第11章 聖戦 第1話 マジか?!
翌朝......
ヒヒ~ン!
「ドウドウドウ......!」
長閑なる漁村を一望に見下ろせる丘の上......そんな平地にさっそうと並んだ馬の数は50。そしてまた、そんな馬に乗る人間の数も50。皆こぞって剣、槍、弓......穏やかならぬ武器を掲げていた。
「おいチョビ......あれが例の村か?」
「そうだ。盗賊の村、『臥龍村』だ」
「う~ん......本当に盗賊の村なのか? そんな風は見えんけどな......」
元気に走り回る子供達、家畜に餌を与える若者、捕れたばかりの魚を仕訳けする老人......普通に長閑な漁村の風景だ。どう見たって、ただの平和な村にしか見えん!
「オリバー、騙されちゃいかん。あいつらはああやって俺達『自警団』を誘き出してるんだ。どこに兵を隠してるか分かったもんじゃ無いぞ。ついこないだも、奴らにやられたばかりだ。『自警団』のメンツに掛けても、今度は負けれん。お前が頼りだ。頑張ってくれよ!」
「う~ん、そんなもんかねぇ......」
「おっと、ブルート様が前に出た。いよいよ突撃だぞ。抜かるなよ!」
ソロソロソロ......
「おいチョビ、何で後ろ下がるんだ? 先陣切らないのか?」
「まぁ、なんだ......ちょっと鼻が痛んで来たもんで」
「そうか......ならば俺も下がるとしよう」
ソロソロソロ......
正直、気が進まなかった......別に戦うのが怖い訳じゃ無い。何となくだけど、この村は俺が育った『サマンサ村』とよく似てる気がする。同じ漁村だからかも知れんけどな......
チョビの言う通りこの村が盗賊の村ならば、俺は世のため人のため、全力を尽くしてこの村と戦うだろう。でもどうしてもそれが信じられなかった。だから確信が持てるまでは、後ろに下がっていようと思ったまでの事だ。
すると、程なく、
「野郎共、突撃だ!」
隊長のブルートが、雄叫びを上げた。
「行け~!」
「皆殺しだ!」
「イバンを捕らえろ!」
バタバタバタッ!......
バタバタバタ!......
バタバタバタ!......
50頭の馬が一斉に蹄を轟かせ始める。
「さぁオリバー、行くぞ!」
「了解!」
バタバタバタ......
バタバタバタ......
一番最後に丘を下った俺とチョビだったんだけど、いきなり困ってしまった。
「なんだこりゃ? 砂煙で前が全く見えんぞ!」
「とにかく下ってりゃ、何とかなるんじゃないか?」
見えないものは見えないんだから仕方がない。大きな穴でも開いて無い事をただ祈るばかりだ。
やがて10メートルも進んだその頃、
「うわぁ!」
ヒヒ~ン!
「ああ......!」
ヒヒ~ン!
突然、前が騒ぎ始めた。ただ事ならぬ事態を察した俺とチョビは、ほぼ同時に手綱を引いた訳だ。
「「ドウドウドウッ!」」
すると......砂煙の中、何やら大きな『黒いもの』が先に広がっている。
「落とし穴だっ!」
「マジかっ!」