第4話 終わった!
野生動物だ! あちこちから足音と唸り声が近付いて来る......怖い......どうしよう? 身体が動かないよ......
ザザザッ! ガルルルルッ!
この唸り声は狼。5匹? 10匹? それとももっと?! ダメだ......逃げなきゃ!
ダッ、ダッ、ダッ!......あたしの身体に突然スイッチが入る。
『死』と言う言葉が頭に浮かんだ瞬間、真っ先に頭に浮かんだのは、大好きなマミーとパピーの顔。きっと2人が、突如あたしの身体を襲った金縛りを解いてくれたに違いない。
正直、どっちに向かって走ってるのか何て分からなかった。とにかく、血に飢えた狼達の包囲網から抜け出したかっただけだ。
ガルルルルッ!
ガルルルルッ!
土砂降りの中、松明を胸に抱え、ただひたすらに走り続けるあたし......多分そんな松明の灯りが、あたしはここに居るよと、狼達に知らせていたに違いない。
もうやだ......足が滑るって。こんなんじゃ走れないよ......しかも上に上がったり、下がったり。ここは山なの? 谷なの? あたしは一休どこ走ってるのよ? こんな景色、見た事無いじゃない!
ガルルルルッ!
ガルルルルッ!
気付けば......狼達の声はすぐ後ろにまで迫り来ていた。所詮、人間たる者の足で、そんなハンター達の包囲網から抜け出せる訳も無かった。自然の怖さを知らぬ一介の少女が、夜の山に足を踏み入れた時点で、既に『死神』はあたしの事をロックオンしていたに違いない。
そして更なる悲劇が降り掛かって来る。その事態は偶発的と言うよりか、むしろ必然的だったんじゃないかな?
ズズズッ!
「あっ!」
なんでこんな時に足が縺れるのよ! あらららら......目が回る。どんどん落ちて行く......ヤダァ~!!!
ゴロゴロゴロ......!
雨雲が見える......
地面が見える......
木が見える......
ぶっ飛んだ松明の火が見える......
そして、
ガルルルルッ!......
お、お、お、狼の顔が見えた!
鋭いキバ、真っ赤に燃えた目......そんなものが束となって、突然目の前に現れたら、きっと誰もがこう思う......終わった! ごめんね。マミー、パピー......
そして遂に、
3メートル、2メートル、1メートル......
その時は訪れた。
ガルルルルッ!!!
「キャーッ!」