第2話 素手?!
多分、俺は他の奴より少しだけ運動神経が良かったんだと思う。それとチョビは、他の奴より少しだけ、運が良かったんだと思う。奇跡的にも、そんな『落とし穴』をかわす事が出来たのである。
「おっと、危ねえ!」
「ドッキリかと思ったぞ!」
気付けば残った騎馬の数は20。30落ちるって一体どんだけ大きな穴だったんだ? などと感心している場合じゃ無い。
チョビの言ってた事は嘘じゃ無かったって事だ。こいつらは、俺達が来るのを待ち構えてたんだからな。ならば、話は早い! 徹底的にぶちのめして、親玉の『イバン』を引っ捕らえてやる! と俺は頭を切り替えたのである。
「チョビ、俺に付いて来い!」
「がってんだ!」
ヒヒ~ン!
ヒヒ~ン!
疾風の如く、盗賊村へと突入していく俺とチョビだった。
............
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一方その頃、村役場地下の『作戦室』では......
「ジャック様、見事的中です! 奴ら半数以上がまんまと策にハマりました! 『落とし穴』の中で皆唸ってますよ」
「よし、さい先良しだ。これも全ては、モニカ殿が残してくれた知恵の賜物......礼を申し上げるぞ、モニカ殿!」
すると、
「ジャック様、まだ油断は出来ません。約20騎が策を逃れて村に突入して来ています!」
そして、
「ジャック様、奴らが火を放ち始めました。あちこちで火の手が上がっています!」
更には、
「ジャック様、我々の兵が必死に奴らの勢いを食い止めておりますが、完全に押され気味です!」
次々とやって来る伝令から発せられる言葉は、決して皆に笑顔をもたらすものでは無かった。地上で行われている壮絶なる戦いがまるで目に浮かんでくるようだ。
「奴らの狙いはこのイバンだ。何があってもこの村役場に敵兵を入れてはならん! おいイバン、お前は奥の書庫に隠れてろ。じっとしてるんだぞ。いいな」
「分かった......お父さん」
「よし」
戦慄の表情を浮かべていた猛将ジャックも、愛する我が子を見る時だけは自然と頬が緩む。しかしここは戦場......1秒足りとも、気を許す訳にはいかなかった。
「ジャック様!」
再び伝令が駆け込んで来る。その者の姿を見た途端、村役場内に居合わせた誰もが、思わず息を飲み込んだ。なんと、全身が朱に染まっていたのである。
「おい、大丈夫か?!」
真っ先にその者を抱き起こした者は他でも無い。総大将ジャックだった。
「ジャック様......1人だけ......桁違いの強さを誇ってる者が......おります。剣も......槍も......弓も......その者にだけは歯が立ちません。皆、蹴散らされています......」
「な、なんと......そんな強者が『自警団』の中に居ると言うのか?! その者の武器は、剣か? 槍か? それとも矛か?」
「それが......」
「ど、どうなんだ?!」
「素手......なんです。皆揃って投げ飛ばされています」
「す、す、す、素手だと? バ、バカな!」




