。


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