表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/133

第2章 オリーブ大陸 第1話 バロック家の人々

やがて春が訪れると、大地は緑一色に染まり、夏になる頃には見事なまでに、七色の花で埋め尽くされていく。


そして秋になればオレンジ色に衣替えした木々の葉が、その後訪れる白銀なる冬の到来を知らせてくれる。


春、夏、秋、冬......そんな季節の衣替えが、12回も繰り返された頃にもなると、当初老人だった者はバーバの如く土へと帰り、若年だった者はリラの如く家族を構え、そして赤子もまた、例外無く大人の仲間入りを果たしていった。



「うわぁ、今日はごちそうだ! マミーありがとう!」



ラム肉ステーキ、キノコのソテー、野菜たっぷりコンソメスープ......どれもあたしの好物ばかり。あらら......ヨダレが......



「オリビアは本当に食いしん坊だな。最近腹が出てきたんじゃないか。ハッ、ハッ、ハッ」



パピーだって食いしん坊じゃん! 顔が嬉しそうだもん。きっとあたしと同じで肉に餓えてたのね......


そうそう......あたしの名はオリビア。オリビア・バロックよ。マミーはリラで、パピーはボイル。バロック家は、この3人で成り立ってるの。つまりあたしは一人っ子って事ね。


因みにもうすぐ12才になるあたし。12年前、この『サマンサ村』に『こうのとり様』が、落下傘でパァッと落としてくれたってこと。


『バロック家』で今あたしがすくすく育っていられるのも、この2人があたしのマミー役とパピー役を買って出てくれたおかげなの。だからあたしはこの2人が大好き!



「そう言えばオリビア......お前そろそろ12才の誕生日だったろ? 何か欲しい物でも有るのか?」



話好きなパピー、今度はそんな話をふって来た。



すると、



パリ~ンッ!



えっ、どうしたの?! 慌てて振り返ってみると、マミーが手に持ってたお皿を落として顔を青くしている。普段そんな粗相をするマミーじゃ無いのに......一体どうしたって言うのかしら?



「今そんな話する事無いでしょ!」



マミーの手はブルブルと震えていた。



「おいリラ......」



「マミー......」



正直、マミーが何でそんな反応を見せたのか、意味が分からなかった。あたしが12才になっちゃいけないって言うの? なんて......変な事を考えたりもする。



「い、いいえ......ごめんなさい。そうね......オ、オリビアはもう12才になるのね......」



「うん、そうだよ」



「おめでとう......」



「ありがと......」



なんか......楽しい筈の夕食が突然お通夜みたいになっちゃった。その後も、パピーが何を話し掛けてもマミーは上の空。結局その日の夕食は、そんなしらけムードのまま、あっさりとお開き。がっかりだわ......



やがてマミーが食器を片して洗い始めると、あたしとパピーの2人だけになった。



「ねぇパピー......マミーどうしちゃったんだろう?」



正直、マミーのあんな悲しそうな顔を見るのは初めてだ。何か心配になって来ちゃう......



「きっとお前にいつまでも子供で居て欲しいんだろう......大人になると思ったら寂しくなったんじゃないか? まぁ、大丈夫だからあまり気にすんな。それより明日も早いんだ。部屋に戻って今日は早く寝ろ」



「うん......分かった」



「それと......寝る前にちゃんと薬煎じて飲むんだぞ」



「分かってるよ......生まれてから1日も欠かした事無いんだから......そんなの忘れる訳無いでしょ」



「分かってればいい......それじゃあお休み、オリビア」



「お休みなさい......パピー」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ