第10話 露出狂?!
「モニカさん!」
ジャックは突然スイッチが入り、気付けば剣に手を掛けている。だからさっき、無益な殺生はしないって言ったばかりだろう! もう忘れてんのか?......って事で、俺はジャックの腕を掴み、そんな軽率な行為を力ずくで制した。全く......血の気が多過ぎて困る。
見れば牢屋への入口の脇に左右1人ずつ。槍を手に持ち、睨みを効かせている。いくら砦内とは言え、さすがに牢屋だけは、警備の手がしっかりと及んでいるのだろう。
「まぁ待て、焦るな。騒がれたら一気に兵が集まって来るぞ」
「だったらどうするんですか? このまま門番が居眠りするのを待つって言うんですか?!」
どうもこのジャックと言う人物......やはり人より導火線が短いらしい。まぁ、愛する人が捕らえらてると思えば、仕方ないかとも思うんだけどね。でもここで騒ぎを起こすのは、ちと不味い。と言う事で、俺は懐の中からロープを取り出した。
「そんなもん出してどうするんですか?」
「因みにジャック、俺と君とではどっちが美男子だ?」
「な、何をいきなり......まぁ、自分は武骨者ですし......主従の関係から言っても『私の方が美男子です!』なんて言えないでしょう」
「宜しい。ならばジャック、このロープを君に渡すとしよう」
俺はロープをジャックに手渡すと、テキパキ、テキパキ......一気に自警団の兵服を脱ぎ捨てて、パンツ一丁になった訳である。白髪頭のカツラも茂みに投げ捨てた。別に気がふれた訳じゃ無いんから、心配しなくてもいい。
「一体、何するつもりですか?! まさか......露出狂?」
「バカな事言ってないで、さっさとそのロープで俺を後ろ手に縛るんだ」
「まさか......」
「今から俺は自警団に連れて来られた『美男子』だ。さぁ、行こう」
テクテクテク......
テクテクテク......
そんな訳で、俺はパンツ一丁にされ、自警団ジャックに牢屋へと連行されて行った訳だ。まぁ時間が時間だけに、少しは怪しまれるかも知れないが、ここはジャックの演技力と、俺の『男子力』に賭けるとしよう。
案の定、牢屋の入口までやって来ると、
「なんだ貴様ら! 露出狂か?!」
パンツ一丁がこの上なく怪しい事は分かってる。とは言っても、自警団の兵服着て『自分は捕らわれた美男子です』などと語る事の方がもっと怪しい。するとジャックが改心のアドリブを効かせてくれた。
「露出狂を捕まえて来たぞ」
そのままじゃねぇか! などと、色を失い掛けた俺だったんだけど、
「おお......中々の美男子じゃねぇか! よし、連れてけ」
ギー......
モニカさんに話を聞けるんだっから、この際、露出狂でも変態でも構わなかった。と言う訳で......何の騒ぎも起こす事なく、俺とジャックは無事、牢屋の小路に潜入を果たした訳である。