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第6話 あたしってもしかして『M』?

「あっ、あなたは?!」



「某のことか? 別に名乗る程の者でも無い。それよりお主の行動は常軌を逸しておる。夜の森でそのような無防備たる身形で歩いていたら、狼に食べて下さいと言ってるようなものではないか。人はそれを『馬鹿』と呼ぶ。


『こうのとり』様にお連れ頂いた尊き命......大事にせねば、神様に申し訳が立たぬではないか。悔い改められるが良かろう」



「す、すみません......」



正直、ぐうの音も出なかった。夜の森がこんなに危険な所だったなんて......知らぬが仏にも限度がある。


もし、この人がタイミングよく現れてくれなかったら、間違いなくあたしは狼のエサになっていた。それだけは間違いなく言える事だ。


それはそうと......この人に『馬鹿』って言われた時、なんか......やたらと気持ち良かった。生まれてこの方、マミーにもパピーにも、そんな酷い事を言われた事が無い。きっとあたしは箱入りだったんだろう。


ヤバい......もしかしてあたしって......『M』? なんだか顔が熱くなってる......こんな気持ちになったのって、正直、生まれて初めてだ。



「『サマンサ村』の民なのであろう......さぁ、乗るがよい。村まで送って進ぜよう」



ヒヒ~ン!



あら、馬が居た......そんな大きな動物の存在に今の今まで気付かなかった自分に思わず呆れてしまう。



「あ、有り難うございます。でもあたし、これから『ポロロッカ山』の麓に行って『めしべの奇跡』を摘みに行かなければならないんです」



「お主は未だ『馬鹿』の意味がわかっていないようだ。大事な命を粗末にしてはならぬと今言ったばかりであろう。


夜の山は夜行性の肉食獣が常に目を光らせておる。行くならは、明日の朝にしておけ。


某は多忙につき、お主と長時間付き合ってる暇は無い。今ちょうど狼退治に来ていたところである。これ以上の長居は勤めに支障を来すが為、早く某の馬に乗ってくれる事を切に願う」



ダメだ......また『馬鹿』と言われてしまった。目がトロ~ンとしてる場合じゃ無い。命の恩人にこれ以上、迷惑を掛ける訳にはいかない。今日は『めしべの奇跡』諦めよう。明日の昼間に祭りの準備抜け出して摘みに行くしか無いや......



「よろしくお願いします......」



あたしは言われるがまま、素直に従い、馬の鞍に股がった。すると、



「お主、ずぶ濡れではないか......これで顔を拭くがよい」



気付けば、いつの間に雨は上がっている。この人は狼と共に、雨雲まで追い払ってくれたようだ。



「あっ、有り難うございます......」



「それでは一旦、森に暇を告げる。準備は宜しいか?」



「はい......」



パッカ、パッカ、パッカ......



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