表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/133

第9話 そこにその者が居る......

深夜2時を回ったその頃、自警団砦正門の前では......


2人の老兵が、テクテクテク......重い足取りで巡察から戻って来た。


「砦外周、異常無しですわ」


「そうか、ご苦労だったな。おう、もう交代の時間だ。お前達は宿舎に戻って休むがいい。あとは俺達に任せておけ」


「かしこまりましたです......それじゃあ、お言葉に甘えて」


今砦外周の警備を終えたばかりの老兵達は、鉄かぶとに手を掛け、まるで顔を隠すかのようにして砦の中へ入って行こうとした。すると、


「おい、ちょっと待て」


門番の1人が突然そんな2人を呼び止める。何か不審な点でも有るのだろうか?


「どうかしやしたか?」


一方2人の老兵はと言うと、剣に手を添えている。よもすれば漲ってしまう殺気を、必死に圧し殺してるようにも見えるのだが......


「お前ら、見慣れん顔だな」


「へい、俺ら昨日まで厨房でコックやってたです、何やら人手不足とかで......外回りの仕事も大変ですわな。何ならあんたらもコックに転職したら如何か? 牛捌くのは面白いぞ。血塗れの内臓でお手玉するのが今流行りでな。フォ、フォ、フォ......」


「バカもんが! 誰がコックなんぞやるか。とっとと失せろ!」


「ヘイヘイヘイ、邪魔者はさっさと退散するです。フォ、フォ、フォ......」


ギー、バタン......難なく正門を通過する『老兵?』の2人だった。腰が曲がったそんな2人は、誰がどう見たって70過ぎの老人。しかし、その動きはやたらと機敏だった。それもその筈......


「ジャック、牛の内臓でお手玉するのが流行ってるのか?」


「んな訳無いじゃないですか。そんな事より......何であんな門番ごとき、さっさと切ってしまわないんですか? 我々の力だったら容易い事でしょう。誰も見て無かったですし......オリバーさんは優し過ぎますよ」


きっとジャックは、俺が臥龍村で村兵に剣を使わなかった事が頭に残ってるんだろう。今も然りだしな......『優しい』なんて言ってるけど、本当は、俺のやり方が甘いって言いたいんだろう。ちょっと違うんだよな......でもまぁ、今は説明してる時間も無いってか......


「無益な殺生は控えろ。今言える事はそれだけだ。分かったな」


「無益な殺生ですか......はぁ? 分かりました」


「宜しい。さぁ、牢屋は砦の中心部だ。さっさと進まないと夜が明けちまう。急ぐぞ」


「御意!」


スタスタスタ......


 スタスタスタ......


夜中の2時ともなれば、さすがの『街』も静けさに包まれている。砦の外は部外者を遮断すべく厳重な警備が施されているけで、一歩砦内に足を踏み入れてしまえば、移動はことの他、容易かった。


とにかく自警団の兵は出入りが激しい。無謀な戦いを挑んで、しょっちゅう死んでるし、またそれ以上に志願して来る者も多い。まぁ、それだけ自警団の金バッチが美味しいって事なんだろう......


やがて、目の前に小高い丘が見えて来た。丘と言うよりかは、小さな山と言った方が、表現として正しいのかも知れない。俺がそんな『山』の少し手前で足を止めると、それに合わせてジャックの足も止まる。


「どうしました?」


「あそこだ」


「あそこの中に、モニカさんが居るのですか?!」


「そうだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ