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第3話 デカいそうだ

ドンブラコ......ドンブラコ......



城から出た俺は、どうやら舟と言う乗り物に乗せられたらしい。ベーラとその兄が話しているのを聞いたから分かった事だ。

それとここは海でなく、川でもなく、街中に張り巡らされた『水路』だそうだ。

さっきから明るくなったり暗くなったりしてるのは、何度も橋の下を通過してるからなんだろう。

それにしても、このゆったりとした揺れはやたらと心地がいい。まるで生まれて来る前に居たチャップン、チャップンへ戻って来たような感触だ。



そんな心地よき船旅は、大して長くも無かった。生まれたばかりだから、まだ時間の感覚はよく分からないけど、階段を駆け降りてる時間よりは短かったような気がする。俺は再び抱き上げられて舟から降りた。



「夜分にすみません。子供が生まれたので連れて来ました」



「よし、入れ」



俺はこの軟弱タイプのお腹から出て来た訳じゃない。でもこの話の流れだと、そう言う事になってるらしい。

これは巷で言うところの『誘拐』に他ならぬ訳ではあるが、生まれたばかりの俺が、そんな事分かる訳が無い。仮に分かったとしても、オギャーとフギャーしか言えないのだから、誰かに訴えようも無かった。



なんだか、やたらと明るい部屋に連れて来られた。明るくなったり、暗くなったり......この世と言う世界は、とにかく目が疲れるらしい。と言う訳で、俺はそれまで必死に開けていた目を閉じた訳だ。



するとそいつらの話し声だけが、やたらと鮮明に脳の中へと流れ込んで来る。



「ベーラ・ル・モンドだな。それで......女の子か」



俺と『軟弱タイプ』とその兄を招き入れた『いかついタイプ』の者は、何やら用紙に情報を書き込んでるみたいだ。



(※アダムは生まれたばかりなので、まだ男と女と言う呼び名を知りません。どうやら女を『軟弱タイプ』、男を『いかついタイプ』と称しているみたいです)




「見た目は女の子でしょう。でも男の子なんです......なんなら見ます?」



「えっ、マジ? これで男の子? ほんとか? どれどれ......」



また身ぐるみを剥がされた。これも初めて会った人との挨拶なんだろうな。よし、ちゃんと覚えとこう!



「おうおう......確かに男の子だ。でも何つうか......」



「デカい?」



「ああ......デカい」



どうやらデカいそうだ。そう言えば......シーザーも同じ事を言ってたっけ? 一体、何がデカいのか俺にはさっぱり分からんけどな。とにかく何かがデカいんだろう。深い意味は無さそうだ。



「それで、この子の父親はあんたか?」



「そっ......そうだ」



危うく『絶倫国王』と言い掛けて、ギリギリのところで踏みとどまるベーラの兄だった。



ソニアとシーザーが、赤子をすり替えられても気付かなかった理由は他でも無い。異母兄弟だからだ。これがまた2人は良く似ていた。絶倫国王だけに、きっと『お種』も濃かったのだろう。



「お前達は本当に偉いな。最近は国法に背いて、子供を連れて来ない奴も多いときてる。もっとも......隠してるのがバレたら即銃殺刑だけどな。密告者には報償金が出るから、大概はバレちまう。まぁ辛いだろうけど、俺に言わせりゃ、賢い選択だと思うね」



「確かにキツい法律だよな......でも国王様が決めた法律だから、俺達『Bランク』の民は従うしか無いって事さ」



「まだ『Bランク』の民なら、ましな方だぞ。『Cランク』の民に至っちゃ産み落とした時点で、夫婦子供揃って銃殺刑だ。

それに比べて『Bランク』の民の子供は『大陸』行きだが、別に殺される訳じゃない。離れ離れにはなるが、きっとこの子も『大陸』でしっかり生きてくと思うぞ。

それと、ここに子供を連れて来る全員に言ってる事だが......絶対にこの法律を作った国王を恨んじゃいかん。人類を存続する為の苦肉の策なんだからな。

この惑星は何と言っても、資源が乏しい。人口をしっかり管理していかないと、またいつ絶滅の危機に陥るか分かったもんじゃない。限られた資源に対し、それより人口が増えると、我々人間はどうしてもそれを求めて戦争を始めてしまう。

今、ささやかな幸せが有るのは、国王が決めたこの国法のお陰だ。多くを求めちゃいかん。分かったな」


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