第12話 やってもうた
今、バーバ様はこの子を殺すと言った。『不幸の星の下に生まれて来た子』だから? なんでそんな事言うの? この子に罪は無いじゃない......
ダメ......そんなの絶対にダメ。守らなきゃ......私がこの子を守らなきゃ!
恐れ多くも、私は腹を決めてバーバ様に食ってかかろうとした。するとそれよりも一瞬早く、バーバ様に先手を打たれてしまう。
「リラ......お前は何も分かっちゃいない。この子は必ず、この『オリーブ大陸』、いやこの惑星全てを滅ぼす。そうなる前に処置しなければならんのじゃ。
子供ならまたすぐに『こうのとり』様がお連れになって下さる。次にやって来る子を精一杯育てるが良い。
でもこの子はいかん。リラ......お前はもう子供じゃない。聞き分けるんだ。さぁ、その子をわしに返しなさい」
そのように語ったバーバ様の顔は、真剣そのものだった。それ程までに、この子を生かす事がリスキーだって事なんだろう。
でも私は引かない......絶対に引くもんですか! なぜなら......もうこの子を愛してしまったのだから......
「バーバ様、これまで私はあなたをお慕いし、尊敬し、そして一生あなた様について行く事を心に誓っておりました。でも......この子をお渡しする事だけは出来ません。
例えこの子にいかなる試練がこの後待ち受けていようとも、神から授かった大事な命である事に変わりは有りません。
私は神の命に従い、この子の命を脅かす者と戦います。例えその相手がバーバ様であろうとも!」
気付けばあたしは、腰にぶら下げていた剣を握りしめていた。本当に、無意識だったと思う。
この子を失うと思った途端、言い知れぬ恐怖を感じた。胸が張り裂けそうにもなった。こんな気持ちになったのって、生まれて初めてだと思う。
「リラ......お前は一体何に手を掛けとるんじゃ? 自分のしている事が分かってるのか?! 今ならまだ見なかった事にしておこう......
さぁ、早く剣から手を離し、その子をわしに渡すんだ! さもなければ、例えお前であろうとも!......リラ......頼むから、これ以上わしに言わさんどいてくれ......」
バーバ様の目には、熱いものが込み上げていた。きっとこんな反抗的な私に、まだ慈悲の心を残してくれているんだろう。
優しいバーバ様......大好きなバーバ様......でも......やっぱ無理。ごめんなさい......
そして遂に私は、剣を抜いてしまった。
村の長であり、大賢者でもあるバーバ様に対し、そんな暴挙に出る事がいかに罪深き事なのか? この後いかなる制裁が自分に待ち受けているのか?
勿論、それを知らぬ私では無い。でもこうするしか無かった。この愛しき小さな命を守る為には......