表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/133

第13話 覚悟しろ!

そんな人の気配にいち早く気付いた俺達は、一斉に木の影、草の影、岩の影に隠れた訳だ。俺達は丘の上に座し、それで今からやって来るその者達は丘の下。獣道をゾロゾロと歩いて来るのが見える。


頭数はちと向こうの方が多そうだけど、喧嘩をするなら地の利を得たこっちの方が圧倒的に有利だ。策など何もいらない。号令一過、一気に丘を駆け下りれば一瞬で勝負はつくだろう。


「アダム様、奴らは憎き自警団です。一気に蹴散らせてしまいましょう!」


まぁ......思った通りの反応だ。ジャックは横で鼻息を荒くしている。剣に手を掛け、今にも丘を駆け下りていく勢いだ。そんなジャックを、俺が諌めるよりも早く、


「ジャックさん! アダム様は無益な殺生はしないと申されました。その事をお忘れですか?!」


モニカさんが諭してくれた。全く頼りになるぜ......


「ムムム......」


モニカさんに諭されて、ジャックは口を十文字に閉じてしまう。


ゾロゾロゾロ......


 ゾロゾロゾロ......


やがて自警団の連中は、俺達が頭の上で隠れている事も知らずに、騒々しくやって来た。


「さぁ、さっさと歩け!」


バシッ!


「い、痛ってぇ~! あちきを殴るな!」


見れば、行列の中盤を陣取る5人は、ロープで数珠繋ぎにされている。今自分の事を『あちき』と叫んだその者以外は、全て厳ついプロレスラー擬き。ただ『あちき』だけは、なぜか女性ホルモンビシバシだった。


そばかすだらけのそいつは、髪をショートにまとめて必死に男面してはいけど、俺は騙されないぜ......間違い無く女だ。でもまぁ、余計な事に首を突っ込むのは止めておこう。ここは静かにやり過ごす......それが一番の得策だ。


「おいジャック、戦うだけが『男の道』じゃ無いぞ。敵を前にしてやり過ごす事も一つの戦法だ。モニカさんを見てみろ......落ち着き払って息を潜めてるだろ?......ん?......モ、モニカさん、どうした? 真っ赤な顔してブルブル震えちゃって?」


今褒めたばっかなのに、いきなり『あちき』が視界に入った途端、興奮し始めた。一体どうしたって言うんだ? すると......


「あ、あいつ......な、な、何しにやって来たんだ?......さ、さては、アダム様を!......ゆ、許さん......許さんぞ!」


ガバッ!


気付けばモニカさんは剣を手に仁王立ち。そして何を思ったか、急に小さな笛を手に持ち、それに力強く息を吹き掛けた。ピ~......!


すると......


バサッ、バサッ、バサッ......どこからともなく上空から羽ばたき音が......


「なっ、なんだ?!」 


「大きな鳥がやって来るぞ!」


「あっ、あれは......間違いない! コンドルだ!」


バサッ、バサッ、バサッ!


「ガルーダ! いざ参る! マルタめ、覚悟しろ!」


「モニカさん、そうこなくっちゃ! ジャックもお供しますぞ!」


「お、おい、ちょっと待てって?! 何なんだこのコンドルは?! モニカさんのペット? それと......マルタ覚悟しろって......どう言う事なんだ?!」


正直、何が何だか分からなかった......突然現れたコンドルの事も、自警団に連行されてる『マルタ』なる男装女子の事も......


ただ一つだけ、状況を理解出来た事がある。それは今正に、戦いが始まってしまったと言う事だ。


「て、敵襲だ! 剣を抜け! 弓を引け!」


「ジャック様に続け!」


「「皆殺しにしろ!」」


あらら......マジかよ? 仕方ねぇな......よっこらしょっと。


馬に股がり、パッカ、パッカ、パッカ......丘を下りて行くアダムだった。


果たしてアダムは、


マルタを敵と見なすのか? 

それとも、味方と見なすのか? 


その答えは......


「敵の敵は......まぁ、味方って事だわな......」


だそうだ......


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ